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大学・研究所にある論文を検索できる 「高齢嚥下障害患者におけるVideofluoroscopic Dysphagia Scaleを用いた経口摂取に係る因子についての研究」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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高齢嚥下障害患者におけるVideofluoroscopic Dysphagia Scaleを用いた経口摂取に係る因子についての研究

田口, 一恵 筑波大学

2020.07.27

概要

目的
 高齢化に伴う肺炎死亡数の増加により, 高齢者の嚥下障害を背景とする誤嚥性肺炎はありふれた疾患となっている.高齢者の嚥下障害に対し, 嚥下リハビリテーション(以下, 嚥下リハ)の介入は標準治療となっているが, 実臨床において, 嚥下リハ実施にも関わらず, 退院時に経口摂取困難となる症例を経験した.しかし特に嚥下障害のどのステージにおいて問題があると, 例え嚥下リハを実施したとしても, 退院時に経口摂取困難となるかについては, 今まで議論されてこなかった.そこで嚥下造影検査(Videofluoroscopy, 以下VF)の定量的な評価方法として用いられるVideofluoroscopic Dysphagia Scale(以下, VDS)を用いて, 重度の高齢嚥下障害患者を対象としたVDSスコアリングを実施し, 退院時経口摂取群, 退院時非経口摂取群の各群の特徴につき調査することとした.そして嚥下リハを実施した上での, 退院時非経口摂取の予後予測因子について, 検討した.

対象と方法
 2016年11月から2018年10月に, 急性期病院に入院した, 以下の基準を満たす嚥下障害患者を対象とした.入院時年齢65歳以上, 言語聴覚療法が介入された, 反復唾液飲みテストが実施された, 入院中にVFが実施された, 検査時の体位をベッドアップ30°にまで下げないと安全に摂食ができない, 死亡退院ではなかった.体位はギャッジアップ30°とし, 約2mlのゼリーを2回摂取してもらい, X線透視下にてビデオ撮影を実施した.ゼリー摂食は計2回行われ, VDSの判定は医師1名と, 当該患者担当の言語聴覚療法士の合計2名により, VF画像から総合的に判断した.
 対象患者を退院時経口摂取群, 退院時非経口摂取群の2群に分類し, まずは退院時の経口摂取をアウトカムとした解析を行い, 2群間の比較を実施した.さらに, サブグループ解析として, VFにて誤嚥なしと判断した患者に絞り, 同様に患者背景やVDSスコアにつき調査した.
 最後に, 経口摂取をアウトカムとした, VDS合計点のカットオフ値について, ROC曲線を利用し解析を行うこととした.感度・特異度の設定については, 臨床における利用を考慮して, 経口摂取できるにも関わらず, VDSのカットオフ値で非経口と判断されるリスク(偽陰性)を減らすため, 感度を重視した設定を行った.

結果
 39例が対象患者として抽出された.退院時経口摂取群13例, 非経口摂取群26例の2群間で年齢以外, 患者背景に統計学的有意差は見られなかった(p=0.043).VDSスコアについては, 「咽頭壁付着」と「誤嚥」の項目のみ, 退院時非経口摂取群が統計学的有意に高かった.(それぞれ, p=0.009, p=0.005).またサブグループ解析においては, 26例が抽出された.2群間において, 年齢以外, 患者背景に統計学的有意差は見られなかった(p=0.039).
 さらに, 「咽頭壁付着」の他は, VDS各スコアとVDS合計点について, 2群間で有意差は認めなかった(p=0.048).
 各解析における, 退院時経口摂取をアウトカムとしたVDS合計点のカットオフ値は51.75点で, 感度76.9%, 特異度61.5%であった.またサブグループにおけるVDS合計点のカットオフ値について, 先行研究を参考に, 感度を90%以上として計算し, 感度92.3%, 特異度15.4%にて, カットオフ値43.5点とした.

考察
 全体解析, サブグループ解析ともども, 患者背景は退院時非経口摂取が有意に低年齢であること以外差はなかったが, 全体解析ではVDS上「咽頭壁付着」「誤嚥」の点数の高さが, サブグループ解析では「咽頭壁付着」の点数の高さが, 退院時非経口摂取の予測因子として成り立つことが示唆された.
 「咽頭壁付着」の点数が高いと, 以後嚥下リハを実施しても, 嚥下機能が改善せず, 退院時に経口摂取困難と判断せざるを得ない可能性があり, この結果が, 本研究の臨床への有用性を高めていると考えた.また, VDS合計点については, 有意差はなかったものの, 退院時非経口摂取群の平均点数が高く, 先行研究と同様な結果であった.
 従って, 特に咽頭残留へのリハアプローチを実施し, 重度嚥下障害患者の機能改善を試みても良いと考えた.
 退院時経口摂取をアウトカムとしたカットオフ値について, 特異度を重視し, カットオフを設定したものの, 設定したカットオフ値の操作特性はそれほど高い数値ではなく, 臨床的な有用性はあまり高くないと考えられた.

結論
 VF所見上, VDSで「誤嚥」あるいは「咽頭壁付着」の点数が高いと, 入院中に嚥下リハを実施したにも関わらず, 退院時までに経口摂取困難となることが予想された.
 VDSは急性期病棟に入院した, 重度の高齢嚥下障害患者における, 退院時経口摂取の予後予測ツールとしても有用である可能性が示唆された.
 VFにて誤嚥なしと判断された症例に絞ると, VDS上「咽頭壁付着」の項目の他は, 退院時の経口摂取に関わる因子は導き出されず, 全解析の結果と同様な結果であった.
 退院時アウトカムとしての経口摂取における, VDSのカットオフ値について, 設定したカットオフ値の操作特性はそれほど高い数値ではなく, 本研究で導き出されたカットオフ値の予測能は低いという結果であった.

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