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大学・研究所にある論文を検索できる 「Studies on Rhodomonas salina Hf-1 strain as an initial live feed for aquaculture」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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Studies on Rhodomonas salina Hf-1 strain as an initial live feed for aquaculture

山本 慧史 三重大学

2020.06.24

概要

本研究は,2011年に日本沿岸から新たに単離されたクリプト藻類Rhodomonas salina Hf-1株について,水産餌料用微細藻類としての実用的な培養および利用方法に関する多方面からの網羅的な検討を行い,最終的に種苗生産現場への導入を目指したものである。Rhodomonas属の微細藻類は世界中の沿岸域に普遍的に生息しており,その栄養的価値の高さから餌料としての活用が望まれている。これまで,本属ではそのうち数種が餌料としての利用を試みられており,わが国でも1970年代から一部の種に関する餌料化が試みられてきた。しかしながら,これらの研究の多くは,細胞内に含まれる生化学成分組成を環境要因によって制御することを目的としたものがほとんどであり,増殖特性や効率的培養方法,餌料としての実際の利用に関する研究は見当たらない。こうした現状を踏まえ,本研究では,今後Rhodomonas属を餌料用微細藻類として有効活用していくために必要な基礎的知見の集積を目的として,Hf-1株をモデル生物とした実験室規模もしくは種苗生産規模での各種試験を実施し,本属微細藻の活用方法について検討を行った。

第1章形態観察および遺伝情報を用いたHf-1株の種同定
電子顕微鏡による形態的,構造的特徴観察および核rRNA情報を用いた本種の種同定試験を行なった。電子顕微鏡観察では,二つの等長鞭毛を有する微絨毛に覆われた扁平細胞やピレノイドに陥入したヌクレオモルフ構造,さらにピレノイドが葉緑体を覆う二重膜の間に位置していることなど,R.salinaが種特異的に有する特徴が複数確認された。PCR法を用いた遺伝子検査では,核rRNAのうち18SrRNA,28SrRNA,ITS領域において,R.salina(HE820923)とそれぞれ100%,99%,98%の高い相同性が得られた。これらの結果から総合的に判断した結果,Hf-1株はR.salinaと同一種であると考えられた。

第2章Hf-1株の効率的な小規模・大規模培養法の検討
微細藻類の餌料化において,培養安定化は最も重要な課題である。本章ではHf-1株の培養法の確立を目的とし,本種の好適培養条件,必須栄養塩類の検討,および専用培地の開発,実際の種苗生産現場での生産を想定した拡大培養試験を行なった。実験室規模での培養試験の結果,本種が最も効率的に培養できる環境条件が明らかになったと同時に,本種は他の餌料用微細藻類と比較して幅広い環境変動への耐性を有することが明らかとなった。また,本種が増殖のために必須に要求する栄養素はN,P,Fe,Mn,ビタミンB12の5つのみであることが明らかとなった。この結果から,本種を種苗生産現場で安価に生産するための専用培地,MU-SW培地が農業用肥料を用いて開発された。この培地を用いた実地生産試験では,実際に種苗生産現場で導入されている半連続培養法において安定的かつ高収量の培養を高い餌料価値を損なうことなく実現した。

第3章細胞色の変化を利用した適当な収穫時期推定方法の考案
培地中の窒素濃度は,微細藻類の増殖に最も影響を与える環境因子の一つである。特にクリプト藻類においては,窒素欠乏が細胞の退色を誘因,増殖率を低下させることが過去に報告されている。Hf-1株においても,窒素欠乏処理を施すことにより本株の増殖が阻害されると共に,その特徴的な細胞色の構成成分であるPEが最大で75%減少することが本実験で確認された。このことは,クリプト藻類は環境中の窒素が欠乏した際,PEに結合するタンパク質を分解することによって生存のための窒素源を補う,いわば窒素リザーブとしてPEを利用していることが示唆している。退色が発生した際のHf-1株の細胞内タンパク質,高度不飽和脂肪酸含量はどちらも有意に減少しており,細胞色の退色現象がクリプト藻類の適切な収穫時期の推定に応用可能であるという可能性が得られた。

第4章Hf-1株の給餌が海産動物の生残および成長に及ぼす影響
本章では,本株をマナマコApostichopus japonicus浮遊幼生,アコヤガイPinctada fucata martensii親貝へ給餌し,その餌料価値を他の餌料用微細藻類と比較した。孵化直後のマナマコ幼生を用いた給餌試験では,本株を給餌することにより高い生存率が得られるだけでなく,従来使用されていた他の微細藻類と比較して短期間でより多くの変態個体が得られることが明らかとなった。アコヤガイ親貝を使用した試験では,従来使用されていたChaetoceros neogracile,Pavlova lutheri,Tetraselmis tetratheleの混合餌料をHf-1株で一部代替することにより,従来餌料と同等以上の飼育成績を得ることに成功した。これらの試験から,本株の餌料生物としての有用性が実用レベルで示された。

本研究により,R.salinaHf-1株のみならずクリプト藻類全体の餌料化という命題において萌芽的な知見が集積された。本株の活用により,今後のより多様かつ効果的な種苗生産の発展が期待される。

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