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大学・研究所にある論文を検索できる 「Mode of action studies on pentenediols and tamoxifen with mitochondria」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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Mode of action studies on pentenediols and tamoxifen with mitochondria

Unten, Yufu 京都大学 DOI:10.14989/doctor.k23954

2022.03.23

概要

ミトコンドリアの酸化的リン酸化に関与するタンパク質は、プロトン駆動力を生む呼吸鎖酵素、ATPを合成するATP合成酵素、基質の膜輸送を担う膜輸送体の3種類に大別される。これまでに多数の阻害剤が発見され医農薬の創薬標的として注目されている呼吸鎖酵素やATP合成酵素とは対照的に、ミトコンドリア膜輸送体に対する特異的阻害剤の報告は極めて限られている。そのため、膜輸送体に対する新規阻害剤の発見は新たな作用機序を持つ創薬シーズ化合物となることが期待される。本論文では、独自に見出したペンテンジオール(PTD)類、および抗がん剤タモキシフェン(TAM)の作用機構研究を進め、両化合物ともにミトコンドリア外膜に局在する膜輸送体の一つであるVDACに結合することを明らかにした。

第一章では、出芽酵母から単離したミトコンドリアを用い、酸化的リン酸化の素過程を全て網羅した「ADP取り込み/ATP排出」反応を指標として、所属研究室の化合物ライブラリーからミトコンドリア膜輸送体の阻害剤を探索した。その結果、ペンテンジオール構造を持つ化合物(PTD類)が、1桁µMレベルで同反応を阻害することを見出した。この阻害メカニズムを明らかにするため、呼吸鎖酵素、ATP合成酵素に対する影響を精査した結果、これらの酵素に対する阻害は認められなかったため、PTD類はミトコンドリア膜輸送体を阻害していることが示唆された。

そこで、トシル化学法によってミトコンドリアにおけるPTD類の標的分子を明らかにすることを試みた。分子末端にトシル基を持つtPTD-023を合成し、これをミトコンドリアと反応させることで、標的分子へ末端アルキンの導入を行い、続くクリックケミストリーによって蛍光タグ(TAMRA)を導入した。SDS-PAGE後に蛍光検出を行ったところ、30 kDa付近に単一のバンドを検出した。このバンドをトリプシン消化しMALD I TOF/MSで分析したところ、VDAC1であることが示唆された。VDAC1欠損酵母から単離したミトコンドリアに対して同様のトシル化学を行うと、蛍光バンドが完全に消失したことから、PTD-023の標的分子はVDAC1であると結論した。

続いて、VDAC1において末端アルキンが導入されたアミノ酸残基を同定するため、プロテアーゼによるペプチドマッピングを行った。その結果、VDAC1が有する2つのシステイン(C130、C210)を含むペプチド断片が標識されていた。また、システイン修飾剤であるN-エチルマレイミドによる前処理で蛍光バンドが消失したことから、末端アルキンはこの2つのシステインへ導入されたことがわかった。

さらに、VDAC1におけるPTD-023の結合部位を明らかにするため、ヒトVDAC1の結晶構造を基に酵母VDAC1の構造モデルを作成した。「PTD-023の2つの水酸基はVDAC1の酸性アミノ酸残基と水素結合を形成する」と予想し、結合可能な範囲にある酸性アミノ酸残基(D139、E152)を選抜した。二重変異株(D139A/E152A)から単離したミトコンドリアでは、PTD-023による「ADP取り込み/ATP排出」阻害が約30%軽減した。以上の結果から、PTD-023はD139およびE152と水素結合を形成してVDAC1に結合していることが強く示唆された。

第二章では抗がん剤TAMの作用機構研究を行った。TAMはエストロゲン受容体(ER)のアンタゴニストとして見出され、ER陽性乳がんに対する治療薬として長年用いられて来た。しかし、ERの有無に関わらず、その他のがん細胞に対しても細胞死を誘導し抗がん活性を示すことがわかっている。細胞死誘導の要因としてミトコンドリアにおける標的分子の存在が示唆されているが、その作用機構については統一的な見解が得られていない。特に、細胞死誘導の初動鍵反応とされるミトコンドリア膜透過性亢進を抑制することが報告されており、がん細胞において細胞死を誘導するという見解と矛盾する。そこで本章では、ラット肝臓から単離したミトコンドリアに対するTAMの効果を検証した。

膜透過性亢進に与える影響を明らかにするため、過剰のCa2+が誘導するミトコンドリアの膨潤とそれに伴うシトクロムcの漏出に対する効果を調べた。その結果、膨潤もシトクロムcの漏出もTAMによって顕著に抑制された。ミトコンドリアのマトリックス内のCa2+はリン酸カルシウムの形態で保持されるが、リン酸によって保持できない遊離Ca2+が上昇すると膜透過性亢進が誘導されると考えられている。そこで、「TAMはマトリックス内へのCa2+あるいはリン酸の輸送に影響する」という仮説を立て、両イオンの輸送に対する影響を調べた。その結果、Ca2+の取り込み阻害は認められなかったが、リン酸の取り込みを促進することが明らかになった。以上より、TAMはリン酸輸送を促進することでマトリックス内におけるCa2+の保持能力を高め、膜透過性亢進を抑制すると結論した。

TAMがリン酸輸送を促進したことからその標的分子の存在が示唆されたため、光親和性標識法によって標的分子の同定を試みた。光反応性タモキシフェンpTAM1を合成し、光親和性標識を実施した結果、pTAM1はVDAC1およびVDAC3を特異的に標識した。この結果から、TAMはミトコンドリア外膜に局在するVDAC1およびVDAC3に結合することで、マトリックス内へのリン酸輸送を促進することが強く示唆された。

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