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大学・研究所にある論文を検索できる 「Total Synthesis of Haliclonin A」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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書き出し

Total Synthesis of Haliclonin A

金, 源 名古屋大学

2021.06.03

概要

【研究背景】
Haliclonin A( 1)は四環性骨格を有する海洋性アルカロイドであり、 2009 年に Oh、Shin らにより韓国近海に棲息する海綿の一種である Haliclona sp.より単離、構造決定された 1 。1 の構造的特徴は 3-アザビシクロ[3.3.1]ノナン骨格、およびそれらを介して二つの大員環がねじれるように縮環している点が挙げられる。また、本天然物は K562ヒト白血病細胞に対して細胞毒性( IC 50 =15.9 μg/mL) を示し、グラム陽性、陰性菌を含む多くの細菌に対して抗菌活性を示す。Haliclonin A の特異な構造及び生物活性に興味を持ち、本天然物の効率的かつ独自性の高い合成経路を目指し研究に着手した。

【十七員環の構築】
市販品の 3,5-ジメトキシ安息香酸( 2) を Birch 還元の条件に付した後、臭化アルキル 3 と反応させ、アルキル基を導入して化合物 4 へと変換した。続いて、4 に強塩基を作用させ、化合物 5 を用いた面選択的なアルキル化反応 2 を経て、望みの立体化学で化合物 6 へと変換した。その後、6 のカルボキシ基をメチル化することで 7 へと変換した。7 に対し、水素化アルミニウムリチウムを用いてアルコールへと還元し、メタセシスの前駆体 8 を調製した。8 を閉環メタセシス反応にて 9 へと変換した。最後に、水素化反応にて 10 を合成し、天然物が有する十七員環の構築を完了した。

【3-アザビシクロ[3.3.1]ノナン骨格の構築】
化合物 10 にブロモアセチルブロミドを作用させ、α -ブロモ酢酸エステルへとした後、 N,N’-ジトシルヒドラジンを用いてジアゾ化合物 11 へと変換した 3 。化合物 11 に対して銅触媒を作用させたところ、分子内シクロプロパン化反応 4 が円滑に進行し、C1-C10の結合を有する 12 を与えた。12 を塩基性条件下でラクトンを開環させた後、酸性条件に付すことで、化合物 13 とした。13 を水素化ジイソブチルアルミニウムで還元し、続いて酸処理を施すことで不飽和ケトン 14 へと導いた。14 に対し、塩化メタンスルホニルとトリエチルアミンを作用させ、エノールエーテル 15 へと変換した。15 に対するビニル銅試薬の 1,4-付加は大員環架橋鎖の反対側から進行し、生じた中間体のプロトン化も同じ側から進行することで望みの 16 を立体選択的に得た 5 。16 に対し、必要な官能基変換を行い、5 工程にて化合物 17 へと変換した。17 のビニル基を 3 工程にてアミドへと変換し、化合物 18 を合成した。18 を脱保護し、ジオール 19 とした。19 を Swern 酸化にて同時酸化することでジアール 20 へと変換した後、 PPTS 存在下加熱することで化合物 21 を合成した。最後に、21 の N,O-アセタールを還元することで 22 へと変換し、3-アザビシクロ[3.3.1]ノナン骨格の構築を完了した。

【十五員環の構築】
十五員環の構築に向けて、十七員環及び 3-アザビシクロ[3.3.1]ノナン骨格の立体的特性を利用し、不飽和アルデヒドの構築及び立体選択的なアリル基の導入を行った。22を Dess-Martin 酸化にてアルデヒド 23 へとした後、ピペリジンを用いてエナミンへと変換した。その後、フェニルセレネニルクロリドを作用させたところ、24 が得られた。なお、立体選択性については、アリル位歪みにより配座が制御されたエナミンに対し、フェニルセレネニルクロリドが立体障害の小さい側から反応することで、望みの立体化学をもつ 24 が得られたと考えている。続いて、24 を過酸化水素で酸化し、E-不飽和アルデヒド 25 へと変換した。25 に対し、立体選択的なアリル化を検討したところ、アリルボロン酸ピナコールエステルを用いた際に、望みの立体化学をもつ 26 が主生成物として得られた。立体選択性については、アリルボロン酸ピナコールエステルが不飽和アルデヒド 25 へと付加する際に、十七員環架橋鎖との立体反発によって生じたと考えている。26 の水酸基を TBS 基で保護し、メタセシスの前駆体 27 を調製した。27に対し、第 1 世代 Grubbs 触媒を作用させたところ、反応が円滑に進行し、目的生成物 28 が E/Z 混合物で得られ、天然物が有する十五員環の構築を完了した。

【全合成】
得られた E/Z 混合物 28 に対し、脱アセチル化反応を行ったところ、幾何異性体の分離が可能となり、望みの Z 体 29 を 26%、E 体を 44%の単離収率で得た。29 に対し、トシル基の除去及び N-ホルミル化を行った後、第二級アルコール部位を酸化し、30へとした。最後に、TASF で TBS 基を除去し、Haliclonin A( 1) へと導いた。

参考文献

(1) Jang, K. H.; Kang, G. W.; Jeon, J.-e.; Lim, C.; Lee, H.-S.; Sim, C. J.; Oh, K.-B.; Shin, J. Org. Lett. 2009, 11, 1713-1716.

(2) Bennett, N. J.; Elliott, M. C.; Hewitt, N. L.; Kariuki, B. M.; Morton, C. A.; Raw, S. A.; Tomasi, S. Org. Biomol. Chem. 2012, 10, 3859-3865.

(3) Toma, T.; Shimokawa, J.; Fukuyama, T. Org. Lett. 2007, 9 , 3195-3197.

(4) Corey, E. J.; Myers, A. G. Tetrahedron Lett. 1984, 25, 3559-3562.

(5) Orihara, K.; Kawagishi, F.; Yokoshima, S.; Fukuyama, T. Synlett 2018, 29, 769-772.

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