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Efficacy and safety of accelerated fractionated radiotherapy without elective nodal irradiation for T3N0 glottic cancer without vocal cord fixation

奥村, 真之 名古屋大学

2021.06.29

概要

【緒言】
American Joint Committee on Cancer (AJCC) Cancer Staging Manual の第 6 版が 2002 年 に出版され、声門癌の病期分類は大きく変化した。第 1-5 版では T3 の診断基準として声帯固定の所見が必須であったが、第 6 版以降は画像上の傍声帯間隙浸潤かつ/また は甲状軟骨浸潤でも T3 と診断されるようになった。

声帯固定が無く画像所見のみで T3 と診断される群の治療成績は、T2 より局所制御・ 予後が不良という報告から T2 とほぼ同等という報告まで幅広く、傍声帯間隙浸潤や 甲状軟骨浸潤の画像所見のみで治療戦略を変更すべきかについては議論が残る。

放射線治療は早期声門癌の標準治療の 1 つであり、局所制御向上のために非通常分 割が適用されることも多い。以前より国立がん研究センター東病院では、声門癌の放 射線治療として T1-2N0 には照射野に予防域を含まない加速分割照射 (AFRT, accelerated fractionated radiotherapy)、T3N0 には予防域を含む化学放射線治療(CRT, chemoradiotherapy)や過分割照射(HFRT, hyperfractionated radiotherapy)を用いてきた。 2002 年の病期分類改訂以降も、それまで T1-2N0 と診断されていた声帯固定のない T3N0 の症例の多くは予防域を含まない AFRT で治療が行われている。しかし我々の 知る限り、声帯固定のない T3N0 に対する AFRT の治療成績の報告はない。

本研究の目的は、T3N0 声門癌のうち声帯固定を伴わない症例に対する予防照射を 含まない AFRT の有効性・安全性について、予防照射を含む CRT や HFRT との比較を 基に遡及的に検討することである。

【対象および方法】
2005 年 6 月から 2018 年 3 月に国立がん研究センター東病院で声帯固定を伴わない T3N0(AJCC 第 8 版)と診断された声門扁平上皮癌患者のうち、根治的放射線治療を行 った症例の診療録を遡及的に調査した。

放射線治療の選択肢は AFRT、CRT、または HFRT であった。声帯固定を伴わない T3N0 声門癌に対しては基本的に AFRT が薦められ、CRT や HFRT は比較的進展範囲 の広い症例や、Eastern Cooperative Oncology Group performance status (PS)が 0-1 の症例 に推奨された。CRT や HFRT の選択は内視鏡や CT・MRI での評価に基づいて行われ、 CRT はより大きな病変の場合に適用された。最終的な治療方針は、頭頸部外科医・頭 頸部内科医・放射線腫瘍医・放射線診断医・形成外科医・歯科医による症例検討会で の推奨方針、及び患者希望に沿って決定された。

照射スケジュールを図1に示す。AFRT では喉頭全体に対し 1 回 2.25-2.4 Gy (1 日 1 回) で計 63-65.25 Gy の照射が行われた。1 回 2.25 Gy は病変が声帯背側の場合に適用 された。CRT と HFRT ではまず両側頸部に対し 1 回 2 Gy (1 日 1 回) で計 40-46 Gy の 予防照射を行い、その後合計で 70 Gy となるように喉頭全体に対し CRT は 1 回 2 Gy (1 日 1 回)、HFRT は 1 回 1.5 Gy (1 日 2 回) のブースト照射を行った。

CRT では同時併用化学療法として 3 週毎 100 mg/m2 のシスプラチン投与が行われた。適 用困難症例には 1 週毎 40 mg/m2 のシスプラチンまたはセツキシマブの投与が行われた。

治療効果の評価として局所再発(LF, local failure)、領域再発(RF, regional failure)、無 増悪生存(PFS, progression-free survival)、全生存(OS, overall survival)を解析した。これ らの評価項目の起算は放射線治療開始日とした。LF event は放射線治療終了時点での 腫瘍残存あるいは経過観察中の局所再発が生検で証明されること、RF event は頸部リ ンパ節転移再発、PFS は再発あるいはあらゆる死亡までの期間、OS はあらゆる死亡ま での期間と定義した。CTCAE v4.0 で有害事象を評価した。

統計解析は R software, version 3.5.2 で行った。患者背景は Kruskal-Wallis 検定と χ2 検定で評価。LF と RF は、競合リスクとして「LF や RF を伴わない死亡」を考慮して cumulative incidence function を用いて解析、Gray 検定で群間比較を行った。既報との 比較のために、死亡を censoring event として Kaplan-Meier 法を用いて局所制御(LC, local control)、局所領域制御(LRC, loco-regional control)も評価した。また、PFS と OS について Kaplan-Meier 法を用いて推定、log-rank 検定で群間比較を行った。

【結果】
根治的放射線治療を受けた T3N0 声門癌(AJCC 第 8 版)患者が 89 例同定された。そ のうち 75 例が声帯固定を伴わず、画像所見のみで T3 と診断された。その 75 例から 治療後 1 年以内に追跡不能となった 1 例を除き、残った 74 例を解析対象とした。 患者背景を表 1 に示す。AFRT/ CRT/ HFRT 群はそれぞれ 41 例/ 10 例/ 23 例で、観察 期間中央値は 43.5 ヶ月(範囲, 12-141)/ 37 ヶ月(範囲, 13-60)/ 66 ヶ月(範囲, 32-122)。患 者背景のうち年齢、PS、声門下浸潤は 3 群間で有意差があった。

LF と RF の cumulative incidence を図 2、3 に示す。AFRT/ CRT/ HFRT 群の 3 年 LF 割 合は 10% (95% CI, 3-21)/ 20% (95% CI, 3-46)/ 26% (95% CI, 10-45)、3 年 RF 割合は 6% (95% CI, 1-17)/ 0% (95% CI, 0-0)/ 9% (95% CI, 1-25)であった。LF (P= 0.28)、RF (P=0.62) いずれも 3 群間に有意差はなかった。AFRT/ CRT/ HFRT 群の 5 年 LC 割合は 90% (95% CI, 76-96)/ 80% (95% CI, 41-95)/ 74% (95% CI, 51-87)、5 年 LRC 割合は 87% (95% CI, 71- 94)/ 80% (95% CI, 41-95)/ 74% (95% CI, 51-87)であった。

PFS と OS の Kaplan-Meier 曲線を図 4、5 に示す。AFRT/ CRT/ HFRT 群の 3 年 PFS 割合は 71% (95% CI, 52-83)/ 69% (95% CI, 31-89)/ 74% (95% CI, 51-87)、3 年 OS 割合は 77% (95%CI, 58-88)/ 100% (95% CI, NA-NA)/ 87% (95% CI, 65-96)であった。PFS (P= 0.87)、OS (P=0.53)いずれも 3 群間に有意差はなかった。5 年 PFS 割合、5 年 OS 割合 は 3 年時点の割合と同一であった。

有害事象の詳細を表 2 に示す。Grade 4 または 5 の有害事象は発生しなかった。AFRT/ CRT/ HFRT 群でそれぞれ 5 例(12%)、2 例(20%)、7 例(30%)に Grade 3 の有害事象を認 め、大部分は皮膚炎や粘膜炎といった急性期有害事象であった。Grade 3 の晩期有害事 象は HFRT 群の喉頭浮腫 1 例のみであった。

【考察】
本研究は声帯固定を伴わない T3N0 声門癌に対する AFRT の有効性・安全性についての遡及的調査である。AFRT 群の局所領域再発や重度の有害事象は比較的少数で、 治療強度の強い CRT・HFRT 群に匹敵する結果であった。

喉頭癌に対する CRT の成績は第 III 相試験を含めいくつか報告があるが、T3N0 声 門癌というサブグループの成績報告は少ない。遡及的報告では声帯固定を伴わない T3N0 声門癌の CRT の成績は 5 年 LC 割合、5 年 OS 割合が 62-88%、76-100%程度とさ れる。本研究の AFRT 群は併用化学療法なし、かつ予防照射を含まないが、それらと 遜色ない成績が示されている。 傍声帯間隙浸潤は頸部リンパ節転移の危険因子とする報告があるが、本研究の RF 割合は予防照射を含む CRT・HFRT のみならず、予防照射を含まない AFRT でも比較 的少なかった。声門癌のリンパ節転移好発領域が Level III であり、AFRT の照射野で も同 Level の大部分が含まれることが関与しているかもしれない。

本研究の AFRT 群は CRT・HFRT 群に比し有害事象が少なく、T1-2N0 声門癌を対象 とした AFRT vs. 通常分割照射の第 III 相試験で報告されている有害事象と同程度であ った。着目すべき点として AFRT 群で Grade 3 以上の晩期有害事象がなかったことが あげられる。RTOG 91-11 の長期結果報告以降、喉頭癌では CRT 後の晩期有害事象・ 非癌死に注目が集まっているが、AFRT はその回避につながる可能性がある。

本研究の主要な Limitation は、AFRT・CRT・HFRT の治療選択が明確な指標ではな く、腫瘍サイズ・進展範囲の臨床的評価に基づいた症例検討会の合議で決まっている 点である。CT での腫瘍体積測定など、より客観的な指標による分類手法が必要と考え られる。

T3 声門癌はその不均一性から最適な治療について議論が残るが、本研究結果からは 予防照射を含まない AFRT も有望な治療選択肢と考えられる。しかし、AFRT が声帯 固定を伴わない T3N0 声門癌全例に至適かどうかは不明であり、正確な診断に基づく 適切な患者選択が不可欠と考えられる。今後、客観的な治療選択指標の探索に加え、 より長期・大規模な研究が求められる。

【結語】
AFRT は CRT や HFRT と比較して遜色ない治療成績が示され、重篤な有害事象は発 生しなかった。声帯固定を伴わない T3N0 声門癌に対して、AFRT は治療選択肢の 1 つ になりうる。

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