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大学・研究所にある論文を検索できる 「Studies on the action mechanism of epoxycyclohexenedione-type compounds, a new class of inhibitors of the mitochondrial ADP/ATP carrier」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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Studies on the action mechanism of epoxycyclohexenedione-type compounds, a new class of inhibitors of the mitochondrial ADP/ATP carrier

Aoyama, Ayaki 京都大学 DOI:10.14989/doctor.k23247

2021.03.23

概要

ミトコンドリアADP/ATP輸送体(AAC)は、ミトコンドリア内膜上でADPとATPの交換輸送を行う膜輸送体であり、マトリックス側で生産されたATPを細胞質へ供給する役割を担っている。AACは細胞のエネルギー代謝に不可欠な膜輸送体であるため、AACの特異的阻害剤に関する研究は、エネルギー代謝を制御する新規な薬剤の開発研究に資するところが大きい。しかし、現在までにAAC特異的阻害剤として報告されているのは、カルボキシアトラクトシド類(CATRs)とボンクレキン酸類(BKAs)の2種類だけである。また、AACに関する構造生物学的情報は非常に限られており、創薬標的としての知見はおろか、AACの構造変化や機能に関する基礎的知見も不足しているのが現状である。本研究は、AACを標的とする新規な特異的阻害剤を探索し、その作用機構研究を通じてAACの構造と機能に関する新たな知見を得ることを目指した。

 第1章では、ウシ心筋ミトコンドリアから調製した亜ミトコンドリア粒子(submi-tochondrial particles,SMPs)による[14C]ADPの取込みを指標として、所属研究室が保有する化合物ライブラリーからAACに対する新規阻害剤の探索研究を行った。その結果、既知の阻害剤であるBKA類やCATR類と分子骨格が全く異なるAMM-59などのエポキシシクロヘキセンジオン類(ECHD類)が、[14C]ADP輸送を顕著に阻害することを見出した。

 ECHD類はエポキシ基とα,β-不飽和カルボニル基の2箇所の求電子性反応点を持つため、AACの阻害には求核性アミノ酸残基との共有結合形成が関わっている可能性が示唆された。これを検証するため、アルキル側鎖にクリックケミストリーの足場となる末端アルキンを持つECHD誘導体AMM-120を合成した。ウシ心筋SMPsをAMM-120存在下でインキュベートし、蛍光発色団を有する検出用タグ(TAMRA-N3)をクリックケミストリーにより導入したところ、AACの分子質量に相当する約30kDaのタンパク質に単一の蛍光バンドが観察され、その蛍光強度は濃度依存的に上昇した。MALDI-TOFMS解析により本タンパク質をAACと同定した。

 次に、AACにおけるECHD類の修飾部位をアミノ酸残基レベルで同定することを試みた。哺乳類AACでは、マトリックス側に露出した3つのシステイン(Cys57、Cys160、Cys257)が広く保存されている。「AAC表面上のシステイン残基がECHD類による化学修飾の標的ではないか」との作業仮説を立て、種々のシステイン修飾剤やペプチド化学分析を駆使して修飾部位の同定を進めた。

 システイン修飾剤であるN-エチルマレイミド(NEM)でウシ心筋AACを処理すると、短時間のインキュベートではCys57のみ、長時間のインキュベートでは3つのシステイン残基全てが化学修飾を受けることがわかっている。AAC表面上の3つのシステイン残基のうち、Cys57を選択的に化学修飾したAAC標品に対してAMM-120を処理したところ、AMM-120による化学修飾が顕著に抑制された。

 一方、ウシSMPsをクロスリンク試薬である銅(II)-O-フェナントロリン(Cu(OP)2)で処理すると、AAC単量体のCys57同士が分子間ジスルフィド結合によって繋がった二量体を形成することが知られている。AMM-59存在下でCu(OP)2処理すると、AMM-59の濃度依存的にAAC二量体の形成が減少し、さらに高濃度条件下では、未修飾のシステイン残基2つによるジスルフィド結合を介したものと予想される三量体が形成された。この結果は、Cys57がECHD類による化学修飾を受けたことで、Cys57を介したAACの二量体形成が抑制されたことを示唆している。

 上記のシステイン修飾剤による実験結果を裏付けるため、AMM-120によって化学修飾した後に蛍光発色団(TAMRA)を導入したAACを単離し、CNBrあるいはLys-Cによる限定消化を行った。これらの処理によって調製した蛍光標識ペプチドのTricine-SDS-PAGEの泳動パターンは、AMM-120によってCys57が化学修飾された場合に期待されるパターンと一致した。以上の結果から、ECHD類による主たる修飾部位はCys57であると結論した。

 第1章の研究過程で、[14C]ADP輸送を阻害する濃度域よりも高濃度のECHD類でSMPsを処理すると、AACの顕著な凝集が誘導されることがわかったが、第2章ではこのAAC凝集誘導のメカニズム解明を行った。AAC表面上に存在する3つのシステイン残基全てをシステイン修飾剤で化学修飾したところ、ECHD類によるAACの凝集誘導は完全に抑制された。一方、Cys57あるいはCys160のみを化学修飾した場合は、依然として凝集誘導が観察されたことから、残り2つのシステイン残基のいずれか、または両者がECHD類と共有結合を形成し、これが凝集反応の“トリガー”になることが示唆された。また、還元条件下あるいはラジカル消去剤の存在下でも同様の凝集現象が誘導されたことから、この凝集はジスルフィド結合やラジカル重合といったメカニズムで誘導されるものではないことがわかった。

 ECHD類と同じく求電子性反応基を持つ高度不飽和脂肪酸の過酸化分解物である4-hydroxy-2-nonenal(4-HNE)は、AACと共有結合を形成することがわかっている。4-HNEのウシ心筋AACに対する効果をECHD類と比較したところ、4-HNEもシステイン残基を選択的に化学修飾することがわかった。しかし、高濃度の4-HNEを作用させてもAACの凝集誘導は起こらず、[14C]ADP輸送の阻害も観察されなかった。この結果から、AACのシステイン残基の化学修飾によるヌクレオチド輸送の阻害や凝集誘導効果は、求電子性の疎水性分子に共通して見られる現象ではなく、ECHD類に特徴的な現象であることが明らかになった。

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