非正規分布における標本平均絶対偏差の漸近相対効率
概要
データの散らばり具合を表す指標として, 平均絶対偏差と標準偏差がある. 平均絶対偏差は解釈が容易であるが, 代数的操作が難解である. 一方, 標準偏差は代数的操作が比較的簡易であり, 現在の数理統計学において広く扱われているが, 外れ値に大きな影響を受けロバストでない. この 2 つの指標は主に推定の漸近相対効率という観点から, Eddington (1914), Fisher (1920), Tukey (1961) などにより比較がなされ, 現在では標準偏差を一般的に用いている. しかしながら, その漸近的評価はしばしば議論の対象となる.
本論文では, この漸近相対効率のよる比較とその批判についての理論的詳細を整理するとともに, 検定論における Pitman の漸近相対効率からの解釈を与え, さらにいくつかの母集団分布における検証を行う.