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大学・研究所にある論文を検索できる 「J-PARCにおける荷電レプトンフレーバー非保存過程探索のための陽子エクスティンクションの改善」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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書き出し

J-PARCにおける荷電レプトンフレーバー非保存過程探索のための陽子エクスティンクションの改善

野口, 恭平 NOGUCHI, Kyohei ノグチ, キョウヘイ 九州大学

2023.03.20

概要

九州大学学術情報リポジトリ
Kyushu University Institutional Repository

Improvement of Proton Extinction to Search for
a Charged Lepton Flavor Violating Process at JPARC
野口, 恭平

https://hdl.handle.net/2324/6787403
出版情報:Kyushu University, 2022, 博士(理学), 課程博士
バージョン:
権利関係:

(様式3)





論文名

:野口

恭平

: Improvement of Proton Extinction to Search for a Charged Lepton Flavor
Violating Process at J-PARC

(J-PARC における荷電レプトンフレーバー非保存過程探索のための陽子
エクスティンクションの改善)












素粒子物理の標準理論において、CLFV











(荷電レプトンフレーバーの破れ) は禁止されている。ミューオ

ン・電子転換過程は、原子核に束縛されたミューオンがニュートリノの放出を伴わずに電子に転換
する CLFV 過程である。2 体崩壊であるため、放出される電子のエネルギーは一意である。多くの
標準理論を超えた理論によりミューオン・電子転換過程が測定可能な分岐比で発生することが予言
されていることから、この課程の探索はより基礎的な物理を明らかにすると期待されている。
COMET 実験は、大強度陽子加速器施設 J-PARC において実験準備中のミューオン・電子転換
過程を探索する国際共同実験である。Phase-I と II の2段階で、最終的には先行実験の 1 万倍と
なる 10 –17 の探索感度を目指す。実験では、まず陽子ビームを標的に照射することでパイオンを生
成し、そのパイオンの崩壊からミューオンを得る。次に、ミューオンをアルミニウムの標的に静止
させ原子核に束縛させる。最後に、ここから放出される電子のエネルギーを測定し、ミューオン・
電子転換過程を同定する。陽子ビーム入射に同期した背景事象を排除するため、パルス陽子ビーム
を用い、入射タイミングから遅れて測定を行う。仮に入射タイミングから遅れて陽子が入射される
と、その陽子は測定タイミング内に背景事象を生み、探索感度を悪化させる。目標到達感度を達成
するために、「陽子パルスに含まれる陽子数」に対する「パルス以外のタイミングに存在する陽子
数」の比として定義される陽子ビームの Extinction が 10 –10 未満であることを要求している。
COMET 実験では J-PARC の加速器群を COMET 実験専用設定で動作させ、陽子ビームを得る。
このビーム設定は全て背景事象の発生を抑制し、高感度の物理測定を実施するために通常運転から
変更している。このうち、MR

(メインリング加速器) におけるバンチ間隔を

0.6 µs から 1.2 µs に変更す

ることは、Extinction に深刻な影響を及ぼす。倍のバンチ間隔は、陽子を充填したバンチ(メイン
バンチ)と空のバンチ(空バンチ)を交互に配置することで実現するが、MR の前段加速器である
RCS

(Rapid Cycling Synchrotron) において、空バンチには

O(10 –6 )の Extinction で陽子が残留している。

空バンチ内の残留陽子が RCS から MR へ入射されないよう、SBK

(Single Bunch Kicking) を採用す

る。SBK では、メインバンチは MR に蹴り入れる一方で、空バンチは蹴らないよう、MR の入射
キッカーの励磁タイミングを変更する。入射キッカーに蹴られなかった空バンチ内の残留陽子は、
MR 軌道上に設置されているコリメータにより排除される。入射キッカーの励磁タイミングを早め
る場合を前方 SBK、逆を後方 SBK と呼称する。
先行研究として 2018 年に COMET 実験専用設定の陽子加速試験が実施された。そこで前方 SBK
における Extinction が測定された。空バンチ内の残留陽子を完全に排除できると期待されていた

が、排除しきれていない残留陽子が O(10 –8 )の Extinction で確認された。2019 年の追加試験によ
り、入射キッカーのタイミング変更量が不足していること残留の原因であると示唆された。
本 研 究 は 、 先 行 研 究 に お け る 陽 子 残 留 の 原 因 を 定 量 的 に 理 解 し 、 COMET 実 験 の 要 求 す る
Extinction を達成することを目的とした。まず、シミュレーションにより前方 SBK における残留
を再現する事で原因究明を試みた。前方 SBK ではメインバンチと空バンチの分離に時間応答の遅
い入射キッカーの立ち下がり部分を使用しており、これが先行試験における残留の主要因であると
いう結果を得た。他方、後方 SBK では時間応答の早い立ち上がり部分を使用しており、同種の問
題は無いため、Extinction の要求を達成できるという予測を得た。しかし後方 SBK においては、
入射キッカーの反射波が予てよりの問題であり、これによるバンチ不安定化が懸念されていた。こ
れに対し、既存の MR の補正キッカーにより反射波の影響を打ち消すことが可能であることをシミ
ュレーションで示したのち、J-PARC の調整運転において試験を実施し、これを実証した。これに
より、後方 SBK における Extinction 達成の目処が立った。
2021 年 5 月に COMET 実験専用設定の陽子加速試験を実施した。COMET 実験と共通のビーム
ラインを持つ J-PARC ハドロン実験施設の K1.8BR において、2 次粒子ビームを用いて Extinction
を測定した。先行試験の再現などいくつかの条件で測定したのち、後方 SBK での高統計測定を実
施した。Extinction 測定では、K1.8BR 併設の BH (Beamline Hodoscope) 2 台の他、プラスチックシン
チレータと PMT (光電子増倍管) から成る TC (Trigger Counter) 3 台、本試験のために新たに開発したプラ
スチックシンチレータと PMT・SiPM

(シリコン PM) から成る

MD

(Main Hodoscope Detector) 1

台を使用し、

これら 6 台のコインシデンスにより、バンチ間の粒子を確実に同定した。メインバンチ中の高強度
タイミングであっても数え落としなく測定できるよう MD は K1.8BR のビーム分布を踏まえて 132
分割で設計し、Extinction の分母となるメインバンチ内の粒子数を測定した。各検出機の検出効
率は本試験のビームを用いて評価し、全検出器の累積として 70%であった。測定の信頼性を担保
するために 3 種の TDC
FPGA

(Time to Digital Converter) システムを独立に開発し並列に使用した。いずれも

(Free Programmable Gate Array) ベースであり、TCP/IP

通信によりコンピュータに検出器のヒッ

トタイミングのデータを送信する。各検出器のヒットタイミングをそれぞれ記録し、オフライン解
析によるコインシデンスにより、イベントを得た。
本試験は 2 次粒子ビームに起因するバンチ間の背景事象が予想されており、シミュレーションに
よりこれを検証した。結果として K1.8BR エリア内に設置した TC 3 台と MD 1 台のみでのコイン
シデンスでは、メインバンチ内の粒子数に対して 8×10 –6 の背景事象が得られる見積りとなった。
後方 SBK において、バンチ中の粒子数 3.24×10 10 に対して 7 イベントのバンチ間イベントが検
出された。TC 3 台と MD 1 台のみでのコインシデンスでは、想定されていた通りの背景事象イベ
ントが得られており、機械学習を用いた多変量解析によりイベントの信号事象と背景事象の弁別を
試みた。結果として、7 イベント全ては背景事象に分類された。Likelihood 関数を用いた統計解析
により、各イベントの信号事象らしさを加味して Extinction の上限値を評価した。結果として、
Extinction の上限値 1.02×10 –10 (90% Confidence Level) を得た。また、系統誤差は 0.04×10 –
10

であった。Extinction の上限値は、COMET 実験 Phase-I、II の全測定期間における背景事象

数としてそれぞれ 0.047 個、0.69 個に相当する。以上より、COMET 実験の要求を満たすことを
示した。

この論文で使われている画像

参考文献

[54] Y. Freund and R. E. Schapire, A Decision-Theoretic Generalization of On-Line Learning and

an Application to Boosting, Journal of Computer and System Sciences 55, 119 (1997).

[55] S. Geisser, The Predictive Sample Reuse Method with Applications, Journal of the American

Statistical Association 70, 320 (1975).

[56] G. Cowan, G. K. Cranmer, E. Gross, and O. Vitells, Asymptotic formulae for likelihood-based

tests of new physics, European Physical Journal C 71, 1554 (2011).

[57] T. Kishishita et al., SiC p+n Junction Diodes Toward Beam Monitor Applications, IEEE

Transactions on Nuclear Science 68, 2787 (2021).

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