リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

リケラボ 全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索するならリケラボ論文検索大学・研究所にある論文を検索できる

リケラボ 全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索するならリケラボ論文検索大学・研究所にある論文を検索できる

大学・研究所にある論文を検索できる 「Transition Metal-Catalyzed C–N Bond Formation via Addition Reaction of Aminyl Radical Intermediates」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

コピーが完了しました

URLをコピーしました

論文の公開元へ論文の公開元へ
書き出し

Transition Metal-Catalyzed C–N Bond Formation via Addition Reaction of Aminyl Radical Intermediates

葉, 淑涓 名古屋大学

2021.09.27

概要

アミノ基は自然界や生体内に普遍的に存在し、多くの医農薬や有機エレクトロニクス材料に含まれる重要な官能基である。アミノ基が導入された芳香族分子は芳香族アミンとよばれ、アミノ基の違いによって大きく異なる性質を有する。芳香族にアミノ基を導入する方法はこれまで数多く報告されており、得られた生成物は医薬や材料化学など多分野で使われている。最近ではアミノ基をもつ蛍光分子が、ケミカルバイオロジーの分野でライブセルイメージング材料として使われ、様々な細胞の変換や動きのリアルタイム観察が可能になった。

一般的なアミノ基の導入方法として、事前にハロゲン化アリールなどを用いるクロスカップリングが一般的である。極めて有用な手法であるが、ハロゲン化アリールを事前調製する必要があり、多段階合成が必要となる。これらの問題を克服する手法として、直接的なアミノ基導入が研究されている。古くから研究がなされているが、これまで知られている条件では C–N 結合の形成に強酸や高温など過酷な条件が必要であった。最近、遷移金属触媒による C–H アミノ化反応に注目が集まっており、多くの変換が可能となった。しかし、この手法は反応性の高い芳香族化合物しか適用できないという制限がある。そのため近年、より一般性が高く、温和な直接合成手法の開発が求められてきた。これらを実現する手法として、窒素ラジカルを用いる芳香族アミノ化反応が汎用性の高い手法として期待されているが、その研究は十分になされていない。そこで申請者は窒素ラジカルを鍵活性種とする新たな芳香族 C–N 結合形成反応の開発に取り組んだ。本論文は三章構成である。

第一章では、金触媒を用いた多環芳香族炭化水素(PAH)の C–H イミド化反応の開発について論じている。これまで知られている金触媒を用いる芳香族化合物の直接官能化の大半において配向基を要するベンゼン環やヘテロアレーンが用いられてきた。そのため配向基をもたない芳香環のアミノ化が求められてきた。近年、申請者の研究室では銅触媒を用いた C–H イミド化反応を報告した。この報告例では N-フルオロベンゼンスルホンイミド(NFSI)から発生したイミジルラジカル中間体が多様な芳香環と反応することを明らかにした。したがって、金触媒を用いて NFSI からイミジルラジカルを発生できれば、新たな金触媒による C–H イミド化が可能になると考えた。検討の結果、触媒量の塩化金(I)と2,2'-ビキノリン配位子の存在下反応を行うことで、NFSI からイミジルラジカルを発生し、直接的に PAH の C–H イミド化反応が進行することを見出した。イミド化が進行する位置選択性は理論予測から導かれる結果と一致しており、ラジカル中間体が鍵活性種であることが示唆された。さらに、合成したイミド化 PAH を低原子価チタンを用いた段階的脱スルホニル化反応に付すことで様々なアミノ化 PAH に還元することができた。

第二章では、銅触媒を用いたジアリールアセチレンと NFSI の反応によるα-フルオロイミンの合成について論じている。先に述べた通り、NFSI から生成したイミジルラジカルを芳香族の反応をすでに明らかにしている。しかし、イミジルラジカルとアルキンの反応性については十分に研究されていなかった。今回、申請者は銅触媒により NFSI から生じたイミジルラジカルとジアリールアセチレンの反応を調査した。その結果、触媒量の臭化銅(I)とバソクプロイン配位子の存在下、ジアリールアセチレンと NFSI を反応させることでα-フルオロイミンの合成を達成した。尚、この反応の円滑な進行には化学量論量のフッ化セシウムが必須であることが分かった。さらに、合成したα-フルオロイミンのイミン部位が容易にアミドやケトンに誘導できることを示した。

第三章では、構造的に珍しいイミダゾロン骨格をもつ AYSJ929 という化合物の合成法を見出し、その化合物が植物の気孔の発生において新しい活性を有することを明らかにした。スルホンアミドは創薬科学において最も重要な官能基であるにも関わらず、芳香環に対する直接スルホンアミド化は困難であった。ここで申請者は、スルホンアミド化剤としてクロラミン B に着目した。申請者は銅触媒存在下、ジアリールオキサゾールとクロラミン B の反応を検討した。その結果、想定外のイミダゾロン化合物が得られることを明らかにした。このユニークな構造をもつ AYSJ929というイミダゾロンの生成において、ジアリールオキサゾールのスルホンアミド化、続くオキサゾール骨格の転位が進行したと考えている。得られた AYSJ929 を用いて、名古屋大学トランスフォーマティブ生命分子研究所(ITbM)とアメリカのテキサス大学に所属している鳥居教授のグループと共同研究を行った。その結果、Arabidopsis thaliana の気孔の数を減らす生物活性を発見した。作用機序として、気孔の発生に関与する MUTE/SCRM の二量体化を阻害していると考えている。

以上、申請者は遷移金属を用いたアミニルラジカル中間体による C–N 結合形成反応の開発に成功した。まずは、金触媒を用いた NFSI による PAH の C–H イミド化反応を開発した。段階的な還元反応により脱スルホニル化された PAH のアミノ誘導体の合成を可能とした。次に、NFSI から生成したイミジルラジカルをジアリールアセチレンと反応させることでα-フルオロイミンを合成できた。最後に、クロラミン B を用いるイミダゾロン化合物の合成手法を見出し、その化合物が有する気孔の数を減らす新たな生物活性を発見した。これらは有機合成化学において重要であるのみならず、植物学の発展にもつながる発見である。

全国の大学の
卒論・修論・学位論文

一発検索!

この論文の関連論文を見る