IgM五量体の真の構造の発見と疾患抑制タンパク質AIMとの相互作用解析
概要
[課程-2]
審査の結果の要旨
氏名
平本 絵美莉
本研究は、IgM 五量体と結合することで機能が不活性化されている Apoptosis inhibitor
of macrophage (AIM) について、その活性の制御を目指し、AIM-IgM 五量体間の相互作
用を解明することを目的としたもので、下記の結果を得ている。
1.
ネガティブ染色法による IgM-Fc および IgM 五量体(J 鎖存在下)の二次元構造解
析を行ったところ、IgM 五量体はこれまで考えられてきた正五角形型ではなく、六
量体から 1 つ単量体が抜けたような大きな空間を有する正六角形型の五量体である
ことが明らかとなった。これは、従来信じられてきた IgM 五量体の構造を覆す新し
い発見である。
2.
ネガティブ染色法による AIM-IgM-Fc 五量体(J 鎖存在下)複合体の二次元構造解
析を行ったところ、IgM 五量体の空間に AIM が 1 分子存在していることが明らかと
なった。
3.
ネガティブ染色法による IgM-Fc(J 鎖非存在下)の二次元構造解析を行ったところ、
IgM は J 鎖非存在下では主に六量体を形成することが確認された。また、わずかに
五量体も存在していたが、その空間は J 鎖存在下の IgM 五量体よりも狭いものであ
った。これまでに、AIM は J 鎖非存在下の IgM には結合しないことが報告されてい
たが、これは AIM が結合し得る空間が存在しないためであると判明した。
4.
AIM および IgM-Fc 五量体の分子内ジスルフィド結合に寄与していない遊離システ
イン残基をセリン残基に置換した変異体 (それぞれ AIM C194S、IgM C414S) では、
複合体形成能が失われていた。このことから、AIM と IgM 五量体の結合には両分子
間のジスルフィド結合の形成が必須であることが明らかとなった。
5.
SRCR1 ドメイン欠損型 AIM(AIM ΔSRCR1)および SRCR3 ドメイン欠損型 AIM
(AIM ΔSRCR3)を作製し、それぞれの IgM-Fc 五量体との結合能を調査した結果、
AIM ΔSRCR3 でのみ結合能が失われていた。また、AIM C194 と IgM-Fc C414 の
結合をベースとしたドッキングモデルから、AIM SRCR3 ドメインの正電荷アミノ酸
クラスターと IgM C4 ドメインの負電荷アミノ酸クラスターが近接していることが
明らかとなり、AIM と IgM 五量体の結合には、AIM SRCR3 ドメインと IgM C4
ドメインの電荷相互作用も重要であることが示唆された。
以上、本研究では IgM 五量体の真の構造を明らかにするとともに、AIM と IgM の結合
様式を同定した。本研究は、AIM を IgM 五量体から解離させ活性化することによる、さま
ざまな治療法の開発に貢献するものであると考えられる。
よって本論文は博士( 医学 )の学位請求論文として合格と認められる。