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大学・研究所にある論文を検索できる 「Hyaluronan suppresses enhanced cathepsin K expression via activation of NF-κB with mechanical stress loading in a human chondrocytic HCS-2/8 cells」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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Hyaluronan suppresses enhanced cathepsin K expression via activation of NF-κB with mechanical stress loading in a human chondrocytic HCS-2/8 cells

Suzuki, Mochihito 鈴木, 望人 名古屋大学

2020.04.02

概要

【緒言】
変形性関節症(OA)は年齢、肥満、遺伝、機械的ストレス負荷など様々な因子が関与している。過剰な機械的ストレス負荷はOA発症の重要な要因であるが、軟骨変性を引き起こすメカニズムは不明である。過去の研究では関節軟骨に対する機械的ストレス負荷による異化作用について報告されている。以前に我々はヒトOA軟骨細胞におけるヒアルロン酸(HA)レセプターであるCD44断片化、および過剰な機械的ストレス負荷によるCD44断片化について報告した。

高分子量ヒアルロン酸(HMW-HA)の関節内注射はOA治療として頻用されている。HAは抗炎症、疼痛緩和、関節軟骨維持に重要な役割を果たしている。HAの様々な作用機序やOA治療に対する臨床的有効性は報告されているが、その機序は完全には解明されていない。軟骨変性におけるHA作用のメカニズムを解明するため、軟骨細胞におけるカテプシンK発現を調べる必要があると考えた。システインプロテアーゼであるカテプシンKは、I型/II型コラーゲンの骨および軟骨に関与している。この酵素は骨リモデリングおよび関節軟骨分解に関与することが報告されている。我々は以前、ヒト線維芽細胞を用いてリポ多糖(LPS)によって誘導されるカテプシンK発現の亢進をHAによって抑制したことを報告した。しかし機械的ストレス負荷によるカテプシンK発現の変化、また軟骨細胞でのカテプシンK発現に対するHMW-HAの効果についての報告はない。

この研究ではヒト軟骨様細胞株(HCS-2/8)を用いて機械的ストレス負荷によって誘導されるカテプシンKの発現の変化について調べた。またカテプシンKの発現に対するHMW-HAの抑制効果も調べた。私たちの研究結果はOA治療のための関節内HA注射の有効性を支持する新しいエビデンス構築に役立つと考えている。

【対象及び方法】
ヒト軟骨様細胞株HCS-2/8(2×10⁵cells)をI型コラーゲン(Cellmatrix®、Nitta Gelatin、日本)でコーティングしたシリコンチャンバー(STB-CH-10,STREX,Japan)上にて2日間培養した。培養後、自動伸展刺激装置STB-140(STREX、日本)を用いて24時間伸展ストレス(CTS)を行った(under cyclic loading 20% elongation, 60cycles/min)。また高分子ヒアルロン酸(Artz®,average900kDa)およびNF-kB阻害剤ヘレナリンによる前処置後(1mg/mL)に伸展ストレスを行い、カテプシンK発現およびNF-kB活性化について検討した。メッセンジャーリボ核酸(mRNA)およびタンパク質発現は、それぞれリアルタイムポリメラーゼ連鎖反応(PCR)およびウエスタンブロッティングによって評価した。

【結果】
ヒト軟骨様細胞株HCS-2/8(2×10⁵cells)をI型コラーゲンでコーティングした10cm²シリコンチャンバー上で2日間培養した後、様々な伸展ストレス(CTS)負荷強度にてカテプシンK発現を調べた。カテプシンK発現は1Hzおよび20%での24時間CTS負荷で有意に亢進した(図1A)。カテプシンK発現の時間依存性を調べるため、1Hzおよび20%下にて0-24時間CTS負荷を行った。カテプシンK発現は、0時間と比較して、24時間CTS負荷で有意に亢進した(図1B,C)。

高分子ヒアルロン酸(HMW-HA)による1時間前処理した後、1Hzおよび20%の24時間CTS負荷を行った。HMW-HA(1mg/mL)前処理によって、24時間CTS負荷によるカテプシンK発現を抑制した(図2A,B)。HMW-HA効果に関与するHA受容体を調べるため、HMW-HA前処理1時間前に抗CD44抗体および抗ICAM-1抗体による前処理を行った。図2Cに示すように、抗CD44抗体によってHMW-HA効果を明らかに阻害した。

1Hzおよび20%下にて120分間CTS負荷を行い、NF-κBの活性化を調べた。NFκBp65のリン酸化はCTS負荷60分で明らかに認められた(図3A)。次いでHMW-HAで1時間前処理し、60分間CTS負荷に行った。HMW-HA前処理によって、CTS負荷により誘導されるNF-κBp65のリン酸化を有意に抑制した(図3B)。NF-κB活性化がCTS負荷によって誘導されるカテプシンK発現に関与しているかを調べるために、NF-κB阻害剤であるヘレナリンによる前処理を行った。ヘレナリン前処理によって、CTS負荷によって誘導されるNF-κBp65のリン酸化を有意に抑制した(図4A)。またヘレナリン(1μM)による前処理は、カテプシンK発現を有意に抑制した(図4B)。

【考察】
本研究ではヒト軟骨様細胞株において、機械的ストレス負荷はNF-κB活性化を介してカテプシンK発現を亢進させることがわかった。HMW-HA前処理によりNF-κB活性化の抑制し、カテプシンK発現を抑制した。システインプロテイナーゼであるカテプシンKはOAのII型コラーゲンの断片化に関与している。以前の研究ではヒトOA軟骨におけるカテプシンK発現亢進が報告されている。またカテプシンK阻害により、マウスOAモデルの軟骨変性が減少したことが報告されている。これら以前の研究に基づいて、カテプシンKはOAの潜在的な治療標的と考えられている。HMW-HAを用いて過剰な機械的ストレス負荷によるカテプシンK発現を抑制することはHA注射の臨床的有効性のメカニズムを解明する可能性がある。

本研究では、1Hzおよび20%下でカテプシンK発現の有意な亢進が認められた。過剰な機械的ストレス負荷は、細胞によって様々なプロトコルで軟骨細胞の異化(MMP3、MMP-13)を誘発することが報告されている。従って異化変化を誘発するのに十分な機械的応力負荷の強度を検証する必要がある。本研究では、0.5Hzおよび10%下のストレス負荷ではカテプシンK発現に有意差を認めなかった。この実験条件は機械的応力負荷の生理学的強度であり、1Hzおよび20%の強度はいわゆる過剰な機械的応力負荷であると考えた。

HAは関節軟骨の恒常性を維持する上で重要な役割を果たしている。外因性HAは、その受容体との結合を介して抗炎症活性を示すことが報告されている。HAはいくつかの表面分子と結合することが知られており、CD44は最もよく知られているHA受容体である。我々は以前、CD44がLPS刺激により誘導されるカテプシンK発現の亢進に対するHAの抑制効果に関与していると報告した。本研究ではCD44が機械的ストレス負荷により誘発されるカテプシンK発現の亢進に対するHAの抑制効果に関与することがわかった。

NF-κBの転写は、ADAMTSやMMPなどの異化酵素の誘導に重要な役割を果たしている。NF-κB経路は、機械的ストレス負荷によって活性化されると報告されている。我々の研究はCTS負荷がカテプシンK発現につながるNF-κB活性化を誘導したことを実証した。さらにHAによるNF-κB阻害は、カテプシンKの発現を抑制した。NFκB経路の阻害はOA治療におけるHA作用の分子メカニズムの一部かもしれない。

本研究のlimitationとして、使用した伸展刺激装置は生体内で軟骨細胞が受ける圧縮力を再現できていない。しかし過去の報告で蛋白分解酵素発現を評価する伸展刺激装置の有効性が実証されている。今後の研究では、圧縮、せん断力、静水圧などの様々な種類の機械的応力を調べる必要がある。

【結論】
過剰な機械的ストレス負荷は、ヒト軟骨様細胞株HCS-2/8において、NF-κB活性化を介してカテプシンKの発現を誘導した。HMW-HA前処理は、機械的ストレス負荷下でNF-κB活性化とカテプシンK発現の両方を効果的に抑制した。これらの結果はOAにつながる過剰な機械的ストレス負荷の異化作用を裏付けるメカニズムを説明し、OA治療のための関節内HA注射の有効性を支持する新しいエビデンスを示した。

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