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原発不明がん診療における画像ガイド下経皮的針生検の成績

久保, 貴俊 東京大学 DOI:10.15083/0002002348

2021.10.13

概要

<序文>
原発不明がんは転移性悪性腫瘍であることが組織学的に証明されている腫瘍のうち、治療前の評価期間中に原発巣を同定できないものと定義される。本邦での原発不明がんによる死亡数は全悪性新生物死亡数の 2%程度であり、稀な悪性腫瘍ではない。原発不明がんは早期から播種や広範な転移を生じ進行が早く、予後は生存期間中央値が概ね 6~9 ヶ月とされていることから、迅速に過不足なく検査を行い、治療介入することが重要である。

原発不明がん診療では良性疾患の除外や原発巣の同定・推定、また治療方針の決定のために、生検による病理学的評価が不可欠である。生検により原発巣が同定できた症例では生存期間中央値が有意に延長するとの報告があり、原発巣の探索のための病理学的評価には臨床的な意義がある。病理学的評価の際には免疫組織化学染色(immunohistochemistry:IHC)法など様々な手法が用いられる。

生検ではこれらの病理学的評価に耐えうる質の高い検体採取が重要となる。くわえて、原発不明がんが疑われる患者は全身状態が良好でないことも多く、低侵襲性かつ安全な組織採取法が望ましい。また、早急な治療方針決定、治療介入開始が求められるため、生検は迅速に施行される必要がある。原発不明がんの診療において重要な役割を果たす生検ではあるが、生検法についてはエビデンスに乏しい。実際の診療ではしばしば経験的に生検法が選択され、消化管以外の病変に対しては手術生検、画像ガイド下経皮的針生検のいずれかを用いることが一般的であるが、より侵襲の大きい手術生検がコミュニティスタンダードとされていることも少なくない。

一方、画像ガイド下経皮的針生検は Computed tomography(CT)などのガイド下に生検針を用いて検体採取を行う生検法であり、安全性が高く、迅速かつ低侵襲に施行可能な、診断能の高い生検法として報告されている。これらの特徴から、画像ガイド下経皮的針生検は原発不明がんの生検法として望ましい可能性があるが、原発不明がん診療においてのエビデンスは乏しい。

<当研究の検討課題>
本研究では、原発不明がん診療における生検法としての画像ガイド下経皮的針生検の診断能や安全性、迅速性などを評価し、原発不明がん診療における位置づけ検討した。

本研究は、東京大学では審査番号 2561-(9)、研究課題「医用画像の診断に関する包括的な後ろ向き研究」、国立がん研究センターでは審査番号 2018-049、研究課題「がん診療における各種画像検査・IVR の有用性・安全性等に関する研究」として、施設倫理委員会に承認された。

<画像ガイド下経皮的針生検の検討:国立がん研究センター中央病院症例での検討>
※方法
2011 年 4 月 1 日から 2014 年 3 月 31 日までの期間に、国立がん研究センター中央病院放射線診断科 IVR センターで画像ガイド下経皮的針生検を施行した症例のうち、原発不明がんが疑われて生検を施行された症例を対象とした。

画像ガイドとしては US、CT、CT 透視、透視、またはそれらを併用した。生検は、原則として局所麻酔下に施行した。生検針は骨生検針、コア生検針を対象病変に応じて使い分けた。検体採取回数は 1~4 回程度であった。

画像ガイド下経皮的針生検の診断成功割合を主要評価項目とした。診断成功は、追加手術生検を行わずに、画像ガイド下経皮的針生検の結果のみで臨床的な治療方針を決定することができた症例と定義した。副次的評価項目として、生検結果の病理学的分類、生検対象病変の部位とサイズ、技術的成功割合、生検の迅速性、生検の安全性を評価した。

※結果
89 人が対象となり、平均年齢(標準偏差(SD))は 62.6 歳(11.2 歳)、男性 46 人・女性 43 人であった。16.9%が PS 2 以上であった。最終的に 68.5%の症例で原発巣が同定され、原発不明がんと診断された症例は 24.7%であった。

診断成功割合は 98.9%(95%信頼区間(CI):93.9 – 99.8%)であった。

病理学的分類項目では、上皮性が 59.6%と多かった。主な生検部位は後腹膜腔(22.5%)、肝臓(21.3%)であり、対象病変の平均サイズ(SD)は 47.7mm(30.8)であった。技術的成功割合は 100%(95%CI:95.9– 100%)であった。施設紹介日から画像ガイド下経皮的針生検が初回施行された日までの日数は中央値(四分位範囲)5 日(2, 9)であった。1 例で経カテーテル的動脈塞栓術を要する腰動脈出血が生じたが、生検に関連した死亡症例はなかった。

<画像ガイド下経皮的針生検の検討:東京大学医学部附属病院症例での検討>
※方法
2011 年 4 月 1 日から 2014 年 3 月 31 日までの期間に、東京大学医学部附属病院放射線科で画像ガイド下経皮的針生検を施行した症例のうち、原発不明がんが疑われて生検を施行された症例を対象とした。

画像ガイドとして CT、CT 透視のみを使用した点を除き、生検法や評価項目は国立がん研究センター中央病院症例での検討と同様であった。

※結果
10 人が対象となり、平均年齢(SD)は 65.6 歳(10.7 歳)、男性 6 人・女性 4 人であった。60%が PS 2 以上であった。最終的に 70%の症例で原発巣が同定され、原発不明がんと診断された症例は 30%であった。

診断成功割合は 100%(95%CI:72.2 – 100%)であった。

病理学的分類項目では、上皮性が 40%、悪性リンパ腫およびその他の血液腫瘍が 40%と多かった。主な生検部位は骨(70%)であり、対象病変の平均サイズ(SD)は 44.1mm(16.8)であった。技術的成功割合は 100%(95%CI:72.2 – 100%)であった。施設紹介日から画像ガイド下経皮的針生検が初回施行された日までの日数は中央値(四分位範囲)11 日(5, 14.5)であった。重症合併症例はなかった。

<手術生検との比較>
※方法
2011 年 4 月 1 日から 2014 年 3 月 31 日までの期間に国立がん研究センター中央病院で原発不明がんが疑われた症例のうち、放射線診断科 IVR センターで画像ガイド下経皮的針生検を施行された症例を画像ガイド下経皮的針生検症例の対象とし、手術生検を施行された症例を手術生検症例の対象とした。

2 群間で患者背景、生検部位とサイズ、診断成功割合、生検の迅速性、IHC 法の数、麻酔法、生検の安全性を比較した。

連続変数に対しては Welch の t 検定、順位・尺度変数に対しては Fisher の正確性検定を行った。患者背景の最終診断分類はカイ二乗検定を用いて評価を行った。いずれの検定においても有意水準は両側 5%未満とした。

※結果
89 人が画像ガイド下経皮的針生検、27 人が手術生検の対象となった。平均年齢、男女割合に有意差は認めなかった。画像ガイド下経皮的針生検では 68.5%で、手術生検では 63.0%で原発巣が同定され、疾患の分類は両群で有意差を認めなかった(p=0.18)

画像ガイド下経皮的では表在性病変が 19.1%、手術生検では 55.6%であり、手術生検の方が有意に表在性病変の割合が高かった(p=0.0004)。対象病変の平均サイズは両群で有意差は認めなかった(p=0.09)。診断成功割合は画像ガイド下経皮的針生検で98.9%(95%CI:93.9 –99.8%)、手術生検で 100%(95%CI:87.5 – 100%)であり、有意差を認めなかった(p=1.0)。生検までの平均日数(SD)は、画像ガイド下経皮的針生検で 6.5 日(5.4)、手術生検で 21.3 日(15.4)であり、有意に画像ガイド下経皮的針生検で短かった(p<0.0001)。用いた IHC 法の平均数は両群で有意差はなかった(p=0.40)。全身麻酔を用いた症例は画像ガイド下経皮的で0%、手術生検で 37.0%であり、画像ガイド下経皮的針生検は全身麻酔を用いた症例が有意に少なかった(p<0.0001)。手技関連重症合併症割合は画像ガイド下経皮的針生検で 1.1%、手術生検で 0%であり有意差を認めなかった(p=1.0)。

<考察>
本研究では、原発不明がん疑い症例に対する画像ガイド下経皮的針生検は高い診断能と十分な安全性を有しており、手術生検との比較でも有意差は認めなかった。

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