アルコールの脱酸素化を可能とする新規レドックス補助基の開発

概要

令和 4 年度

京都大学化学研究所 スーパーコンピュータシステム 利用報告書

アルコールの脱酸素化を可能とする新規レドックス補助基の開発
Redox Auxiliaries for Direct Deoxygenation of Alcohols
京都大学 大学院薬学研究科 薬品分子化学分野

竹本 佳司

研究成果概要
ヒドロキシ基は有機合成化学において最頻出の官能基の一つであり、アルコールを出発原
料とした様々な官能基変換法がこれまでに開発されている。その中で還元によるヒドロキシ基
の除去も天然物・医薬品合成において欠かせない基本的な分子変換であるが、C–O 結合の
高い結合解離エネルギーのため、遷移金属触媒等を用いたヒドロキシ基の直接的な還元は通
常高温を要する。そのため、ヒドロキシ基をより反応性の高い官能基へと活性化した後に変換
する手法がより一般的に用いられる。キサントゲン酸エステルを用いる Barton-McCombie 反応
はその代表例であり、その改良法も種々報告されているが、その多くは中間体の生成を必要と
し、合成工程数や精製の簡便さに大きな改善の余地があった。このような背景を踏まえ、筆者
らは温和な条件下ヒドロキシ基を活性化し、精製作業を挟むことなく C–O 結合の均等開裂、水
素原子移動（HAT）による還元を行える新規活性化剤の開発に着手した。
種々検討の結果、1-アルキル-2-フルオロピリジニウム塩を活性化試薬として用いて、可視光
レドックス触媒条件に付すことで、様々な多官能基性分子の水酸基を簡便に除去できることが
判明した（下図）。なお、この際、ピリジン環 3 位への置換基の導入が反応進行のために重要
であったが、その置換基効果について計算化学的手法を用いて考察した。 ...