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Establishment of Human Leukocyte Antigen-Mismatched Immune Responses after Transplantation of Human Liver Bud in Humanized Mouse Models

森 淳祐 横浜市立大学

2021.09.21

概要

1. 序論
移植治療は多くの臓器の治療法として一般に普及されている.例えば肝移植は肝疾患患者への治療法として有用である.しかしながら,どの臓器においても世界的にそのドナー患者数の不足が問題である.近年胚性幹細胞(Embryonic Stem cell, ES 細胞)(Thomson, 1998)や人工多能性幹細胞(induced pluripotent stem cell,iPS 細胞)(Takahashi and Yamanaka, 2006)といった多能性幹細胞が創出され,これらの細胞を目的の細胞へと分化させることによりドナー不足を解消しようとする試みがなされている.我々の研究室ではヒト iPS 細胞から発生段階の肝臓を模倣した肝芽と呼ばれる肝臓オルガノイドの創出に成功している(Takebe et al., 2013, 2017).多能性幹細胞を用いた再生医療は移植治療のためドナー― レシピエント間の免疫反応が重要になってくる. (major histocompatibility complex,MHC)ヒトでいうヒト白血球抗原( human leukocyte antigen,HLA)が違うマウス同士の皮膚移植では移植された皮膚は早期に拒絶され脱落してしまうことが知られている (Murata et al., 2020).多能性幹細胞を用いた再生医療においても同様に移植後の拒絶反応が起 きることが想定される.この拒絶反応を想定するためにヒト化免疫マウスの使用が移植治療の研究において使用されている(Kenney et al., 2016; Walsh NC, Kenney LL, Jangalwe S, Aryee KE, Greiner DL, Brehm MA, 2017).また,近年ヒトの HLA を発現させたヒト化免疫マウスの作製がおこなわれてきているが,これらのマウスに対するヒト iPS 細胞由来の細胞や組織移植の検討は不十分である.そこで,本研究では HLA のクラスⅠを発現させたヒト化免疫マウスに対してヒト iPS 細胞由来肝芽移植をおこない,ヒト iPS 細胞由来肝芽移植における他家移植のモデル構築を試みた.

2. 実験材料と方法
ヒトiPS 細胞から肝内胚葉細胞,血管内皮細胞,間葉系細胞をそれぞれ分化誘導し以前に報告されている方法によりヒト iPS 細胞由来肝芽を創出した(Takebe et al., 2013, 2017).HLA クラスⅠ上の A2 を発現させたマウスに対して HLA のクラスⅠ上の A2 を発現している臍帯血由来の造血幹細胞を移植することによりヒト化免疫マウスを作製した.作製したヒト iPS 細胞由来肝芽をヒト化免疫マウスに対して移植をおこない,移植後 4 週間でサンプリングをおこない組織学的解析及び経時採血によるマウス末梢血中のヒトアルブミン値の測定をおこなった.本研究における動物実験は横浜市立大学医学部における動物実験委員会の規定に則り実施した.

3. 結果
作製したヒト化免疫マウスにおいて造血幹細胞移植後 4 週からヒトの免疫細胞の発現が末梢血中に確認された.移植後 12 週においてヒト T 細胞の発現が確認された.ヒト iPS 細胞由来肝芽を ヒト化免疫マウスに移植後,マウス末梢血中におけるヒトアルブミン値は急激に低下した.サンプリングして組織学的解析をおこなったところ,移植組織内及び辺縁部に免疫細胞の浸潤や集積が確認された.さらに解析をおこなったところ,浸潤していた免疫細胞はヒト由来の免疫細胞であった.またこのヒト由来免疫細胞は T 細胞が主であり, T 細胞の中でも細胞傷害性 T 細胞やヘルパーT細胞が浸潤していた.浸潤していた免疫細胞が T 細胞であったため,実際の移植治療において使用されているタクロリムスを投与することにより免疫細胞の浸潤を抑制することが可能か検討をおこなった.その結果,タクロリムスを投与した群においてヒト免疫細胞の移植組織への浸潤を抑制することが可能であることが確認された.また,マウス末梢血中におけるヒトアルブミン値の維持が可能であることが確認された.

4. 考察
本研究においてヒト iPS 細胞由来肝芽を HLA クラスⅠ上の A2 を発現させたヒト化免疫マウスに移植することにより,細胞傷害性 T 細胞を介した他家組織に対する急性拒絶反応が生じることが示された.

HLA クラスⅠ上の A2 を発現させたヒト化免疫マウスは以前のヒト胎児組織を使用したヒト化免疫マウスと同様に,ヒト細胞傷害性 T 細胞の免疫系をマウス体内で再構築が可能である.また,ヒト胎児組織を使用していないため倫理的な面からも有用である.本研究において,ヒト iPS 細胞由来肝芽移植後にヒト由来の炎症性細胞浸潤,特に細胞傷害性 T 細胞の浸潤が確認された.このことからヒト iPS 細胞由来肝芽をヒト化免疫マウスに移植することによりヒト組織の他家移植と同様な急性期の免疫拒絶反応が再現されていると考えられる.また,タクロリムスを投与することによりマウス末梢血中におけるヒトアルブミン値の維持が可能であることが確認されたことから,臨床の移植治療と同様に免疫抑制剤を用いることでヒト iPS 細胞由来肝芽移植時の免疫拒絶反応の制御が可能である.

本研究により HLA のクラスⅠを発現させたヒト化免疫マウスに対してヒト iPS 細胞由来肝芽移植をおこない,ヒト iPS 細胞由来肝芽移植における他家移植のモデル構築に成功した.

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参考文献

Kenney, L. L. et al. (2016) ‘Humanized Mouse Models for Transplant Immunology’, American Journal of Transplantation, 16(2), pp. 389–397. doi: 10.1111/ajt.13520.

Murata, T. et al. (2020) ‘Establishment of an experimental model for MHC homo-to-hetero transplantation’, Scientific Reports, 10(1), p. 13560. doi: 10.1038/s41598-020-69784-4.

Takahashi, K. and Yamanaka, S. (2006) ‘Induction of Pluripotent Stem Cells from Mouse Embryonic and Adult Fibroblast Cultures by Defined Factors’, Cell, 126(4), pp. 663–676. doi: 10.1016/j.cell.2006.07.024.

Takebe, T. et al. (2013) ‘Vascularized and functional human liver from an iPSC-derived organ bud transplant’, Nature, 499(7459), pp. 481–484. doi: 10.1038/nature12271.

Takebe, T. et al. (2017) ‘Massive and Reproducible Production of Liver Buds Entirely from Human Pluripotent Stem Cells’, Cell Report, 21(10), pp. 2661–2670. doi: 10.1016/j.celrep.2017.11.005.

Thomson, J. A. (1998) ‘Embryonic stem cell lines derived from human blastocysts’, Science, 282(5391), pp. 1145–1147. doi: 10.1126/science.282.5391.1145.

Walsh NC, Kenney LL, Jangalwe S, Aryee KE, Greiner DL, Brehm MA, S. L. (2017) ‘Humanized mouse models of clinical disease’, Annual review of pathology, 12(12), pp. 187–215. doi: 10.1146/annurev-pathol-052016-100332.Humanized.

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