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大学・研究所にある論文を検索できる 「Downregulation of ROBO4 in Pancreatic Cancer Serves as a Biomarker of Poor Prognosis and Indicates Increased Cell Motility and Proliferation Through Activation of MMP-9」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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Downregulation of ROBO4 in Pancreatic Cancer Serves as a Biomarker of Poor Prognosis and Indicates Increased Cell Motility and Proliferation Through Activation of MMP-9

山中, 雅也 名古屋大学

2023.07.03

概要

主論文の要旨

Downregulation of ROBO4 in Pancreatic Cancer Serves
as a Biomarker of Poor Prognosis and Indicates
Increased Cell Motility and Proliferation Through
Activation of MMP-9
膵癌におけるROBO4の低下は、予後不良のバイオマーカーとなり、
MMP-9の活性化により細胞の運動性と増殖能を増加させる

名古屋大学大学院医学系研究科
病態外科学講座

総合医学専攻

消化器外科学分野

(指導:中山 吾郎
山中 雅也

特命教授)

【緒言】
膵癌は難治性の癌であり、癌関連死の 4 番目の原因である。局所への浸潤と早期か
ら転移を生じることが膵癌の予後不良の原因とされている。神経周囲浸潤のある膵癌
は、神経周囲浸潤のないものよりも生存率が有意に悪いことが示唆されており、神経
回路の形成をつかさどる Axon Guidance 経路について我々は注目した。Axon Guidance
経路の一つである SLIT/ROBO 経路は、いくつかの癌の発生と相関していると報告さ
れ て い る 。 The Cancer Genome Atlas(TCGA) の デ ー タ ベ ー ス の 分 析 を 通 じ て 、
SLIT/ROBO 経路の 1 つである ROBO4 は、隣接する正常膵組織と比較して、原発性膵
癌組織で有意に発現が低かった。今回、ROBO4 と膵癌の進行の関わりについて検討し
た。
【方法】
当科で所有する 13 の膵癌細胞株および正常膵臓細胞株で ROBO4 の発現量を測定し
た。ROBO4 の機能解析のために膵癌細胞株(MiaPaCa-2、BxPC-3、および SW1990)と
膵管上皮正常膵臓細胞株(HPDE6c/7)を使用してトランスフェクションおよび機能解
析を行った。また、膵臓における ROBO4 の発現低下が関与する pathway の下流標的
を検出するために EMT 関連分子の発現について網羅的解析を施行した。2015 年 10 月
から 2018 年 7 月までに名古屋大学病院で膵癌切除術を施行した 51 例の切除検体を用
いて免疫組織学的染色を行い、タンパク質レベルでの ROBO4 の発現と臨床的特徴お
よび予後データとの関連を検討した。
【結果】
細胞株の cDNA を用いた ROBO4 発現量は、HPDE6c/7(ヒト膵管上皮細胞)と比較し
て、すべての膵臓癌細胞株で低値を示した。特に EMT subtype で間葉系の MiaPaCa-2
や、中間系の BxPC-3 は ROBO4 の発現をほとんど示さなかった。逆に、上皮系細胞株
HPAF-II および Capan-1 は ROBO4 の発現が比較的高く、ROBO4 の発現が各種細胞株
の EMT status と相関していた。ROBO4 の低発現細胞株である MiaPaCa-2 および BxPC3 に強制過剰発現を行うと、これらの癌細胞の遊走能や浸潤能は抑制された。一方、
SW1990 および HPDE6c/7 で ROBO4 の発現を抑制すると遊走能や浸潤能の向上を認め
た。ROBO4 関連の癌化経路関連分子を特定するために、PCR ベースの EMT 関連遺伝
子発現アレイを実行した。ROBO4 過剰発現膵癌細胞株と ROBO4 発現抑制膵臓細胞株
の双方で施行すると COL3A1 、COL5A2、BMP7、および MMP-9 遺伝子発現が、ROBO4
発現と逆相関する候補として検出された。これらの候補遺伝子のうち、TCGA データ
ベースで膵臓癌の予後に有意に相関する MMP-9 遺伝子に注目し、ROBO4 発現との逆
相関関係をゼラチンザイモグラフィーを用いて検討した。その結果、ROBO4 の強制過
剰発現により MMP9 タンパク質が機能低下することを確認できた。膵癌切除検体を用
いた ROBO4 の免疫組織学的染色においても、ROBO4 の高発現症例は、低発現症例よ
りも、全生存期間が有意に良好であった(P=0.048)(Fig. 1)。

-1-

【考察】
ヒトでは、SLIT/ROBO 経路は 3 つの SLIT リガンドと 4 つの ROBO レセプターで構
成されているが、神経組織進展の各段階に関与し、特に神経軸索誘導と血管組織構築
において重要な役割を果たしているとされる。種々の癌腫において悪性度に関連する
分子群として近年注目されており、膵癌においても SLIT/ROBO 経路を構成する他の
分子についていくつか関連が報告されている。ROBO2 は、間質筋線維芽細胞の活性化
と T 細胞浸潤を阻害することにより、膵癌に抑制的に働き、対照的に、ROBO3 は臓
癌細胞の移動と浸潤を促進し、Wnt/β-カテニンシグナル伝達を活性化して膵癌に促進
的 に 働 く と 報 告 さ れ て い る 。 し か し TCGA デ ー タ ベ ー ス 分 析 で は 、 膵 癌 に お け る
ROBO1/ROBO2/ROBO3/SLIT の発現の差異で予後に差は見いだせず、ROBO4 低発現症
例のみ膵癌の予後不良因子となった。これを受けて我々は本研究で、SLIT/ROBO 経路
の構成分子のひとつである ROBO4 に注目して、膵癌における役割を検討した。その
結果、ROBO4 が間葉系に分類される膵癌細胞株で発現が低下しており、当科の臨床手
術検体を用いた検討でも膵癌腫瘍部での ROBO4 低発現症例は切除術後の有意な予後
不良因子であることを確認した。したがって、ROBO4 は、膵癌における予後予測バイ
オマーカーの候補となることが考えられた。
ROBO4 は Magic Roundabout とも呼ばれる比較的新しく発見された遺伝子で、内皮
細胞に特異的に発現するとされる。これまでの報告では、ROBO4 は血管網を安定させ
ることで血管新生を抑制することが指摘されている。また、ROBO4 ワクチン接種が血
管上皮細胞に影響し、血管新生が阻害されるとする報告もある。これら血管新生阻害
作用が、癌進行抑制に作用する可能性が考えられる。また、本研究では ROBO4 高発
現が MMP-9 活性を低下させることを発見したが、これは、ROBO4 が脳血液関門で
MMP-Src-Erk1/2 シグナル伝達経路を介して MMP-9 を調節するという以前の報告と
一致している。基底膜および遠隔組織への転移において、MMP-9 は細胞外マトリック
ス成分として重要な機能を持つが、これらを抑制することも、ROBO4 が癌抑制的に機
能する一因と考えられた。
MMP 阻害剤についての臨床試験で、これまでに有意な癌抑制効果が示されたもの
はまだない。しかし ROBO4 経路を活性化するとされる SecinH3 は、血管の恒常性を
維持することで無秩序な血管新生を阻害することが報告されている。また本研究結果
からは、ROBO4 発現がおしなべて低い膵癌を治療対象とすれば、ROBO4 のアゴニス
トによる MMP-9 昨日抑制が新たな分子標的薬となる可能性はあると考えている。
【結論】
膵癌細胞株において ROBO4 を強制発現させると癌細胞の増殖能・遊走能・浸潤能
が抑制された。また臨床検体においても ROBO4 高発現症例は、切除術後の良好な生
存転帰と相関した。ROBO4 発現は、膵臓癌において腫瘍進展抑制機能を有すると考え
られた。

-2-

Figure 1
Kaplan–Meier curves for progression-free survival (PFS)(A) and overall survival (OS)(B) stratified by ROBO4
expression levels based on IHC results are shown.

-3-

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