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Magnetic resonance-guided focused ultrasound thalamotomy restored distinctive resting-state networks in patients with essential tremor

加藤, 祥子 名古屋大学

2023.03.23

概要

主論文の要旨

Magnetic resonance-guided focused ultrasound
thalamotomy restored distinctive resting-state
networks in patients with essential tremor
MRガイド下集束超音波治療による本態性振戦患者の
特徴的な安静時ネットワークの改善

名古屋大学大学院医学系研究科 総合医学専攻
脳神経病態制御学講座

脳神経外科学分野

(指導:齋藤 竜太
加藤 祥子

教授)

【緒言】
近年、磁気共鳴ガイド下集束超音波視床凝固術(MRgFUS-thalamotomy)は、本態性振
戦(ET)の新たな治療方法として注目されており、世界の多くの施設から良好な治療成
績が報告されている。我々は安静時機能的 MRI(rsfMRI)を用いた安静時ネットワーク
(RSN)の解析により、健常者と比較し ET 患者における特徴的な脳内ネットワーク変
化について同定を行うこと、また、ET 患者に対して MRgFUS-thalamotomy 後に脳内ネ
ットワークがどのように変化するのか明らかにすることを本研究の目的とした。
【方法】
2017 年 7 月から 2020 年 10 月まで、名古屋共立病院において、名古屋大学の機能的
脳神経外科チームと協力して、71 名の連続した ET 患者を MRgFUS-thalamotomy で治
療した。71 名の患者のうち、15 名(女性 4 名、男性 11 名)が研究に登録し、術前と術
後に rsfMRI を含む MR 画像を撮影した。患者の基本情報は、年齢、性別、罹病期間、
薬物治療、および ACE-R 日本語版を用いて評価した認知機能を収集した(Table 1)。健
常者(HC)については、現在進行中の加齢コホート研究の rsfMRI と構造 MRI のデータ
を使用した。参加者のデータベースから年齢と性別を一致させた 15 名の対照者を選
んだ。HC と ET 患者の年齢に有意差はなかった。
rsfMRI データを用いて、二重回帰分析により RSN を抽出し、FUS 前患者、FUS 後
患者、HC の間でそれぞれのネットワーク内の機能的結合度(FC)を比較した。振戦の
重症度は Clinical Rating Scale for Tremor(CRST)スコアを用いて術前・術後で評価し、
RSN との相関を調べた。
【結果】
まず、FUS 前患者と HC の比較では、腹側デフォルトモードネットワーク(DMN)、
背側 DMN、サリエンスネットワーク(SN)、両側の実行制御ネットワーク(ECN)、感
覚運動ネットワーク(SMN)、一次視覚ネットワーク(primary VN)、視空間ネットワー
ク(VSN)、前頭葉ネットワーク、言語ネットワーク、楔前部ネットワーク、小脳ネッ
トワーク(CN)の 12 の RSN が抽出された。FUS 前患者群では、SMN、primary VN、
VSN において、HC と比較して有意な FC の減少を示した(p <0.05, FWE)(Figure 1)。
なお、SMN における FC の減少は、振戦の重症度と相関していた。FC の有意な増加
は、FUS 前の患者では HC と比較して観察されなかった。
次に、FUS 後群と HC 群の比較では、腹側 DMN、背側 DMN、SN、左 ECN、右 ECN、
SMN、一次 VN、VSN、高次 VN、言語ネットワーク、楔前ネットワーク、CN の 12 個
の RSN が調べられた。FUS 後群では、SMN においてのみ、HC と比較して有意な FC
の減少を示した(p <0.05、FWE)(Figure 2-A、左)。SMN で有意に減少した領域は、FUS
前群で観察された領域よりも HC と比較して小さかった。一方、CN は FUS 後群では
HC 群に比べ FC の有意な増加が見られた(Figure 2-A、右)。
そして、FUS 前と FUS 後の患者間の比較では、DMN、前部 SN、後部 SN、左 ECN、

-1-

右 ECN、SMN、一次 VN、VSN、言語ネットワーク、楔前部ネットワーク、CN の 11
の RSN が抽出された。FUS 後群では、SMN と VSN において FUS 前群に比べ有意に
FC が増加した(p <0.05、FWE)(Figure 2-B)。
上記の解析で同定された 4 つのネットワーク(SMN、primary VN、VSN、CN)に着目
し、FUS 前、FUS 後、HC の群間で FC の強さについて定量的に比較した。SMN の FC
は、FUS 前患者と HC の間で有意差が見られた(one-way ANOVA、p<0.05)。MRgFUS
後の SMN の FC は HC に近づき、正常化する傾向があることが示された(Figure 3、
上)。VSN の FC でも同様に観察された(Figure 3、下)。
また、ネットワークの FC と臨床症状との相関解析を行った。術後の振戦の変化を
Table 1、補足 Fig.2 にまとめた。SMN で FUS 前と HC で有意差が見られた左上頭前
野の FC は、CRST の A 部の得点と負の相関を示した(Figure 4)。
【考察】
本研究の結果、以下のことが明らかとなった。(1)ET 患者では、SMN、VSN、primary
VN において FC が HC よりも低く、振戦の重症度と SMN の FC は負の相関があり、
すなわち振戦が高いほど FC は低い。(2)MRgFUS 後、患者の SMN では HC と比較し
て FC が低い領域が残っているものの、その範囲は減少している。(3)縦断的な比較で
は、SMN と VSN の FC は MRgFUS 後に健常者の FC に近づき、正常化する傾向があ
った。
いくつかのネットワーク研究が行われているが(Table 3)、ET 患者の SMN、VN/VSN、
および CN の MRgFUS 前後のネットワーク変化を包括的に示した最初の報告である
(Figure 5)。
本研究では、ET 患者において SMN 内の FC が減少していることを確認した。SMN
内の FC を主に評価したため、運動野と視床や小脳との構造間の結合を直接評価する
ことはできなかった。しかし、SMN の FC の減少は振戦の重症度と相関しており、ET
患者のネットワーク評価における本手法の有用性を正当化するものであった。
また、FUS 前患者に見られた一次 VN と VSN の FC の低下も興味深い結果である。
視覚フィードバックが ET の病態生理に重要な役割を果たす可能性を示唆する報告が
あり、Archer らは、タスク fMRI を用いて ET 患者の視覚フィードバックの影響を評価
し、振戦の悪化が大脳-視床-皮質ループおよび視覚野の BOLD 信号の変化と相関する
ことを報告している。今回の結果は、振戦が視覚ネットワークなど小脳-視床-皮質ネ
ットワーク以外の領域での異常によって影響を受けているのではないか、という仮説
を支持するものであった。
また、Tulesca らは、定位放射線手術による thalamotomy 術後に幾つかの視覚機能関
連ネットワークが改善し、振戦の抑制と相関があることを報告している。我々の研究
でも、SMN、VSN、および CN を含む幾つかのネットワークが MRgFUS 後に変化する
ことを確認しており、治療によってネットワークが回復することが示唆された。

-2-

【結論】
本 研 究 の 結 果 、 大 脳 - 視 床 -皮 質 ル ー プ の 重 要 な 構 成 要 素 で あ る SMN と CN が
MRgFUS-thalamotomy 後に FC 値の上昇を示すことが示された。また、術前に有意に低
かった VN の FC 値が術後に回復しており、ET 患者の振戦の重症度に視覚フィードバ
ックが関与しているという仮説を支持した。このように、rsfMRI による解析結果は、
ET 患者における術前の病態と、MRgFUS の介入による病態変化を反映し、RSN の変
化を効果的な治療のバイオマーカーとして活用できる可能性を示唆している。

-3-

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