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大学・研究所にある論文を検索できる 「Transmission dynamics of a linear vanA-plasmid during a nosocomial multiclonal outbreak of vancomycin-resistant enterococci in a non-endemic area, Japan」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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Transmission dynamics of a linear vanA-plasmid during a nosocomial multiclonal outbreak of vancomycin-resistant enterococci in a non-endemic area, Japan

藤谷, 好弘 大阪大学

2021.09.24

概要

〔目的(Purpose)〕
バンコマイシン耐性腸球菌(VRE)による医療関連感染症は治療薬の選択肢が限られ、バンコマイシン感受性腸球菌と比較して致命率が高い。その耐性機序は主にvan遺伝子群の発現による。代表格であるvanAはTn1546内に位置し、Τn1546は高頻度接合伝達性プラスミドによって腸球菌間で伝播することが知られている。これによりvanAの効率的な伝播と拡散が生じ、急速な腸球菌のバンコマイシン耐性化が起こると考えられる。近年、全ゲノム解析 (WS)が薬剤耐性菌のアウトブレイクの感染経路の特定に有用であると言われている。多種類のカルバペネム耐性腸内細菌科細菌によるあるアウトブレイクでは、カルバペネム耐性遺伝子を保有する伝達性プラスミドが多種菌に敗り込まれるプラスミド媒介性のアウトブレイクであることがWGSにより示された。しかし、VREのアウトブレイクにおいてvan遺伝子保有プラスミドに注目した報告は少ない。今回、我々は単施設の長期にわたる多クローン性のVREのアウトブレイクを経験した。非流行地域の単施設における多クローン性のアウトブレイクの機序について疫学的、微生物学的に解析した。また、本事例は長期にわたって持続したが、その終息に寄与した因子について感染制御の観点から分析した。

〔方法ならびに成績(Methods/Results)〕
2017年〜2019年に127床の透析病院において149人がVREに感染し、161株のVREが検出された。質量分析法により155 (96%)株がEnterococcus faeciumであった。E-testによる薬剤感受性試験では131(86%)株がバンコマイシン高度耐性だったが、119 (78%)株はテイコプラニンに感受性であった。van遺伝子の型はPCR法にて実施し、全株がvanAを保有していた。検出菌の同一性を評価するためにパルスフィールドゲル電気泳動(PFGE)及びMultilocus sequence typing (MLST)を実施した。PFGEでは31パターンに、MLSTでは6つのsequence typeに分けられた。このように多様なVREが検出された機序として、共通のvanA保有プラスミドの存在が考えられた。染色体とプラスミドを分離するために菌種や検出時期などが異なる株を選別してSHPFGEを実施すると、約110 kb付近に共通のプラス ミド(pIHVA)を認めた。vanAをプローブとしてサザンブロット法を行うとすべてのpIHVAはvanAを保有していた。このことからpIHVAの多様な腸球菌種への伝播により多クローンのVREのアウトプレイクを呈したと考えられた。 pIHVAの詳細を分析するためにMiSeqおよびGridΙOΝにてプラスミドゲノムを解読すると、環状プラスミドではないことが判明した。SI nuclease処理の有無に関わらずPFGEにて同位置にバンドを認め、制限酵素処理にてvanA保有断片のサイズが制限酵素地図と一致した。よって、pIHVAは線状プラスミドであることが判明した。Tn1546様の構造部はvanYZの配列が変化したユニークな構造であり、vanZがIS12162Eによりほぼ欠失のような状態であることがテイコプラニン感受性に影響しているものと推測された。また、今までに報告された高頻度接合伝逹性プラスミドとは異なる新たな伝遠性プラスミドであった。代表的な50株のpIHVAを抽出してゲノムを解読すると、欠失やIS挿入などにより9つの型に分けられ、患者の疫学情報と突合させると、pIHVAが変異を伴いながら多様な腸球菌種に伝播しており、vanA保有のプラスミドの伝播・拡散の様子を可視化することができた。本事例は終息までに3年を要し、通常の手指衛生等の感染対策の遵守、環境整備等では制御が困難であった。“hot spot"だったA病棟に着目すると、新規VRE患者数は病棟のVRE保菌患者の割合と相関(ρ=0.62, 95%信頼区間[CI] : 0. 29-0. 82)し、VRE保菌患者の割合は病棟におけるバンコマイシンの使用量と相関(ρ=0.66,95% CI : 10. 36-0.84)していた。抗菌薬適正使用プログラムの強化およびVRE保菌患者を分散させるなどの対策を追加することで、新規VRE患者は減少を認めた。これらは一般病棟におけるVREのアウトブレイクを制御するための指標となる可能性がある。

〔総括(Conclusion)〕
VREのアウトブレイク事例において、ゲノム解析により腸球菌間をvanA保有線状プラスミドが伝播・拡散する様子が可視化でき、非流行地域におけるVREの多様性が生まれる機序と考えられた。VREのアウトブレイク事例では保菌患者の割合やバンコマイシンの使用量が制御の指標となる可能性も示唆された。

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