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Adiponectin can be a good predictor of urodynamic detrusor underactivity: a prospective study in men with lower urinary tract symptoms

石川, 智啓 名古屋大学

2023.10.05

概要

主論文の要旨

Adiponectin can be a good predictor of
urodynamic detrusor underactivity:
a prospective study in men with
lower urinary tract symptoms
アディポネクチンは尿流動態学的な排尿筋低活動を
予測する:下部尿路症状のある男性を対象とした
前向き研究

名古屋大学大学院医学系研究科
病態外科学講座

総合医学専攻

泌尿器科学分野

(指導:赤松 秀輔
石川 智啓

教授)

【緒言】
下部尿路症状(LUTS)は高齢男性の多くに見られる。主な原因は、前立腺肥大症によ
る機械的な膀胱出口部閉塞(BOO)と考えられているが、排尿筋低活動(DU)も LUTS の
主要な原因である。LUTS を有する男性への最適な治療のためには BOO と DU の鑑別
が必要であるが、正確な診断のためには、内圧尿流検査(PFS)が必要である。しかし、
PFS はルーチンでの実施が困難なため、下部尿路機能障害の有用なマーカーを同定す
る研究が行われている。前立腺体積や膀胱内前立腺突出(IPP)は BOO の予測に有用で
あることが報告されているが、LUTS を有する男性において DU の存在を高い精度で
予測できるマーカーに関する報告はほとんどない。
近年、高齢男性における LUTS の発症には、生活習慣病やメタボリックシンドロー
ム(MetS)が密接に関連していることが疫学研究により示唆されている。生活習慣病や
MetS は、血管内皮機能を低下させ、動脈硬化を促進し、膀胱への血流低下をもたらす
可能性がある。慢性膀胱虚血は、DU や排尿筋過活動(DO)などの膀胱機能障害を引き
起こすことが報告されており、生活習慣病や MetS に関連するプロテオームが膀胱機
能障害の予測マーカーになる可能性がある。
最近の研究では、内臓脂肪組織によるアディポネクチン、レプチン、TNF-α、IL-6 な
どの様々なアディポカインの分泌異常が、血管内皮機能を低下させて動脈硬化を促進
することが明らかにされている。特に、有益なアディポカインであるアディポネクチ
ンは、抗炎症作用や抗動脈硬化作用を持つことが報告されている。
本研究では、血中アディポネクチン値が膀胱機能障害、特に DU の有用な予測因子
となり得ると仮定し、非神経原性 LUTS の男性において血中アディポネクチン値と尿
流動態学的パラメータとの関連性を前向きに検討した。
【対象及び方法】
本研究は名古屋大学大学院医学系研究科の施設審査委員会により承認された前向
き観察研究である。2018 年 4 月から 2020 年 12 月までに当院を受診した非神経原性
LUTS を有する 65 歳以上の治療歴のない男性 130 名を対象とした。膀胱結石、活動性
尿路感染症、重度の心疾患、肝機能障害、腎機能障害のある患者、試験開始時に癌治
療を受けている患者、チアゾリジン誘導体を投与中の糖尿病患者は除外した。
LUTS の重症度とタイプを評価するために、国際前立腺症状スコア、排尿、蓄尿、
QOL のサブスコア、過活動膀胱症状スコアを調査した。さらに、蓄尿機能と排尿機能
を評価するために尿流動態検査を実施した。蓄尿機能のパラメータとして、最大膀胱
容量、膀胱コンプライアンス、DO を評価し、排尿機能のパラメータとして、最大流量
(Qmax)、排尿後残尿量、膀胱排尿効率(BVE)、Qmax 時の排尿筋圧(PdetQmax)、膀胱
収縮指数(BCI;BCI=PdetQmax+5Qmax)、膀胱出口閉塞指数(BOOI;BOOI=PdetQmax2Qmax)を評価した。DU は BCI<100、BOOI<40 と定義し、DO は蓄尿相に≧10cmH2O
の増加する振幅を持つ排尿筋の無抑制収縮と定義した。
血中アディポネクチン値は、概日リズムの影響を最小限にするため、すべての症例

-1-

で午前 9 時から 10 時の間に測定した。アディポネクチン測定の再現性を確認するた
め、試験参加者から無作為に抽出した 10 名の患者に対して、別々の機会に 2 回測定を
実施した。
主要評価項目は、血中アディポネクチン値が LUTS を有する男性における DU の有
用な予測因子であるかどうかを明らかにすることであり、副次評価項目は、血中アデ
ィポネクチン値と下部尿路機能障害との関係とした。
患者を DU の有無に基づき 2 群(DU 群、非 DU 群)に層別化した。血中アディポネ
クチン値や LUTS パラメータなどの患者背景を、単変量解析と多変量解析を用いて 2
群間で比較し、多変量解析により DU の診断に有意であることが判明したパラメータ
を用いて、ROC 曲線解析により、DU の診断の精度、特異度、カットオフ値を算出した。
統計解析は、SPSS version 28 により実施した。統計値はすべて、正規性の検定を行
っている。血中アディポネクチン値と下部尿路機能に関するパラメータとの相関を評
価するために、スピアマンの相関係数を算出した。患者背景と LUTS パラメータをグ
ループ間で比較するために、Mann-Whitney U-test と χ-squared test を使用した。また、
群間比較で有意差を示したパラメータを独立変数として、二項ロジスティック回帰分
析を実施した。さらに、ROC 曲線解析を行い、DU を予測するための有意なパラメー
タのカットオフ値を決定した。すべての検定は両側で行い、P 値<0.05 は統計的に有
意であるとみなした。
【結果】
本研究に登録された 130 名の男性のうち、12 名の患者が除外基準を満たすか、デー
タが不十分であったため除外され、118 名が解析対象となった。総血中アディポネク
チン値の中央値は、全コホートで 9.1μg/mL(2.3-41.7)であった。血中アディポネクチン
値は、前立腺体積および BOOI とは相関がなかったが、LUTS 重症度、膀胱コンプラ
イアンス、DO 発症率、BCI とは有意な相関があった。
118 名のうち、39 名(33.0%)が DU と診断され(DU 群)、79 名(67.0%)が DU を認め
なかった(非 DU 群)。年齢と BMI に差はなかったが、血中アディポネクチン値の中央
値は、DU 群の方が有意に低かった(DU:6.2 [4.9-7.4] vs 非 DU:12.6 [8.4-17.1], p<0.001)。
前立腺体積、IPP、BOOI は非 DU 群で有意に高かったが、BCI、Qmax、BVE は DU 群
で有意に低く、LUTS は DU 群で有意に重度であった。
二項ロジスティック回帰分析では、血中アディポネクチン値の低下、IPP の低下、
BVE の低下が DU の発生に関連する有意な因子であった。DU の診断に対して行った
ROC 解析では、曲線下面積(AUC)は、総血中アディポネクチン値、IPP、BVE でそれ
ぞ れ 0.849, 0.754, 0.714(95% confidence interval [CI] 0.776-0.922; 0.664-0.844; 0.6160.811)であり、血中アディポネクチン値は DU 診断の AUC 値としては最大であった。
ROC 曲線解析では、DU を診断するための血中アディポネクチン値の最適なカットオ
フ値として 7.9μg/mL が特定され、感度と特異度はそれぞれ 79%と 90%であった。

-2-

【考察】
本研究は血中アディポネクチン値が LUTS の重症度や膀胱機能と関連し、DU を有
する男性で有意に低いことを報告した最初の研究である。アディポネクチンは容易に
測定でき、再現性も高いため、アディポネクチン測定は、DU を含む膀胱機能障害の診
断において、臨床現場での有意義なスクリーニングツールになると考えている。
アディポネクチンはヒトの血漿中に 3~30μg/mL の濃度で存在する。ヒトの血中ア
ディポネクチン濃度は内臓脂肪の蓄積や BMI と負の相関があるだけでなく、生活習慣
病や MetS の患者でも低下する。アディポネクチンは血管平滑筋の増殖、単球・マク
ロファージの機能、血管内皮細胞における接着分子の発現を抑制するなど、さまざま
な作用によって動脈硬化を緩和する。逆に、アディポネクチンの欠乏は動脈硬化の進
行を許して膀胱への血流を減少させる可能性がある。慢性膀胱虚血は LUTS の進行や
膀胱機能障害の発症につながることが報告されており、血中アディポネクチン値の低
下が LUTS の進行や膀胱機能障害の発症に関連する可能性がある。
DU を診断するための感度・特異度の高い血中アディポネクチン値のカットオフ値
は 8μg/mL であったが、他疾患に関する先行研究の結果を考慮すると、今回のカット
オフ値は妥当であると思われる。
本研究の限界として、健常者の対照群や BMI や生活習慣病が異なる患者群を含めて
いないこと、抗コリン薬やスタチンや抗炎症薬の服用者を完全には除外できていない
ことが挙げられる。また、本研究は横断的研究であり、LUTS の治療による血中アデ
ィポネクチン濃度の変化、血中アディポネクチン濃度の上昇による膀胱機能の改善効
果は不明である。今回の結果から、アディポネクチンは膀胱機能障害のスクリーニン
グマーカーとして有用であると同時に、LUTS に対する治療効果を予測する因子とな
る可能性がある。これらの仮説を確認するためには、さらなる介入研究が必要である。
【結論】
血中アディポネクチン値は、膀胱機能障害と有意な関連性を示し、LUTS を有する
男性における DU を予測する有用な因子となる可能性があることが示された。

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