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3次元球面内の曲面の不変量について

栗原, 寛明 KURIHARA, Hiroaki クリハラ, ヒロアキ 九州大学

2021.03.24

概要

本論文では,標準的 3 次元球面 S3 に埋め込まれた向き付け可能連結閉曲面のアイソトピー類について研究を行う. 以後, 曲面とは S3 に埋め込まれた向き付け可能連結閉曲面を指すこととする. このような曲面の研究は Fox, Homma, Tsukui, Suzuki 等により 1950 年代から 1970 年代にかけて盛んに行われ, 曲面の構成方法や性質についての結果が与えられた. 彼らの研究においては, 3 次元多様体論や基本群を用いた研究手法が主流であり,曲面の不変量の構成についてはあまり研究されてこなかった.

本論文ではハンドル体絡み目や代数的な系であるカンドルの G 族 (Definition 2.20) を用いることで, これまでの曲面に関する先行研究とは異なる視点で研究を行う. その準備として, Section 2では曲面の不変量の構成に必要となる用語や既存の結果について紹介する. その後, Section 3 において, 2 成分ハンドル体絡み目のいくつかのカンドル不変量を用いた曲面の不変量の構成を行う.また, Section 4 では 2 つの具体的な曲面に対して, 構成した不変量の値を計算し, それらが同値な曲面でないことを見る. 最後に, Section 5 では, 曲面を幾何的な性質から考察することで新しい不変量を構成し, その性質を調べる.

さて, S3 に埋め込まれた曲面は S3 を 2 つの部分多様体に分け, それらは共通の境界を持つ. すると, 3 次元多様体の Heegaard 分解 (Definition 2.6) を考えることで, それぞれの部分多様体をハンドル体と圧縮体のペアに分解することができる. これにより, 曲面から S3 内の 2 成分のハンドル体絡み目が得られる. さらに, 任意の 3 次元多様体の勝手な 2 つの Heegaard 分解は有限回の安定化 (Definition 2.8) の後に同値になることが, Reidemeister-Singer の定理として知られている. したがって, 与えられた曲面に対して, 安定化を法とした 2 成分ハンドル体絡み目が対応することがわかる. 本論文ではまず, 曲面に対して incompressible neighborhood という概念を用いることで, 2成分ハンドル体絡み目の安定同値類 (Definition 2.13) から, もとの曲面のアイソトピー類が一意的に定まることを示す. これにより, 曲面の研究をハンドル体絡み目の研究に帰着させることができる.

ここで, 自然な問いとして, 「2 成分ハンドル体絡み目の安定同値類が与えられたとき, それに対応する曲面が存在するか」といった問題が考えられる.本論文では, 2 成分ハンドル体絡み目の補空間の基本群の言葉で, この問題に対する解答を与える.ハンドル体絡み目 (結び目) の研究は近年, 盛んに行われており, Ishii, Iwakiri, Jang, Oshiro の論文 (2013 年) で, 代数的な系であるカンドルの G 族を用いることで, その不変量が構成されることが示された. 本論文では, まず, そのような不変量の中で最も基本的である X 彩色を用いて曲面の不変量を構成する. 先の Reidemeister-Singer の定理により, 与えられた曲面に対して, 安定化を法とした 2 成分ハンドル体絡み目が対応することが分かっていた.そこで, 2 成分ハンドル体絡み目の X 彩色の総数が安定化によりどのように変化するかを定式化し,その変化が安定化を行った際に相殺されるような工夫を加えることで, 曲面の代数的な不変量を構成する (Theorem 3.1). さらに, X 彩色の代わりに, カンドルの G 族を用いて展開されるコホモロジー理論から定義されるハンドル体絡み目の不変量を活用しても,Theorem3.1 と同様の方法により曲面の不変量を構成できることを見る (Theorem 3.3).

また, 本論文では曲面の幾何的な不変量の構成についても考察を行う. 本論文で構成する幾何的な不変量は handle number と呼ばれ, 結び目理論における unknotting tunnel number の類似であり, 曲面にいくつかのハンドル (Definition 5.4) を接着することで得られる曲面の外部の 2 つの連結成分がどちらもハンドル体に同相になるのに必要となるハンドルの最小数として定義される.さらに, ハンドル体結び目の tunnel number の定義を S3 に埋め込まれた 3 次元多様体に対する tunnel number に一般化することで, 曲面の handle number と, 曲面の外部の 3 次元多様体に対する tunnel number の関連を明らかにする. そして, 本論文では, 種数が 2 の素な曲面 (Definition 5.11) について handle number を用いた考察を行い, そのような曲面から得られる 2 成分ハンドル体絡み目との関連を調べる.

参考文献

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