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大学・研究所にある論文を検索できる 「Imaging of Hydroxyl-Radical Generation Using Dynamic Nuclear Polarization-Magnetic Resonance Imaging and a Spin-Trapping Agent」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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Imaging of Hydroxyl-Radical Generation Using Dynamic Nuclear Polarization-Magnetic Resonance Imaging and a Spin-Trapping Agent

庄田, 真一 岐阜大学

2021.03.25

概要

活性酸素種(ROS)は,正常および異常な細胞代謝から生成され,細胞生理学において有益な役割も果たしているが有害な事象も引き起こす。ROSの有害な影響として,脂質,タンパク質,核酸,糖などの生体分子への酸化的損傷などがある。この酸化ストレスは,炎症,神経変性疾患(アルツハイマー病,パーキンソン病),アテローム性動脈硬化症,糖尿病,癌などのさまざまな疾患に関係している。ROSの中で,ヒドロキシルラジカル(・OH)は,反応速度定数が高いため,生体系で最も反応性の高い分子の1つとして知られている。したがって,・OHのモニタリングは,酸化還元メカニズムの評価や酸化的疾患の診断に役立つ可能性がある。これまでに・OHの検出については蛍光プローブ法や化学発光などを使用した高感度な手法が多くの研究で報告されている。ただしこれらの方法は検出光の透過性(1mm程度)による制限があり生体深部の検出に使用することは困難である。一方でスピントラッピング剤を用いた電子スピン共鳴分光法(EPR)はラジカルスペクトルの検出によってROSを識別するための有用な手法である。この手法では短寿命の酸素由来ラジカルがスピントラッピング剤によってトラップされた後に長寿命のラジカルが形成され,そのEPRスペクトルを検出する。スピントラッピング剤として一般的な5,5-ジメチル-1-ピロリンN-オキシド(DMPO)は,・OHを捕捉したスピン付加物としてDMPO-OHが存在し,固有のEPRスペクトルを生成する。EPRはスペクトルの検出において優れた手法であるが,画像化を行うには空間解像度が比較的低く,またスピントラップ付加物寿命による制限のため・OHの視覚化は困難である。今回我々が用いたインビボ動的核分極(DNP)-MRIは,MRIの解剖学的解像度でフリーラジカルに関する時空間情報を取得するための非侵襲的イメージング法である。MRIパルスシーケンスを適用する前に対象フリーラジカルの共鳴周波数と一致するEPRを照射することにより,DNP効果を誘起し組織内でのフリーラジカルを含むプロトン信号を劇的に高めることができる。本研究ではDNP-MRIとDMPOを使用した・OHの可視化と,DMPO-OHのDNPイメージングによるラジカル消去効果の可視化を検討した。

【対象と方法】
 ・OHの生成には過酸化水素と硫酸鉄によるフェントン反応(H2O2+Fe2+→・OH+OH-+Fe3+)を用いた。XバンドEPR装置(日本電子株式会社,東京,日本)を用いてDMPOによるヒドロキシルラジカルの検出を行った。インビトロフリーラジカルイメージングはJapan Redox Inc.(福岡,日本)の低磁場DNP-MRIシステム(Keller)を使用した。まず最適なEPR励起照射周波数の決定のために,EPR照射周波数を460から483MHzまで0.5MHzまたは1MHzの間隔で変更しながらDNP-MRIによるファントムイメージング行った。続いてH2O2濃度の影響の検討をするためにH2O2濃度1mM〜400mMでの変化を計測した。さらにチオール化合物(ジメチルスルホキシド[DMSO],ジメチルスルホン[DMS],ジメチルスルホニオプロピオネート[DMSP],スプラタストトシル酸塩[ST])による・OH消去効果のイメージングを行った。またマウス好中球から産生される・OHを用いることで,細胞から内因的に生成されたDMPO-OHのDNP-MRIイメージングを試みた。

【結果】
 フェントン反応によって生成された・OHをDMPOと反応させ,EPRスペクトルとして4つのピーク(比率1:2:2:1)を検出しDMPO-OHが生成されたことを確認した。DMPO-OHがDNP効果を得るための適切なEPR共鳴周波数を決定するために,460〜483MHzの様々なEPR周波数でDNP-MRIを撮像し,471〜478MHzの周波数においてファントムチューブの信号強化が明確に視覚化された。この時DMPO-OHを含むチューブ内のDNP信号は,460〜469MHzのEPR照射周波数で増強を示さなかったが,470MHzを超えると信号が増強した。最大の増強は474.5MHzで観察され,それより高い周波数では減少を示した。増強係数(DNPオン/DNPオフ)は474.5MHzで3.07であった。H2O2濃度を変更して施行したDNP-MRI計測によりDMPO-OH信号増強はH2O2濃度と正の相関を認めた。また・OH生成に対する阻害効果をもつDMSOを用いて,DMPO-OHのDNP増強が抑制されることを示しDNP-MRIによる・OH消去効果のイメージングに成功した。加えてチオール化合物を複数選択し,DNP-MRIにおける複数サンプルでのラジカル消去効果を同時に視覚化することを実現した。この時STが最も高い・OH消去能力を示した。さらにマウス好中球を使用したDMPO-OHイメージングでは,DMPO-OHを含む溶液で1.25倍の信号増加が得られた。

【考察】
 DMPO-OHラジカルがDNPを誘導しDNP-MRIシステムを使用することで信号強調画像が生成された。このDMPO-OHイメージングでは,最適なEPR共鳴周波数は474.5MHzであると考えられた。またDNP-MRIとDMPOによりラジカル消去効果を検出でき,さまざまなサンプルの同時イメージングが可能であるため,生体組織における集積が異なる薬剤のラジカル消去能力を同時に評価できる可能性が示唆された。さらにH2O2を主成分とした放射線増感剤とそれを併用した放射線治療法(KORTUC)において,治療部位内のラジカルの局在を理解するためにDMPO-OHの検出を利用することができれば,新しい診断・治療法へと拡大することが期待される。

【結論】
 DNP-MRIとDMPOを使用してヒドロキシルラジカルを視覚化することに成功し,さらにヒドロキシルラジカル消去効果を評価できることを示した。

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