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大学・研究所にある論文を検索できる 「ハンナ型間質性膀胱炎に関する基礎的・臨床的研究 : 動物モデルの作成、臨床像の特徴、尿中バイオマーカーの探索」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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ハンナ型間質性膀胱炎に関する基礎的・臨床的研究 : 動物モデルの作成、臨床像の特徴、尿中バイオマーカーの探索

新美, 文彩 東京大学 DOI:10.15083/0002008311

2023.12.27

概要

審査の結果の要旨

氏名

新美

文彩

本論文は原因不明の疼痛および高度の頻尿をきたす間質性膀胱炎(Interstitial Cystitis:
IC)のうち、指定難病であるハンナ型間質性膀胱炎(Hunner type IC:HIC)の病態を明らか
にし、また将来的な創薬研究に供することを目的に、HIC と類似した慢性炎症および頻尿
を呈する動物モデルの作成を試み、更に IC の診断精度および診療成績を向上させることを
目的として、患者背景や長期予後について臨床的検討を行い、HIC とそれ以外(nonHIC:
NHIC)の違いを明確にしたうえで、診断および経過観察に用いることができる HIC に特
徴的な尿中バイオマーカーについての探索を行ったものであり、下記の結果を得ている。
1.

慢性膀胱炎モデルの作成を目的として 10 週齢の雌性 SD ラットの膀胱にプロタミ

ン硫酸塩およびリポポリサッカライドを 5 日間連続で注入し、投与前および投与後 10 日目
および 17 日目に、メタボリックケージを用いて排尿行動を評価したが、投与後 10 日目で
一時的に排尿回数が増加するも投与後 17 日目では排尿回数が投薬前と同等に戻っており、
膀胱炎症状が持続しないことが明らかとなった。更に病理学的にも炎症所見の残存は軽微
でありヒトで認められる、慢性的炎症を構築することができなかった。これまでの報告を鑑
みても、外因性の物質で頻尿を伴う慢性的な膀胱炎をラットに誘導することは困難なこと
が想定された。
2.

IC と診断された 191 例の長期予後について解析したところ、HIC では排尿回数が

有意に多く、1 回排尿量が有意に少なく、NHIC と比較してより重症の排尿症状があること
が明らかとなった。しかしながら疼痛 NRS や QOL スコアでは両群間で有意差を認めなか
った。また、NHIC では腰部脊柱管狭窄症、過敏性腸症候群の併存が有意に多いことが明ら
かとなった。
3.

IC に対する膀胱水圧拡張術による非再発期間は全体で 27.5 ヶ月であり、両群間に

有意差はなかったが、12 ヶ月目までの非再発率は HIC で有意に高く、60 ヶ月では逆転し
ていた。非再発期間に影響を与える患者背景については、多変量解析では、HIC と NHIC
の両群において、腰部脊柱管狭窄症の合併が再発のリスク因子であり、NHIC のみにおいて
過敏性腸症候群もリスク因子であったことが明らかとなった。

4.

HIC,NHIC および対象の尿中バイオマーカーの比較解析したところ、NGF と

CXCL10 のみで、3 群間に有意差を認めた。NGF は、HIC 群、NHIC 群とも対照群と比較
して有意な上昇を認め、HIC 群と NHIC 群間の比較では HIC 群で有意な上昇を認めた。
CXCL10 についても、HIC 群は対照群および NHIC 群に比べて有意に上昇していたが、一
方で NHIC 群では対照群に比べ CXCL10 が有意に低下していた。
5.

CXCL10 と NGF について ROC 曲線での解析したところ、対照群と HIC の鑑別

については、CXCL10 と NGF との両者を用いると、AUC 0.86、
感度 80.5%、特異度 83.4%、
陽性適中率 86.8%、陰性適中率 75.8%と良好な結果であった。HIC 群と NHIC 群の鑑別で
は、CXCL10 の AUC は 0.78、陽性適中率 97.7%、陰性適中率 60.0%と良好な結果を示し
た。
6.

尿中 CXCL10 は、自覚症状の指標である OSSI と OSPI と相関を示した。一方で

尿中 NGF は、自覚症状との相関は認めなかった。また、治療前後の尿中 CXCL10 について
評価したところ、治療にともない有意な低下を認めた。これらは治療に伴う自覚症状スコア
の変化とも連動しており、CXCL10 は臨床経過の評価に有用であることを見出した。
以上、本研究では、まず HIC に類似した動物モデルの作成を試みたが、急性炎症は誘導
できたものの慢性炎症モデルを作成することは困難であった。次いで、これまでの報告で最
大規模での症例数を用いて、臨床的背景および長期予後を解析し、HIC では膀胱痛に加え
て頻尿が特徴的で、膀胱水圧拡張術とハンナ病変焼灼術との併用で早期から症状の改善が
みられることを明示した。また、NHIC では腰部脊柱管狭窄症を中心とした神経障害性疼痛
の原因となる疾患の併存が有意に多く、再発のリスク因子でることを明示した。更に、非侵
襲的なバイオマーカーを求めて尿中物質の解析を行い、尿中 CXCL10 が HIC の診断と治療
反応性を評価する指標となりうることを初めて見出した。本研究はこれまでに有効な手段
が確立されていなかった、ハンナ型間質性膀胱炎の病態解明および診断精度の向上に重要
な貢献をなすことが期待される。
よって本論文は博士( 医学 )の学位請求論文として合格と認められる。

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