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PCAF regulates HIF-1 activity at multiple steps

倉田, 遊 東京大学 DOI:10.15083/0002007000

2023.03.24

概要

[課程-2]
審査の結果の要旨
氏名 倉田 遊
本研究は細胞の低酸素応答を司る転写因子である低酸素誘導因子(hypoxia-inducible
factor, HIF)の腎臓における制御機構を明らかにするため、ヒト尿細管上皮細胞の細胞株
である HK-2 を用いた in vitro の系を中心に、転写コアクチベーターである p300/CBPassociated factor (PCAF)の HIF-1 に対する影響の解析を試みたものであり、以下の結果
を得ている。
1. 免疫組織化学染色により、ラットの腎臓において尿細管上皮細胞の核に PCAF が発現
していることを確認した。さらに片側虚血再灌流腎障害モデルを作成し、免疫組織化
学染色およびウエスタンブロットにより、腎臓における PCAF の発現が増加すること
を確認した。
2. ヒトの尿細管上皮細胞の細胞株である HK-2 を用いて、siRNA により PCAF のノック
ダウン(KD)を行った。低酸素下において、PCAF KD により、HIF-1α の mRNA 発現
量が増加した一方で、蛋白質発現量は減少した。また、HIF-1 の標的遺伝子の一つであ
る VEGF の mRNA 発現量は、PCAF KD により減少した。HRE-luciferase reporter assay
(HRE-luc)により HIF-1 の転写活性を評価したところ、PCAF KD により、HRE-luc 活性
は低下した。以上より、PCAF は、転写以降の段階において、HIF-1 活性を制御すると
考えられた。
3. HK-2 および、ヒト子宮頸癌由来の細胞株である HeLa 細胞に対して、Gal4-responsive
element-driven luciferase reporter assay (GRE-luc)により、HIF-1α の蛋白質発現量に依存し
ない転写活性を評価した。2,2’-Bipyridyl による化学的低酸素下において、PCAF KD
は GREluc activity を減少させた。PCAF の発現プラスミド(PCAF)および HAT ドメイ
ンまたは E3 ドメインを削除した PCAFΔHAT、PCAFΔE3 を作成し、HeLa 細胞にトラ
ンスフェクションし、同様に GRE-luc により評価したところ、PCAF、PCAFΔE3 の過
剰発現では GRE-luc activity が増加した一方で、PCAFΔHAT では増加を認めなかった。
以上より、HIF-1 の転写活性制御には PCAF の HAT ドメインが関与していると考えら
れた。
4. HIF-1 の標的遺伝子発現への PCAF の関与を網羅的に検討するため、マイクロアレイ解
析を行った。HK-2 を用いて、グループ 1(正常酸素、コントロール)、グループ 2(低
酸素、コントロール)、グループ 3(正常酸素、PCAF KD)、グループ 4(低酸素、
PCAF KD)の 4 群に分類し、各遺伝子発現を比較した。グループ 1 とグループ 2 を比

較し、低酸素誘導遺伝子群を同定した。次に、この低酸素誘導遺伝子群を用いて、グ
ループ 2 とグループ 4 を比較し、Gene Set Enrichment Analysis (GSEA)を行った。その結
果、低酸素誘導遺伝子群は、有意に多くグループ 2 で発現していた。また、Gene
Expression Omnibus (GEO)データベース内のマイクロアレイデータセット(GSE99324)
を用いて、低酸素下の HK-2 細胞において HIF-1α KD により発現が減少した遺伝子群
(HIF-1α 依存性遺伝子群)を同定した。同様にグループ 2 とグループ 4 を比較し、
GSEA を行ったところ、この HIF-1α 依存性遺伝子群はグループ 2 で有意に多く発現し
ていた。以上より、PCAF は HIF-1 標的遺伝子の発現を全体的に制御することが示唆さ
れた。
5. HIF-1α の結合相手である ARNT に対する PCAF の影響を評価したところ、HK-2 細胞
において、PCAF KD は ARNT の mRNA および蛋白質発現量を減少させた。また免疫
沈降法により、PCAF KD が HIF-1α-ARNT 結合を減少させることを示した。続いて、
ARNT の発現が HIF-1 依存的であることが他の細胞種において報告されていることか
ら、HIF-1α KD を行ったところ、ARNT の mRNA および蛋白質発現量が減少した。さ
らに、HIF-1α KD は PCAF の発現量には影響を与えないことから、PCAF の ARNT 発
現への関与は HIF-1α を介していると考えられた。
6. ARNT は AhR の結合相手でもあり、xenobiotic response element (XRE)に結合すること
で、生体異物代謝に関わる遺伝子群を制御する。そこで、PCAF KD が AhR-ARNT シ
グナルに与える影響を検討した。HK-2 細胞において、PCAF KD は、AhR の内因性リ
ガンドであるインドキシル硫酸存在下で ARNT mRNA 発現を減少させた。しかし、
AhR-ARNT シグナルの標的である CYP1A1, CYP1B1 の mRNA 発現量を変化させなか
った。また、XRE luciferase reporter assay (XREluc)を用いた検討でも PCAF KD は
XREluc 活性に影響を与えなかった。
以上、本論文では、腎臓において PCAF が HIF-1 活性を多段階的に制御することを明ら
かとした。本研究は細胞の低酸素応答において主要な役割を持つ HIF-1 の制御機構の解明
に重要な貢献をなすと考えられる。
よって本論文は博士( 医学 )の学位請求論文として合格と認められる。

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