Bilobalideの合成研究
概要
【背景・目的】
Bilobalideはイチョウの葉から単離されたセスキテルペノイドである。欧州では古くからイチョウ葉エキスが虚血性脳疾患の治療薬として用いられてきた。bilobalideはその中に含まれる生物活性物質の一つであり、GABA受容体の拮抗作用や神経保護作用等を有することからアルツハイマー病の創薬シーズとして期待され、網羅的な構造活性相関研究が望まれている。一方、bilobalideは酸素官能基が密集したトリラクトン骨格を持つことに加え、立体的に嵩高いt-Bu基が置換した五員環上に三つの四置換炭素を有しており、その全合成は挑戦的な課題である。筆者は、bilobalideの特異な骨格を効率的に構築する全合成経路の確立を目的として合成研究を行った。
【研究結果】
Bilobalideの炭素骨格の合成にあたり、パラジウム触媒を用いた還元的環化反応によるシクロペンタン環の構築、Diels-Alder反応よる連続第四級炭素の構築、ケトンへの1,2-付加反応によるt-Bu基の導入を行うことで、Bilobalideのすべての炭素原子を有する化合物を合成した。さらに、酸素官能基を順次導入することでCoreyが報告した全合成の中間体へと導いた。