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大学・研究所にある論文を検索できる 「プロファージ遺伝子を介した膜小胞形成による微生物間コミュニケーションの制御」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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プロファージ遺伝子を介した膜小胞形成による微生物間コミュニケーションの制御

安田, まり奈 筑波大学

2022.11.16

概要

多くの細菌はシグナル物質を細胞間で受け渡すことでコミュニケーションを行っている。このコミュニケーション機構はQuorum Sensing(QS)と呼ばれ、抗生物質生産やバイオフィルム形成といった細菌の重要な形質を調整することが報告されており、我々ヒトの生活に密接な関わりを持っている。そのため、QS機構の理解と制御が求められている。QS機構における重要なプロセスは、細胞間のシグナル物質の放出・伝達である。先行研究によって、土壌細菌Paracoccus denitrificansは、QSシグナル物質であるN-hexadecanoyl-L-homoserine lactone(C16-HSL)を膜小胞(Membrane vesicle,以下MV)に濃縮させて細胞間で受け渡すことが明らかとなった。高い疎水性を示すC16-HSL単独では、環境中で細胞間を拡散することは難しいが、MVに包括されることでその拡散性が向上することが考えられる。つまり、P. denitrificansはMVを介したQS機構を有することを示しており、シグナル物質の放出・伝達にはMV形成が重要な役割を果たすと言える。本論文では、P. denitrificansにおけるMV産生機構を詳細に解明することを目的とした。

 第1章の末では、著者がこれまでの研究で明らかにした内容をまとめている。これまでの研究によって、P. denitrificansにおいてDNAストレスによって誘導される細胞溶菌を介してMVが形成されることを明らかとし、この機構を制御するプロファージ遺伝子Pden_0381(lys)・Pden_0382(hol)を同定した。さらに、この条件下でC16-HSLが上清中に多量に放出されることがC16-HSLレポーター株のバイオアッセイを用いた実験で示した。

 第2章では、著者がこれまでに行った研究を発展させた。著者の先行研究では、DNAストレス条件下で誘導されるMV産生を制御する遺伝子の同定を行った。そこで新たに、トランスクリプトーム解析を行い、DNAストレス条件下においてMV産生に関わるlys・holを含むプロファージ領域の遺伝子発現が上昇することを明らかとした。さらに、SOS応答を制御するrecAの破壊株では、DNAストレスに応じたプロファージ遺伝子群の発現上昇が確認できなかったことから、lys・holを含むプロファージ遺伝子の発現はRecAによって制御されることを明らかとした。また、著者の先行研究では、DNAストレス条件下でC16-HSLが上清中に多量に放出されることをC16-HSLレポーター株のバイオアッセイ実験で示している。そこで本論文では、HPLC-MSを用いたC16-HSLの定量実験を行い、上清中に放出されるC16-HSLがMV画分に局在することを新たに明らかとした。

 第3章では、C16-HSLを内包するMVをシグナル伝達の蛍光レポーター株に添加し、スピニングディスク顕微鏡を用いてC16-HSLシグナリングを可視化する系を構築した。

 第4章では、Escherichia coliにおいて溶原ファージだけでなく溶菌ファージもMV産生を誘導することを明らかとした。溶菌ファージが、E.coliと同様にP. denitrificansのMV産生を促進させるかは研究の余地があるが、P. denitrificansにおいても溶菌ファージは細胞溶菌を介してMV産生を促進すると推察している。

 以上、著者はP. denitrificansがプロファージ遺伝子を介してMVとともにC16-HSLを放出することを明らかとし、プロファージ遺伝子が細菌集団のQSを制御するという、新たなコミュニケーション制御様式を示唆した。

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