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大学・研究所にある論文を検索できる 「植物の栄養生長期と生殖生長期で見出した新規現象に関する解析-スギナのジベレリンに対する応答メカニズムの解析およびBrassica napusのS遺伝子座と独立した新規不和合性因子の解析」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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植物の栄養生長期と生殖生長期で見出した新規現象に関する解析-スギナのジベレリンに対する応答メカニズムの解析およびBrassica napusのS遺伝子座と独立した新規不和合性因子の解析

岡本 拓実 東北大学

2020.03.25

概要

【背景・目的】
植物は種子から発芽後、一定の栄養生長期間を経て生殖生長期に移行する。進化の過程で植物が多細胞になることで、細胞間のコミュニケーション、情報伝達が生長において重要となった。細胞間コミュニケーション、情報伝達を司る因子である植物ホルモン・ジベレリン(GA)は植物に徒長を引き起こさせる物質として同定された。その後の研究から花粉成熟、花粉管伸長という生殖過程においても鍵因子となっていることが解明された。また、シダ植物・カニクサでは GA 誘導体であるアンセリジオーゲンが前葉体での雌雄の成熟時期を制御していることが示されている。近年では、低分子ペプチドが植物の形態形成にも重要であることが示され、従来の低分子化合物だけでなく、その分子機能解明が課題である。

細胞間コミュニケーション、情報伝達のモデル系として、生殖生長期の花粉―雌ずい間の相互作用が古くから研究されている。その中でも、ダーウィンの時代から注目されている現象が自家不和合性である。自家不和合性とは雌雄両生殖器官が機能的・形態的に正常であるにもかかわらず、自己花粉では受精できない現象をいう。これまで、アブラナ科、ナス科、バラ科、ケシ科などで花粉、雌ずい側の制御因子が同定されている。その中でもアブラナ科植物の花粉側因子は~7kDa のディフェンシン様ペプチドタンパク質をコードした SP11 であり、雌ずい側因子は受容体型キナーゼをコードした SRK である。同一 S 対立遺伝子に由来する花粉表面上の SP11 が柱頭上の SRK と結合することで、不和合性現象が誘起される。類似のペプチド性タンパク質とその受容体も数多く同定されており、形態形成など多様な生理現象に関連している。

このように、植物ホルモン、低分子ペプチドは栄養生長期、生殖生長期のいずれにおいてもその重要性が解明されつつある。では、翻って、植物ホルモン・GA が栄養生長を正に制御している現象はシダ植物、裸子植物等を含めて、全てで当てはまる現象なのであろうかと言うことについては、明確な解を得ているとは言い難い。さらには、アブラナ科植物の自家不和合性において、二倍体種では自家不和合性を示す。一方、複二倍体種では、自家和合性を示すことが知られているが、その原因・遺伝因子は未解明である。本研究では、栄養生長期の植物ホルモン・GA のシダ植物・スギナへの影響、生殖生長期のアブラナ科植物 Brassica napus(B. napus)の自家和合性の原因因子を解明することをきっかけとして、栄養生長期、生殖生長期で細胞間コミュニケーション、情報伝達がどのように進化したのかを議論することとした。

【結果・考察】
1) シダ植物スギナを用いた新規栄養生長現象の発見と解析
シダ植物、裸子植物への GA4 処理による植物の生長制御のスクリーニング過程において、スギナの生長が GA 処理で負に制御される現象を見出した。この抑制現象は GA4 濃度依存的(10-8、10-6、10-5、10-4)であり、 GA 合成阻害剤であるウニコナゾール処理では対照区と変わらない生長が見られた。これらから、スギナにおいて、被子植物で広く見られる GA による生長促進とは真逆の現象である新規な植物応答と考えた。GA のシグナルは、その受容体である GID1 に受容、GA 抑制因子の DELLA がユビキチン化、26S プロテアソームによって DELLA が分解されることによって、細胞伸張の情報伝達がなされている。そこで、DELLA タンパク質に対する抗体を用いて、GA4 処理をしたスギナの DELLA タンパク質を検出したところ、イネへの GA4 処理と同様に DELLA タンパク質の分解が観察できた。このことから、シダ植物・スギナでも GA を受容し、 DELLA タンパク質がユビキチン化・分解される過程までは被子植物と同じ過程を経ているが、最終的な生長現象は逆の現象が起きていることを解明した。つまり、GA の情報伝達における下流因子の発現・機能がスギナでは逆転していると考えられた。

2) B. napus における新規不和合性の発見と新規因子の同定
11 系統の B. napus をスクリーニングした結果、既存の品種内にも自家不和合性種、自家和合性種が混在していた。N110 系統と N343 系統は表現型が自家不和合性にも関わらず、花粉側因子 SP11 の発現が見られないという新規な現象を見出した。また、複数の交雑組合せ系統による実験から、B. napus の不和合性現象が S遺伝子とは独立した複数因子で制御されていると考えた。千宝菜系統を花粉親にした場合、不和合性を示す N110、N113、N115、Westar 系統と和合性を示す N354 系統を見出し、柱頭で発現する遺伝子の RNA seq 解析を行った。その結果、両者で発現パターンが異なる 2 つの興味深い候補遺伝子(Leucine-rich receptor-like protein kinase family protein、signal peptide peptidase)を得た。これらはいずれも細胞間コミュニケーション、情報伝達に関連しており、B. napus の新規不和合性現象を制御する候補遺伝子であると考えられた。

【まとめ】
本研究では栄養生長期、生殖生長期での「細胞間コミュニケーション、情報伝達」現象をひもとく鍵因子として、植物ホルモン・GA に対するスギナの応答、複二倍体種 B. napus の不和合性現象を解析した。スギナでは情報伝達における何らかの要因の逆転現象が起きている可能性を示し、B. napus の不和合性現象では、S遺伝子座と独立した現象に関連した 2 つの情報伝達に機能する因子を同定した。これらのことから、栄養生長期、生殖生長期を通じて、情報伝達に関わる因子がいずれのステージにおいても鍵となっており、それぞれでの共通性と多様性を見出すことができた。

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