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大学・研究所にある論文を検索できる 「Development of Stereospecific Living Cationic Polymerization」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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Development of Stereospecific Living Cationic Polymerization

渡邉, 大展 大阪大学

2021.03.24

概要

タンパク質や核酸などの天然高分子は、分子量、立体構造、モノマー組成/配列などの一次構造を完全に制御することで洗練された機能や高次構造を発現する。そのため合成高分子においても精密重合法が望まれており、その強力な手法として立体特異性リビング重合がある。とくに、カチオン重合は他の重合法で重合困難な様々なモノマーを重合可能であるため、もし立体特異性リビングカチオン重合が可能になればこれまでにない多様な高分子材料の創出につながることになる。しかし、カチオン重合においては立体制御自体が一般に困難であり、さらに立体特異性リビングカチオン重合となるとその知見はほとんど得られてない。そこで本論文では、生長カルボカチオンと対アニオンの間に働く引力や立体反発に着目してカチオン重合の立体制御法を研究すると同時に、添加物や配位子を設計して重合活性を制御することで、種々のビニルモノマーの立体特異性リビングカチオン重合系を創成することを目指した。

 第一部では、トリフルオロメタンスルホン酸、ハロゲン化オニウム塩、およびハロゲン化金属を組み合わせた開始剤系により、N-ビニルカルバゾール (NVC) や芳香環含有ビニルエーテル (VE) の立体特異性リビングカチオン重合系を構築した。まずハロゲン化オニウム塩としてnBu4NCl、ハロゲン化金属としてZnCl2を用いてNVCのカチオン重合を行ったところ、nBu4NClとZnCl2の濃度比が適切な場合に立体特異性リビング重合が進行し、高い立体規則性と狭い分子量分布を併せ持つポリマーが得られた (mm = 94%, Mw/Mn ∼ 1.3)。さらに、得られた立体規則性ポリ(NVC) が非立体規則性ポリマーと大きく異なる物性を示すことを明らかにした。重合条件の検討から、このような高度な立体制御には対アニオンとして生成するZnCl42–種が重要であることが示された。そこで次に、多様なハロゲン化オニウム塩とハロゲン化金属を組み合わせることで対アニオンを設計し、対アニオン構造が立体規則性に与える影響を体系的に検討した。その結果、対アニオンの「アニオン性」の大きさに基づいて、重合のリビング性を保ったままポリ(NVC) の立体規則性を幅広く変化可能であることを見出した。またDFT計算から、ポリマー側鎖の芳香環と対アニオンの間に働く静電的引力が立体制御の鍵であることが示唆された。この機構は、芳香環を側鎖にもつVE類の立体特異性リビング重合に本重合系が有効であることからも支持された。さらに、リビング重合の対アニオンを設計することで、従来カチオン重合では困難だったステレオブロックポリマー等の合成も可能となった。

 第二部では、嵩高い対アニオンの設計によるアルキルVEの立体特異性リビングカチオン重合を研究した。とくに、体系的な設計を可能にするため、酒石酸から安価かつ容易に誘導されるTADDOLと呼ばれる配位子に着目した。 TADDOL (Ar = C6H5) とTiCl4を組み合わせた開始剤系を用いることで、イソブチルVE (IBVE)、n-プロピルVE、2-フェニルエチルVEなどの立体特異性カチオン重合が進行した (m = 83–94%)。さらにこの重合系を用いて、ボルネオールやメントールから誘導したキラルなVEを重合したところ、用いたTADDOLが (S,S)体の場合と (R,R)の場合で生成ポリマーの立体規則性が大きく変化し、キラルな側鎖とキラルな対アニオンがmatch/mismatchを起こすことも明らかになった。続いて、このTADDOL/TiCl4系による立体特異性リビングカチオン重合を検討した。その結果、温度やTADDOL置換基を選択することによりリビング型の重合挙動が確認された。例えば、Ar = 4-CF3C6H4のTADDOLを用いた場合–78 ºCで長寿命生長種が観測され、生成ポリマーは高い立体規則性と狭い分子量分布を有していた (m = 90%, Mw/Mn = 1.2– 1.4)。さらに、TADDOLのAr置換基の体系的検討により、置換基の電子的効果がリビング性に、立体的なかさ高さが立体規則性に、それぞれ特に大きな影響を与えることを見出した。

 このように本研究では、異なる2つの手法により種々のビニルモノマーの立体特異性リビングカチオン重合を開拓し、そのためには触媒や配位子の戦略的設計が重要であることを見出した。得られた知見は立体特異性リビング重合を発展させるための土台となり、今後多様な高分子材料の開発につながることが期待される。

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