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大学・研究所にある論文を検索できる 「腎移植患者の免疫抑制剤4剤併用療法において、エベロリムスはミコフェノール酸の薬物動態に影響を及ぼさない」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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腎移植患者の免疫抑制剤4剤併用療法において、エベロリムスはミコフェノール酸の薬物動態に影響を及ぼさない

遠藤, 貴人 神戸大学

2022.03.25

概要

【緒言】
免疫抑制療法の改善により、この数十年間で腎移植を受けた患者の急性拒絶反応のエピソードは減少し、グラフト生着率も向上している。免疫抑制療法の主流は、カルシニューリン阻害剤(CNI)であるが、CNI の⾧期使用は慢性腎毒性を引き起こす可能性がある。近年では慢性的な CNI 毒性を回避することが重要視され、エベロリムス(EVR)やシロリムスなどの哺乳類ラパマイシン標的阻害剤(mTOR-i)を免疫抑制プロトコルに利用し、CNI の除去または最小化を図ることに注目され、多くの報告ではグラフト機能の改善が得られている。また腎移植においては de novo ドナー特異的抗体(dnDSA)の発現がグラフトの⾧期生着に関与しているとされ、いくつかの研究では腎移植における dnDSA 産生の回避にミコフェノール酸モフェチル(MMF)の重要性が報告されている。当院ではこれまで⾧期グラフト機能獲得を目的とし,腎移植患者に対してタクロリムス(Tac),MMF,EVR,メチルプレドニゾロン(mPSL)の 4 剤併用による免疫抑制を行い CNI 毒性と dnDSA 産生の予防に努めている。

MMF は、ミコフェノール酸(MPA)のプロドラッグであり、T および B リンパ球の増殖を抑制することで腎臓移植の拒絶反応を防ぐために広く使用されている。MMF の投与量は therapeutic drug monitoring(TDM)に基づいて決定され、腎移植後の拒絶反応率および副作用は、MPA の 12 時間の濃度時間曲線下面積(MPA-AUC0-12)と相関している。MMFは腸肝循環の影響から臨床現場では、可能な限り少ない採血ポイントで MPA-AUC0-12 を推定する LSS(Limited Sampling Strategy)が報告されているが、使用する採血ポイントは確立されていない。腎移植においては複数の免疫抑制剤を組み合わせた多剤併用療法を行うことが一般的であるが、EVR がミコフェノール酸(MPA)の薬物動態に及ぼす影響は明らかにされておらず、また EVR 併用時の MPA の適切な LSS の手法も確立には至っていない。本研究では、腎移植を受けた患者において、MPA の薬物動態パラメータに対する EVRの影響を評価することを目的とした。

【方法】
神戸大学医学部附属病院で 2019 年 8 月から 2021 年 3 月までに生体腎移植を受けた成人患者で周術期より Tac、MMF、mPSL を開始した後、腎移植から 4 ヶ月経過した後に EVR の投与を受けた 20 名を対象とした。なお、EVR 追加前に拒絶反応を起こした患者は本研究から除外とした。免疫抑制剤の投与計画においては当院のプロトコルに準じて調整を行なった。Tac は腎移植後 1 ヶ月目のトラフ濃度を8ng/mL、2 ヶ月目から4 ヶ月目は 5~8ng/mL、 2 回目の薬物動態解析後は 4ng/mL とし、1 日 1 回の徐放製剤の経口投与にて行った。MMFは 30 mg/kg で開始し,1 回目の薬物動態解析までに貧血,感染,胃腸障害などの副作用に応じて適宜調整した。EVR は腎移植後約 4 カ月に、初期用量 1.5mg/日で EV 開始し、トラフ濃度が 3~8ng/mL になるように調節した。EVR 導入の約2週間前に1回目の薬物動態解析をおこなった。血中濃度のサンプリングポイントは MMF 投与直前および 1、2、4、6時間後(C0,C1,C2,C4,C6)にて行い、MPA の12 時間の濃度-時間曲線下面積の推定値(MPA-AUC0-12)を算出した。EVR を目標トラフ値になるように用量が適切に調整されたことを確認し、導入後約4週間の時点で1回目と同様のサンプリングポイントで MPA 血中濃度測定を行い、AUC を算出した。AUC の算出は台形法を用いて行い、各ポイントにおける血中濃度は MPA においては PETINIA 法、Tac、EVR においては ECLIA 法を用いて測定を行った。EVR 導入前後の MPA の投与量調整下(-/D)での薬物動態パラメータを比較し、 MPA に対する EVR の影響について検討を行なった,また MPA-AUC0-12 の LSS に対する最適な推定式についても検討した。LSS による各推定式は MPA-C0,-C1,-C2,-C4,-C6のうち 2 点を用いて行った。

【結果】
MPA-C6 の投与量調整血中濃度(MPA-C6/D)は EVR 導入により低下する傾向を示したが(3.4±2.2ng/mL/g、2.5±0.9ng/mL/g p=0.04)、MPA-C0/D、-C1/D、-C2/D、-C4/D においては有意な変化を認めず、MPA-AUC0-12/D においても有意な変化を示さなかった(48.4 ± 19.8 ng/mL/g、50.5 ± 15.5 ng/mL/g p=0.58)。また MPA-AUC0-12/D は、EVR-AUC0-12/D と有意な相関を認めず、他の検査項目とも有意な相関を認めなかった。

MPA-AUC0-12 の 2 ポイントを用いた LSS の最適な推定式は,EVR 追加前後でそれぞれ[(2.94×C2)+(5.09×C4)+5.32](R2=0.73),[(5.70×C0)+(1.39×C1)+22.45](R2=0.72)で EVR 追加前後での採用ポイントは異なる結果であった。

【結語】
MPA の薬物動態を連続的に解析した結果、腎移植後患者において EVR は MPA の濃度時間曲線下面積に影響を与えなかった。この結果から MMF と EVR は安全に併用することが可能であり、また MMF の投与量の EVR 追加後での変更は必ずしも要しないと考えた。一方、MPA-AUC の算出に関して LSS を行う際には、EVR 追加後で適正な採血ポイントの変更を要する可能性があると考えられた。

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