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宇宙頭痛における脳微細構造と機能変化

後藤, 正幸 筑波大学

2023.09.04

概要









論 文 題 目:宇宙頭痛における脳微細構造と機能変化

指導教員: 人間総合科学研究科

臨床外科学脳神経外科学

石川 栄一 教授



属:筑波大学大学院人間総合科学研究科
疾患制御医学専攻



名:後藤

正幸



的:
宇宙飛行士の多くは、宇宙飛行中に強い頭痛を経験する。今後、

人類の宇宙進出加速に伴い、宇宙頭痛は重要な健康課題でありさら
なる病態解明が必要であるが、この頭痛における脳微細構造および
脳機能の変化を画像解析した研究はない。
宇宙頭痛の主要仮説として、微小重力による「体液の上部方向シ
フト」が提起されている。この現象を地上再現する方法として、仰
臥位で頭部を水平位から 6-10°下げる Head-down-tilted bed rest
(HDBR)が確立している。また、最近の頭痛病態研究では、MRI
(磁気共鳴画像)の拡散テンソル画像 Diffusion Tensor Imaging
(DTI)や安静時機能的磁気共鳴画像法 resting-state functional MRI
(rsfMRI)によって、脳微細構造や脳機能の動的変化をリアルタイ
ムで非侵襲的に評価することができる。
本研究では、宇宙頭痛を生じる患者には脳微細構造に何らかの変化
があり、頭痛を生じた患者と生じなかった患者には脳機能に違いが
あるのではないかとの仮説をもとに、DTI および rsfMRI を用いて
HDBR による頭痛発症時の脳微細構造および脳機能変化を解析した。

対 象 と

方 法:

28 名の健常成人(男性 11 名、女性 17 名、平均年齢 47.7±11.7 歳)
を対象に、水平仰臥位と HDBR でそれぞれ DTI と rsfMRI を撮像し、
頭痛強度と性状の評価を行った。
DTI は 6 方向傾斜磁場をかけて水分子拡散量と方向のパラメータを
算出し、脳微細構造変化を解析する方法である。全脳のボクセル単
位 値 を 標 準 化 し た 白 質 骨 格 skeleton に 集 約 し 全 脳 解 析 を 行 う
Tract-Based Spatial Statistics(TBSS)を用いて、拡散異方性を示す
Fractional Anisotropy(FA)
、分子の長軸方向拡散量 Axial Diffusivity
(AD)
、AD に垂直な方向の拡散量 Radial Diffusivity(RD)
、3 方向
平均 Mean Diffusivity(MD)を算出した。
Functional MRI(fMRI)は、脳血流の変化による信号変化を統計処
理し、脳活動を画像化したものである。そのうち頭痛時の脳機能変
化の観察に適する resting-state functional MRI (rsfMRI)を行い、30
の関心領域で機能的結合 Functional Connectivity(FC)を求めた。
以上 DTI と rsfMRI の結果を、HDBR 前後および頭痛群と非頭痛群
で比較検討した。FC と、頭痛の数値評価尺度 Numerical Rating Scale
(NRS)との相関分析も実施した。



果:

HDBR により 28 名中 21 名の被験者に頭痛が生じた。
DTI 解析では、HDBR 前後で FA に有意な変化はなく、AD・RD・
MD は HDBR 後に脳梁膝部で有意に増加した。
rsfMRI 解析では、HDBR 前後で左小脳と両側下前頭回(弁蓋部と
三角部)および両側前頭眼窩皮質の間、右小脳と右下前頭回三角部
および左眼窩前頭皮質の間、内側前頭前野と帯状回後部の間、両側
小脳の間で、FC の有意な減少が見られた(p-false discovery rate(以
下 p-FDR)、p<0.05)。すべての領域で HDBR 後の FC の増加は見ら
れなかった。頭痛群と非頭痛群の比較では、頭痛群では HDBR 前に
右下前頭回と左小脳の間で FC が有意に高く(p-FDR、p < 0.05)、
HDBR 後に脳幹と左下前頭回(弁蓋部と三角部)および左視床下部
と左小脳の間で、FC が有意に高かった(p=uncorrected、p<0.01)。
相関解析では、Head down 前には視床下部に関連した FC と NRS
に正の相関(Pearson 相関係数 0.448、p=0.017)、Head down 後に
は視床と小脳に関連した FC と NRS に負の相関を認めた(Pearson
相関係数 -0.541、p=0.003)。



察:

DTI によって、短時間 HDBR で起こる脳微細構造の急性変化を捉
えることができた。
先行研究では、HDBR 4.5 時間後に視神経鞘での AD・RD・MD の
増加、片頭痛において健常者と比較し FA の低下および発作性と慢性
片頭痛での AD・RD・MD のダイナミックな変化、特発性頭蓋内圧
亢進症において脳梁の AD・RD・MD の低下などの報告がある。本
研究では急性の HDBR による白質線維の圧迫によって、白質線維に
沿った水分子運動が増加したと考えられ、今後頭痛との関連が明ら
かとなれば、宇宙頭痛の事前予測や治療のバイオマーカーとして利
用できる可能性がある。
また rsfMRI によって、同じく短時間 HDBR での脳機能変化を捉え
ることができた。頭痛と FC の関係については、片頭痛発作時に脳幹
や視床下部の FC 増加が報告されているが、本研究では HDBR 後の
FC の増加は認められず、頭痛は一過性の脳機能低下と関連している
可能性が示唆された。また頭痛群では安静時に疼痛関連領域の脳活
動が高く、発症時には同領域が活発化している可能性があると考え
られた。

本研究の限界として、母集団が 28 名と小さい単アーム研究である、
HDBR 実施時間が約 50 分と短い、疼痛シグナルの伝達に重要な脳幹
の詳細な関心領域の区分けをしていない、体液シフトすなわち微小
重力以外の頭痛影響を評価していない、などが挙げられる。長時間
の HDBR による頭痛時の脳微細構造や機能変化、脳幹内部の詳細な
セグメンテーション解析、地上よりも高い宇宙での二酸化炭素濃度
など、他の要因が頭痛発症に及ぼす影響の検討は今後の課題である。
本研究では、宇宙環境を模擬した HDBR を用いて宇宙頭痛の病態
を再現し、DTI や fMRI を利用して脳微細構造および脳機能変化を
明らかにした。これらの結果は、宇宙頭痛の発症予測や診断・治療
のバイオマーカーとなる可能性が考えられ、人類の宇宙進出に貢献
するものと考える。 ...

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