Intensity-modulated radiation therapy using TomoDirect for postoperative radiation of left-sided breast cancer including lymph node area: comparison with TomoHelical and three-dimensional conformal radiation therapy
概要
1.序論
強度変調放射線治療 (IMRT) は、照射口 (ガントリー) から出る放射線の強度を変調させながら照射する手法で、従来から行われてきた 3 次元原体照射と比較して優れた線量分布を作り出すことができると言われています。IMRT 専用機として開発されたトモセラピー (TomoTherapy®) システムには、照射口を固定して照射を行うトモダイレクト (TomoDirect®) モードと、照射口を回転させながら照射を行うトモヘリカル (TomoHelical🄬) モードの 2 種類の治療方法が搭載されており、用途に応じて選択することが可能です。トモヘリカルは、回転しながら照射することで強度変調の自由度が高く、線量集中性がよい一方で、低線量で被ばくする照射域が広くなると言われています。トモダイレクトは照射方向を固定することで、この低線量の被ばく域を減らすことが期待されます。このように線量分布の特性が異なることが予想されますが、どの方法が適切かは議論がありました。そこで本研究では、乳癌患者さんの照射において、トモダイレクトとトモヘリカルおよび、3 次元原体照射の 3 つの方法を用いて放射線治療計画を行い、その線量分布を比較しました。
2.実験材料と方法
研究対象は、2010 年から 2017 年までに湘南鎌倉総合病院放射線腫瘍科に左乳癌の術後照射のために来院された患者さんのうち、胸壁または残存乳房組織と、腋窩リンパ節レベル II・III と鎖骨上リンパ節領域に対する予防照射を行った、連続した 10 人の患者さんとしました。それぞれの患者さんに対し、トモダイレクト、トモヘリカルおよび 3 次元原体照射の治療計画を、同じ線量制約を用いて立案しました。処方線量は、50Gy25 分割とし、処方線量の制約は、計画目標体積(PTV)の 50 パーセントの体積に対して、処方線量の 100%以上の線量分布でカバーされることと規定しました。
3.結果
PTV の線量分布の比較では、トモダイレクトおよびトモヘリカルが、3 次元原体照射よりも最高線量と最低線量の差が少なく、より均一で良い線量分布を示しました。一方、肺線量の比較では、トモダイレクトおよび 3 次元原体照射は、トモヘリカルと比較して、肺への低線量の被ばく範囲を著しく抑制しました。特に、トモダイレクトおよび 3 次元原体照射の治療計画では、総肺体積のうち 5Gy 以上が照射される肺の体積比 (V5Gy)および総肺体積のうち 10Gy 以上が照射される肺の体積比 (V10Gy) が有意に低く、総肺体積のうち 20Gy以上が照射される肺の体積比(V20Gy) が有意に高くなりました。トモダイレクトを使用した場合の肺、心臓、対側乳房の平均総線量は、他の2つの治療方法と比較して有意に低くなりました。
4.考察
今回の研究では、トモダイレクトは、3 次元原体照射およびトモヘリカルと比較して、乳癌患者の胸壁/残存乳房組織およびリンパ節領域を含む術後放射線療法において、正常臓器の線量を抑えつつ良い目標線量分布を作り出すことができました。トモダイレクトは鎖骨上リンパ節領域を含む乳癌患者の胸壁または残存乳房に対する術後予防照射において、より最適な照射方法と考えられます。