情報教育のための学内LAN環境整備の在り方について
概要
新型コロナウイルス感染症の流行は2021年度になっても終息することなく、人類の社会活動に大きな影響を与え続けている.本学における研究教育活動もその影響を強く受け、この2年間、様々な制約の中に閉じ込められてきた.特に大学にとって最も重要な使命である「講義の開講」については、学内ネットワークとインターネットを媒介とする「オンライン」通信に大きく依存することになった.この状況は他大学でも同様であり、大学での学びの環境を継続するための工夫が、世界中で試みられている.そして、もはや大学の授業のオンライン化は一部の構成員に任せて実施できるものではなく、教員と事務員、そして学生をも巻き込んで、大学組織全体で行わねばならないという意識が醸成されているように思われる.
そのような意識変革を経た本学の大学人たちは、本学の情報通信を担う学内LAN (Local Area Network)であるTYCOON(ToYaku COmputer Open Network)[1]の重要性を再認識し、自身の職務をオンラインで実施するために、より深くTYCOONを理解するべきであると意識しているように思われる.例えば「学内の情報ネットワークは電気・ガス・水道と同じように、重要な学内インフラである」という発言が、本学のICT整備委員会や情報教育研究センターのユーザー会議において聞かれるようになった.
そこで、これまでは教員組織である情報教育研究センターが財務企画部の総合企画課の支援を受けて管理・運用してきた学内LANの基幹部分を、2022年度からは総合企画課に主体となって頂き管理することとなった.「学内LANの基幹部分」とは、学内LANを構成するスイッチングハブとそれらを結ぶ通信ケーブル、IPアドレスを動的に配布するDHCP (Dynamic Host Configuration Protocol)サーバ、高階層のデータ通信に直接関わるファイアウォール(防火壁)やロードバランサー等、そしてインターネット回線[2]である.情報教育研究センターとしてはこの管理主体の移行をTYCOONの新たな時代の到来として心から歓迎しているが、果たしてこれらの機器システムは「電気・ガス・水道」と技術的に同レベルのインフラとして管理や運用、そして更新を行うことができるのであろうか.
そこで本稿では、1992年から始まった本学の学内LAN構築に関する歴史を眺めることで古きを温め、学内LAN環境整備の在り方について次世代に伝えるべきことを文字として残しておきたいと思う.