リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

リケラボ 全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索するならリケラボ論文検索大学・研究所にある論文を検索できる

リケラボ 全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索するならリケラボ論文検索大学・研究所にある論文を検索できる

大学・研究所にある論文を検索できる 「室内環境中のマイクロプラスチック濃度分析方法の確立と実態調査」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

コピーが完了しました

URLをコピーしました

論文の公開元へ論文の公開元へ
書き出し

室内環境中のマイクロプラスチック濃度分析方法の確立と実態調査

田中, 浩史 TANAKA, Hirofumi タナカ, ヒロフミ 九州大学

2023.03.20

概要

九州大学学術情報リポジトリ
Kyushu University Institutional Repository

室内環境中のマイクロプラスチック濃度分析方法の
確立と実態調査
田中, 浩史

https://hdl.handle.net/2324/6787653
出版情報:Kyushu University, 2022, 博士(工学), 課程博士
バージョン:
権利関係:

(様式3)Form 3



名 :田中 浩史

Name

論 文 名 :室内環境中のマイクロプラスチック濃度分析方法の確立と実態調査
Title



分 :甲

Category

論 文 内 容 の 要 旨
Thesis Summary
地球環境問題としてマイクロプラスチックによる海洋汚染問題が顕在化し,世界的な懸念事項となっている.マ
イクロプラスチックは,海洋ごみの約 70%を占めるプラスチックごみのうち「大きさが 5mm 以下のもの」と定義
されており,そのサイズが小さいために海洋中(水中)だけでなく,食物連鎖の結果として多様な魚介類の体内から
も検出されている.マイクロプラスチックは化学物質の吸着媒となることも確認されており,その表面に吸着した
ポリ塩化ビフェニル(PCB)など残留性有機汚染物質が高濃度で検出されるなど,毒性学的視点でも人体影響の深刻
な複合汚染問題として捉えられている.海洋でのマイクロプラスチック汚染の規模は拡大の一途であり,その汚染
程度も刻々と深刻化しているのが現状である.
その一方,海洋環境でのマイクロプラスチックの発生源が日常的なプラスチック系のゴミや廃棄物であれば,こ
れらは我々の居住環境に非常に近い所に存在することになり,居住環境中にもマイクロプラスチック汚染の危険性
が懸念される.しかしながら,大気環境や空気環境,さらには居住環境中でのマイクロプラスチック汚染の有無や
その濃度の実態は,現状ではほとんど把握されていない.汚染源であるプラスチック製品がこの地球上に広く存在
し,ゴミとして廃棄されている実態を鑑みれば,室内環境中でのマイクロプラスチック濃度を調査し,汚染の程度
を明らかにした上で,問題の所在を社会に発信していくことは,非常に重要な研究課題である.
海洋汚染の観点では,汚染源であるマイクロプラスチックは大別して,一次マイクロプラスチック (Primary
microplastics)と二次マイクロプラスチック(Secondary microplastics)に分類されており,前者は洗顔料,化粧品や
工業用研磨材などに使用されている小さなビーズ状のプラスチックを指し,後者は所謂プラスチック製品の小さな
細片のなかで,環境中に流出後,紫外線などの外的要因により段階的に劣化・崩壊し,最終的に 5mm 以下の細片
状になったもの,と定義されている.この定義に従えば,室内環境中には,洗濯や居住者の日常活動で衣服やカー
ペットなどの合成繊維製品から脱落したファイバーの存在が(少なくとも)マイクロプラスチックの定義に該当する.
少なくとも室内に一定のマイクロプラスチックが存在することは確実であり,これらファイバー類以外にも一次マ
イクロプラスチックと二次マイクロプラスチックの定義に該当する汚染源は多様に存在している.
このような背景のもとで,本研究は室内環境中に存在するマイクロプラスチックを分類・定義し,標準測定評価
法を確立した上で,日本国内を対象とした実態調査を行うことで,汚染状況の実態把握を目的としている.
本研究は以下に示す 7 章構成となっており,各章の内容を以下に要約する.
第 1 章では,序論として研究背景・目的を整理している.海洋プラスチック汚染の実態を整理した上で,室内環
境中の汚染問題として長く取り組まれていた室内ダストのサンプリング・測定プロトコル,調査事例を整理してい
る.室内ダスト成分の過半がマイクロプラスチック・マイクロファイバーである可能性を整理することで,室内マ
イクロプラスチック濃度の実態調査を実施し,実態把握の重要性を述べ,取り組むべき課題を明確化している.
第 2 章では,本研究で実行する室内環境実態調査の基盤となるマイクロプラスチックサンプリング・測定・分析
方法について論述している.室内環境中に存在する(もしくは存在可能性のある)マイクロプラスチック濃度を定量
的に議論するための,サンプリング法,分類法,成分分析法に関して,室内ハウスダスト研究と海洋マイクロプラ
スチック研究の成果を詳細にレビューした上で,予備的に室内でサンプリングしたダスト成分を対象として基礎検
討を実施している.結果として,サンプル分析は,顕微-フーリエ変換赤外分光光度計(μ-FT-IR)を用いたマイクロ
プラスチックの定性分析と,Laser Direct InfraRed (LDIR)ケミカルイメージングシステムを用いた定性分析の 2
種類の分析方法を適用した成分分析の有効性を述べている.また,μ-FT-IR 法を適用する際には,サンプルを KBr
プレートで挟み込むことで,3 次元的なマイクロプラスチック・マイクロファイバーを 2 次元的な測定サンプルとす

る前処理を採用する方法も検討している.KBr プレート法を用いることで測定の正確性の向上を図ることができ,
なおかつ分析後のサンプル保存もそのままの形で簡便にファイリングすることができる利点も述べている.
第 3 章では,室内環境中のマイクロプラスチック濃度の調査法確立に向けた基礎検討として,室内で採取したハ
ウスダストを対象として,第 2 章で述べたサンプリング法,分類法,成分分析法を適用することでその有効性の検
討している.予備調査用ハウスダストのサンプリングは首都圏の住宅 4 軒を対象として実施したもので,サンプリ
ングの際には調査対象住宅の詳細や生活スタイルについては聞き取り調査も実施している.ハウスダストサンプル
の適切なサイズ分級方法の検討,形態観察方法,μ-FT-IR 法による分析及び LDIR による分析を行う事で,提案す
るサンプリング・分析プロトコルの有効性を検討している.
第 4 章では,第 3 章で述べた予備調査結果を基に,更に関東地方の住宅 10 軒を対象とした実態調査を行った
結果を整理している.μ-FT-IR 法を適用した分析では,ダストから分取した物質中の 75%〜96%がマイクロプラ
スチック成分と同定されている.LDIR 法を適用した分析では,100μm 以下の粒子が全粒子個数の 95%以上とな
り,マイクロプラスチックと判断できる物質が約 40%~80%存在することを確認している.比較的大きなサイズ
の分析に適した μ-FT-IR 法と微粒子測定に適した LDIR 法の両者を適用することで,互いに相互補完可能な測定
結果を得ることが可能となることを示している.
第 5 章では,室内環境中に存在するマイクロプラスチックが他の化学物質の吸着媒となる可能性を検討するため
に,サンプリングしたマイクロプラスチックに吸着している SVOC(準揮発性有機化合物)成分に関して検討を行っ
ている.基礎的な検討として,吸着成分の回収率試験を実施することで,脱離,分析手法を入念に検討した上で分
析方法を決定している.結果として,沸点の高い SVOC 成分の検出を確認しており,特に可塑剤成分や添加剤成分
に由来する SVOC,軟質塩ビ製品の可塑剤であるジ(2-エチルヘキシル)フタラート(DEHP)やその代替可塑剤
であるジ(2-エチルへキシル)テレフタラート(DEHT)が検出されている.
第 6 章では,室内マイクロプラスチックに対する SVOC 吸着のメカニズムを議論する目的で,その放散源となる
建材からの可塑剤(DEHP)を対象として,パッシブフラックスサンプラー(PFS)法と JIS A 1904 で規定されて
いるマイクロチャンバー法による放散量測定実験を実施している.DEHP は多くの軟質塩ビ製品に含まれているが,
その分子は化学的に結合していないため室内環境中に非常にゆっくりと放散される.また蒸気圧が低いため,室内
環境に放散されても容易に吸着する性質を持つことから,この SVOC.放散特性を実験的に明かとした上で,マイク
ロプラスチックに対する吸着メカニズムに関して理論的な検討を加えている.
第 7 章では,本論文全体で得られた結果を総括し,学術的・光学的な貢献に関して言及するとともに,今後の課
題を整理している.

この論文で使われている画像

全国の大学の
卒論・修論・学位論文

一発検索!

この論文の関連論文を見る