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大学・研究所にある論文を検索できる 「The regenerative effect of portal vein injection of liver organoids by retrorsine/partial hepatectomy in rats」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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The regenerative effect of portal vein injection of liver organoids by retrorsine/partial hepatectomy in rats

土田 倫範 横浜市立大学

2020.03.31

概要

【緒言】現在, 末期臓器不全症に対しては, 臓器移植が極めて有効な治療法である. しかし, 移植待機者数が年々増加傾向であるのに対し, ドナー臓器の供給不足が重大な問題となっている. 我々の研究室では, ヒトiPS細胞の肝細胞への分化誘導研究において, 従来の「細胞の分化誘導」という開発概念から脱却し, 異なった細胞系譜の時空間的な相互作用を活用した「臓器の再構成に基づく分化誘導」を実現化した新たな三次元培養技術を開発し, 世界で初めて, ヒト臓器の創出を可能とする基盤技術を確立した(Nature, 499: 481-484, 2013). 創出されたiPS細胞由来であるヒト肝臓オルガノイドを免疫不全マウスに異所性移植することにより, ヒト血管網を有した機能的なヒト肝臓が構築され, 治療効果が発揮可能であることが判明している(Nature, 499: 481-484, 2013). 肝細胞で生成された胆汁の障害を考慮すると, 異所性移植よりも胆汁排出経路が元からある同所性移植の方が望ましい.

本研究では, 門脈を介した肝臓オルガノイドの同所性移植が慢性肝障害の治療のための安全かつ効果的な方法であるかを検討した.

【材料と方法】 本研究では, 解析する肝組織中の細胞が移植した細胞由来であるかどうかをDPPⅣ/C D26発現の有無で見分けるため, ドナーとしてDPPⅣ/CD26陽性であるFisher 344ラット, レシピエントとしてDPPⅣ/CD26陰性であるFisher344ラットを使用して実験を実施した. 胎齢14.5日齢の肝臓をトリプシン処理によって細胞分離し, ElplasiaTM丸底型プレート(クラレ)で三次元培養した肝臓オルガノイドを解析し, ラットにおける代表的な肝障害移植モデルである, レトロシン投与・70%部分肝切除(RS / PH)モデルに門脈内から移植し, 最も生着効率・置換率の良い培養条件を確認した. また, 二次元培養した単層細胞とも移植細胞数を統一して比較検討した. 移植検体は30日・60日・120日後に肝臓を摘出し, 組織学的解析を行った. また, ヒトiPSC肝臓オルガノイドは, 当研究室に於いて報告した手法をもとに分化誘導した肝内胚葉細胞, 内皮細胞, 間葉系細胞をそれぞれ10:7:1の細胞比率になるよう混合し, ElplasiaTM丸底型プレートを用いて作製した. 作製したヒトiPSC肝臓オルガノイドを, 9~15週齢の雌のNOD/scidマウスに経門脈移植して, 他臓器移行を検討した. 免疫不全ラット(Il2rγKO)のRS / PHモデルへ選択的に経門脈移植して, ヒト肝組織の再構築を検討した.

【結果】 三次元培養した胎仔肝臓細胞は, 4000cells/spotの細胞播種密度が最も安定してオルガノイドを形成し, 培養期間による肝臓オルガノイドの大きさの違いはなかったが, 分化マーカーの発現は上昇した, 二次元培養した単層細胞では胆管上皮細胞マーカーであるCK19の発現が, 三次元培養した肝臓オルガノイドでは肝細胞マーカーであるアルブミンの発現が顕著に増加した.

RS / PHモデルへの移植では, 24時間培養した肝臓オルガノイドが最も生着・増殖し, 96時間培養した肝臓オルガノイドでは全く生着・増殖しなかった. これ等のことから, 移植に最適なのは, 4000cells/ spotの培養24時間肝臓オルガノイドであることがわかった. オルガノイドを構成する細胞と同数の二次元培養した単層細胞を移植し, 比較したところ, 肝臓オルガノイド移植群の方が肝再生を促進し, 胆管再構築能力が高いことがわかった.

長期間観察すると, 肝臓オルガノイド移植群は非移植群と比べ, 細胆管反応, 肝線維化, そして前癌病変の出現を抑制し, 正常な肝組織を再構築していることがわかった.

ヒトiPSC肝臓オルガノイドのマウスへの経門脈移植による他臓器移行の確認は, オルガノイド移植群では肝臓にしか検出されなかったが, 細胞懸濁液移植群では, 肺への移行が確認された.

ヒトiPSC肝臓オルガノイドの免疫不全ラットへの移植は, 非選択的経門脈移植から左葉選択的経門脈移植にすることで劇的な生存率改善がなされ, ラット肝臓内にヒト肝組織の構築が確認された. また,培養4日以上のヒトiPSC肝臓オルガノイドでラット血清中にヒトアルブミンが確認され, 培養8日のオルガノイドが最も高値であった.

【まとめ】本研究では, ラットのRS / PHモデルにおいて, 肝臓オルガノイドの経門脈移植の安全性と有効性を示した. これまで, 門脈にオルガノイドを直接注入しない主な理由は, 門脈塞栓が懸念されるためだったが, 本研究では, 大規模な壊死や門脈塞栓, さらに他臓器移行の発生なしに, 門脈を介した胎仔肝臓由来肝臓オルガノイドの安全な移植を達成した. さらに, 肝臓オルガノイド移植によって, 細胆管反応, 肝線維化, 前癌病変の出現抑制効果も確認された. 二次元培養した単層細胞懸濁液移植群と比較して, 肝臓オルガノイド移植群は, 肝再生促進, 胆管再構築能が高く, 肺への移行も確認されなかった. これ等のことから, 肝臓オルガノイドの経門脈移植における安全性と有効性を示せた.

参考文献

[1] Takebe, T. et al. Vascularized and functional human liver from an iPSC-derived organ bud transplant. Nature. 2013, 499, 481-484.

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