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大学・研究所にある論文を検索できる 「拡張トリプチシル骨格を活用したジシレンジアニオンの合成と性質」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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拡張トリプチシル骨格を活用したジシレンジアニオンの合成と性質

西野 龍平 立教大学

2022.06.02

概要

第三周期以降の元素からなる多重結合は、狭い HOMO-LUMO ギャップに起因する高い反応性や特異な物性を示す。特に、周期表上で炭素の真下に位置するケイ素は、その性質に加えて地球上に豊富に存在する元素であることから、レアメタルを代替する元素として注目が注がれている。しかしその一方で、ケイ素多重結合は不安定で適切な安定化が必須なことや、ケイ素ケイ素結合形成反応が限られていることにより、合成が非常に難しく、研究が大きく後れている。特に、ケイ素ケイ素結合形成反応の乏しさは、骨格の多様性を大きく制限することから、汎用性の高い新たなビルディングブロックの開発が求められている。本論文では、ケイ素の化学を更に展開する上で要請されるケイ素二重結合のビルディングブロックとして、ジシレンジアニオンの合成と、その基本的な性質の解明について述べられている。

第二章では、ジシレンジアニオンの合成、単離に必須とされる安定化に関する分子設計指針を得るための検討について述べられている。高反応性化学種の安定化手法として、その周辺に立体保護基と呼ばれるかさ高い置換基を導入し、立体的に保護する手法が有効であるが、目的とする化合物によって要求される保護能や分子形状が異なるため、保護基と被保護部位を含めた分子全体の綿密な設計が必要となる。申請者はこれを解決するため、剛直な骨格を有することで知られるトリプチシル基を基盤とし、その周辺部を拡張したトリプチシルスター(Trp*)基を設計しており、その予備的検討として、ジシレンジアニオンの構造類縁体であるリンやアンチモンの二重結合化学種の合成を行っている。そして、これらの化合物が非常に高い安定性を有することを見出し、ジシレンジアニオン合成の分子設計指針を確立することに成功している。

第三章では、第二章で得られた知見をもとに、実際にジシレンジアニオンの合成に取り組み、数々の条件検討を行いその合成を達成するに至った。従来、ジシレンジアニオンは非常に不安定な化学種と考えられていたものの、本研究で合成に至ったジシレンジアニオンは熱的に非常に安定であり、固体状態で保存することが可能な程であった。X 線結晶構造解析により構造を決定し、スペクトル測定、理論計算の結果と合わせ、合成した化合物は確かにジシレンジアニオンとしての性質を有するという結論を見出している。さらに、ジシレンジアニオンの性質をより詳細に明らかとするべく、カウンターカチオンの交換反応を行い、カチオンによってジシレンジアニオンの構造パラメーターが系統的に変化することを見出している。反応性に関しても調査が行われ、酸化反応によってケイ素間三重結合化合物ジシリンを得ることに成功しており、ジシリンとジシレンジアニオンの酸化還元反応を行うことにはじめて成功した。そして、ジシレンジアニオンのビルディングブロックとしての活用についても検討され、各種ハロゲン化物との反応によって対応するジシレン誘導体を得ることに成功し、本化合物が、ケイ素多重結合のビルディングブロックとして利用可能であることをはじめて実証した。

第四章では、第三章で合成したジシレンジアニオンの汎用性をさらに広げるべく、より大きな反応空間を提供可能な新たな分子設計指針を確立した。強力な安定化効果を発現する Trp*基を遠隔位に配置した Trp*メチル基による保護を行うことで、安定性を保ちつつより大きな空間を有するジシレンジアニオンを合成するに至っている。X 線結晶構造解析により構造を決定し、結合パラメーターや幾何学的な特徴から、より大きな反応空間が存在することを示すことにも成功している。また、理論計算を用いた詳細な電子状態の検討の結果、第三章で合成したものと同様、確かにジシレンジアニオンとしての性質を有することを見出した。

以上、本論文では、綿密な分子設計検討の結果、合成が困難と考えられていたジシレンジアニオンの合成を達成し、その基本的性質を明らかにすることに成功した。

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