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大学・研究所にある論文を検索できる 「羊膜上皮細胞移植における門脈内投与の有効性および移植後凝固系活性化の評価」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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書き出し

羊膜上皮細胞移植における門脈内投与の有効性および移植後凝固系活性化の評価

田中, 美也子 東北大学

2023.03.24

概要

(書式18)




位 論 文 要 約
A b s t r a c t )

博士論文題目 Title of dissertation
羊膜上皮細胞移植における門脈内投与の有効性および移植後凝固系活性化の評価

東北大学大学院医学系研究科 医科学 専攻
外科病態学講座 消化器外科学分野
氏名 Name

田中

美也子

【背景】先天性代謝異常症に対しては、厳しい食事制限や内科的酵素補充療法などの保存的治療が行われ、一
定の治療成績が得られている一方、疾患や重症度によっては、QOL の著しい低下やコントロール不良例を認
め、根治可能な治療法が模索されてきた。先天性代謝異常症の内、主に肝臓に代謝異常が限局した疾患に対し
ては、近年肝移植が行われるようになり、唯一の根治療法として確立している。しかし、肝移植にはドナー不
足の問題があり、移植待機中の不可逆的病状進行や死亡という深刻な課題が残存する。また先天性代謝異常症
において、欠損している機能以外の肝機能は正常であることから、自己肝を摘出して行われる肝移植は過大治
療ではないかということが問題視されている。そこで、より低侵襲な細胞移植治療法として肝細胞移植の研究
が行われてきたが、細胞を採取するための臓器不足の問題は肝移植と同様であり、ドナー不足に影響されない
新たな細胞ソースが探索されている。ヒト羊膜上皮細胞(hAECs:human amniotic epithelial cells)は廃棄され
る段階の分娩後胎盤から採取可能であることから供給が容易であり、肝細胞への分化能を有することに加えて、
低免疫原性や抗炎症作用などの特長を有し、代謝性肝疾患に対する細胞移植治療への応用が期待されている。
hAECs は、生体内で肝臓に生着すると成熟肝細胞様に機能発現し、in vitro でも培養条件を整えることにより
種々の肝細胞マーカーを発現して、複数の先天性代謝異常疾患モデル小動物に対する hAECs 移植により代謝
異常を治癒するなど高い治療効果が示されており、臨床応用を前提とした基盤研究が求められている段階にあ
る。細胞移植において、有効性および安全性の高い治療法として臨床施行していくためには、移植方法の至適
化が不可欠である。実臨床における細胞の投与経路として、肝細胞移植と同様に経門脈的投与が第一に想定さ
れているが、これまで in vivo で経門脈的 hAECs 移植の優位性について評価した報告はなく、経静脈的に移植
される全身投与との優劣は不明である。さらに、血管内への細胞移植では即時型血液介在性炎症反応(IBMIR:
Instant Blood Mediated Inflammatory Reaction)が起き、移植後早期の細胞機能廃絶の原因となることが膵島や肝
細胞移植領域の先行研究で明らかにされており、IBMIR 制御が細胞移植治療の臨床応用への鍵になると考え
られる。しかし、hAECs 移植による IBMIR の評価も未検討である。IBMIR では移植細胞に発現する TF(tissue
factor)をトリガーとし、凝固系活性化がイニシエーターとなって、種々の炎症反応を生じることが知られて
いる。本研究では、臨床上想定される経門脈的 hAECs 移植の有効性を明らかにするとともに、移植後の IBMIR
の評価として移植後の凝固系活性化について解析し、さらに抗凝固剤による細胞生着向上効果の検証を行うこ
ととした。
【目的】本研究の目的は、臨床上想定される経門脈的投与で hAECs 移植の有効性を明らかにするとともに、
経門脈的 hAECs 移植後の凝固系活性化について解析を行い、IBMIR のイニシエーターである凝固系活性化の
制御による細胞生着の向上効果を明らかにすることである。
【方法】hAECs は当院産科で実施された予定帝王切開症例で得られた羊膜から細胞分離して採取し、-80 ℃で
凍結保存した。使用時は 37 ℃の Water bed で解凍した。細胞は 200 μl の Dulbecco’s Phosphate-Buffered Saline
(DPBS)で懸濁して移植した。
・実験 1:投与経路別の細胞分布の評価
レシピエントとして雄性 Wistar/ST ラットを用いた。まず 1 × 107 hAECs を XenoLight DiR で蛍光染色した。
①門脈内投与群、②脾臓内投与群、③尾静脈内投与群、④陰茎静脈内投与群を設け、各経路より細胞を投与し
た。移植 30 分後、in vivo imaging system(IVIS) spectrum CT で体表から撮影を行った。体表撮影を行った後、
解剖して臓器の撮影を実施した。
・実験 2:移植 hAECs の生着と肝細胞様機能発現の評価
1

(書式18)
経門脈的移植後、hAECs が肝細胞様の機能発現をすることを評価するために、移植後ラット血清中の human
albumin(hAlb)値を測定した。レシピエントに Alb 非産生ラットである NAR/Slc ラットを用い、1 × 107 hAECs
を経門脈的に移植した。移植後 3、7、14、21 日目に尾静脈より血清採血を行った後に肝臓を摘出した。血清
中の hAlb 値を ELISA で測定するとともに、ラット肝における hAECs の生着について免疫組織学的に評価し
た。
・実験 3:経門脈的 hAECs 移植後の凝固系活性化の評価
分離直後の新鮮 hAECs と凍結保存後の hAECs における TF 発現について Flow Cytometry で解析した。さら
に、Wistar/ST ラットに経門脈的移植を行い(①DPBS 投与群、②1 × 107 hAECs 単独投与群、③hAECs+ヘパ
リン 100 U/kg 投与群)
、移植 0、15、60、120、180、240 分後に採血を行い、ELISA にて経時的な凝固系の評
価を行った。
・実験 4:抗凝固剤による細胞生着向上効果の検証
抗凝固剤であるヘパリンによる、経門脈的 hAECs 移植後の細胞生着に与える影響を検証するため、IVIS
spectrum CT を用いて評価した。まず、1 × 107 hAECs を蛍光染色し、①DPBS 投与群、②1 × 107 hAECs 単独投
与群、③hAECs+ヘパリン 100 U/kg 投与群の 3 群を設けた。経門脈的に移植し、移植後 1、3、24 時間に IVIS
spectrum CT で撮像を行った。取得された蛍光シグナルの強度を数値化した ROI 値の減少率を求め、各群で比
較検討した。
【結果】IVIS spectrum CT の検討では、門脈内投与群では肝臓のみに細胞集積を認め、肺など他臓器への
migration は確認されなかった。脾臓内投与も肝臓に集積を認めたが、3 例中 2 例は解剖前に死亡し、肉眼的に
小腸壊死を認めた。全身投与した尾静脈内投与群と陰茎静脈内群では肺のみに集積を認め、投与後すぐに死亡
し、肺塞栓を起こしたと考えられた。NAR/Slc ラットにおける検討では、移植後血清中の hAlb 値上昇を認め、
移植後 21 日目の摘出肝内に hAECs で強陽性となる hEpCAM と、hAlb 陽性細胞を確認した。Flow Cytometry
の検討では、凍結保存の有無に関わらず、hAECs に TF の発現を認めた。さらに、hAECs 門脈内移植後、凝固
系の指標である Thrombin-Antithrombin Complex (TAT)の上昇が確認されたが、ヘパリン使用群においてはコン
トロール群と同程度まで TAT 上昇が抑制された。一方、ヘパリンの細胞生着向上効果を検証するために行っ
た IVIS spectrum CT の検討では、移植後 ROI 値の減少率において細胞単独群とヘパリン投与群とで有意差を
認めなかった。
【考察】本研究結果から、経門脈的移植は hAECs を肝臓のみに集積させて肺塞栓を起こさず、肝臓に hAECs
を効率的に生着させ肝細胞様に機能発現させることができる、安全かつ有効な投与法であることが示された。
また、hAECs は細胞分離した段階で TF を発現しており、移植後凝固系活性化を認めることが初めて明らかと
なり、hAECs 移植においても IBMIR が生じることが示唆される結果であった。本研究からは、抗凝固剤であ
るヘパリン単独での IBMIR 抑制効果は確認されず、抗凝固療法による細胞生着向上効果については、さらな
る検討が必要であると考えられた。 ...

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