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Long non-coding RNA TILR constitutively represses TP53 and apoptosis in lung cancer

岩井, 美佳 名古屋大学

2023.09.07

概要

主論文の要旨

Long non-coding RNA TILR constitutively represses
TP53 and apoptosis in lung cancer
Long non-coding RNA TILRは肺がんにおいて
TP53により誘導されるアポトーシスを恒常的に抑制する

名古屋大学大学院医学系研究科
腫瘍病態学講座

総合医学専攻

分子腫瘍学分野

(指導:鈴木 洋
岩井 美佳

教授)

【緒言】
近年のゲノム解析の発達に伴い、ヒトゲノムの約70%がRNAに転写される一方で、
その大部分はタンパク質にコードされないnon-coding RNA(ncRNA)であることが明ら
かになってきた。microRNA(miRNA)は長さ20nt程度のncRNAであり、標的遺伝子の発
現を抑制することが知られている。我々はこれまでに、肺がんにおいて過剰発現ある
いは遺伝子増幅を示すmiRNAであるmiR-17-92クラスターを同定し、肺がんにおける
機能を明らかとしてきた。一方、長さ200nt以上からなるlong non-coding RNA(lncRNA)
はその存在が指摘され始めており、一部のlncRNAの機能が解明されつつあるが、その
大部分は未解明であり、さらにがんの進展において重要な働きをするlncRNAならびに
その作用機序はほとんど明らかになっていない。本研究では、miR-17-92クラスターに
お い て 中 心 的 な 働 き を す る miR-20a の 標 的 lncRNA を 探 索 し て TP53-inhibiting
lncRNA(TILR)を同定した。さらに、分子生物学的な検討から、肺がんにおいてTILRは
p53の翻訳とタンパク質の安定性を抑制するlncRNAであることを明らかにした。
【方法】
肺がん細胞株(A549, NCI-H460, SK-LC-5, SK-LC-7)は従来の手法に従い培養した。
siRNAあるいはオリゴヌクレオチドの導入にはリポフェクション法を用いた。試薬と
して、シクロヘキシミド(翻訳阻害剤)、MG132(プロテオソーム阻害剤)、マイトマイ
シンC(DNA合成阻害剤)を使用した。mRNAおよびmiRNAの発現はqRT-PCRを、タン
パク質の発現はウエスタンブロットを用いて検出した。網羅的遺伝子解析にはマイク
ロアレイ解析およびKEGGを用いたpathway解析を行った。TILR発現抑制により得られ
る表現型については、細胞増殖アッセイ、コロニー形成アッセイ、フローサイトメト
リーを用いて検討した。TILR結合タンパク質は、マススペクトロメトリー解析により
同定した。p53とその標的遺伝子のプロモーター領域との結合検出には、ChIP-qRT-PCR
を用い、p53 mRNAの翻訳の評価には、polysome fractionationアッセイを用いた。
【結果】
肺がん細胞株(A549, SK-LC-5, SK-LC-7)にmiR-20aを導入し、マイクロアレイ解析を
行 っ た と こ ろ 、 miR-20aに よ っ て 発 現 が 抑 制 さ れ る lncRNAと し て 、 TILRを 同 定 し た
(Fig. 1a, b)。肺がんにおけるTILRの機能について検討したところ、肺がん細胞株(A549,
NCI-H460)においてTILRの発現抑制によって、顕著な細胞増殖抑制(Fig. 1c)、ならび
に、p53タンパク質およびその下流遺伝子(p21, MDM2)の発現誘導(Fig. 1d)が認められ
た。また、TILRがp53の転写活性に与える影響を検討したところ、TILR発現抑制により
p53の下流遺伝子(p21, MDM2)のプロモーター領域への結合が誘導された(Fig. 2a)。さ
らに、TILRの発現抑制によって誘導されるアポトーシスは、TILRとp53の発現抑制によ
りレスキューされた(Fig. 2b)。以上の結果から、TILRはp53の発現を抑制して肺がん細
胞の生存を制御するlncRNAと考えられる。
次に、TILRによるp53の制御機序を詳細にするため、マススペクトロメトリーにより

-1-

TILR結合タンパク質の探索を行い、TILR結合タンパク質としてPCBP2を同定した(Fig.
3a)。PCBP2の発現を抑制するとTILRの発現抑制同様にp53の発現を誘導すること(Fig.
3a)、さらに、PCBP2の発現抑制により、p53が活性化することを見出した(Fig. 3b)。ま
た、RNA免疫沈降法により、PCBP2が内在的なp53 mRNAと結合することを明らかにし
た(Fig. 3d)。そこで、polysome fractionationアッセイを行ったところ、TILRおよびPCBP2
発現抑制時にp53 mRNAの翻訳が促されることが示された(Fig. 4a, b)。以上の結果か
ら、TILRとPCBP2はp53 mRNAと複合体を形成し、p53の翻訳を抑制していると考えら
れる。
さらに、p53の重要な制御機構として知られるユビキチン化によるタンパク質の安
定化にTILRが関与する可能性についても検討し、TILRおよびPCBP2の発現抑制はp53
のタンパク質を安定化し、ユビキチン化を抑制することを明らかにした(Fig. 5a, b)。
つまり、TILRとPCBP2は、ユビキチン-プロテアソーム経路を介したp53タンパク質の
安定性制御に関わる可能性が示唆される。そこで肺がん細胞株(A549, NCI-H460)に
TILR siRNAを導入しマイクロアレイ解析を行ったところ、TILR発現抑制時に発現抑制
される遺伝子群として、ファンコーニ貧血経路あるいはDNA修復経路といったDNA損
傷応答に関わる遺伝子群が同定された(Fig. 6a)。qRT-PCRを用いて確認したところ、
TILRおよびPCBP2の発現抑制により、ファンコーニ貧血経路関連遺伝子の発現が有意
に低下し(Fig. 6b)、一方TILRとp53を同時に発現抑制することにより回復されることを
明らかにした(Fig. 6c)。そして、DNA損傷誘発剤であるmitomycin Cによるp53発現誘
導が、TILRの発現抑制により増強することを明らかにした(Fig. 6d)。以上より、TILR
はファンコーニ貧血経路関連遺伝子の発現を制御することにより、p53タンパク質の
安定化を抑制していることが明らかとなった。
【考察】
本研究により新たに同定したTILRは、PCBP2と結合してp53の翻訳を抑制し、肺がん
の生存・増殖を制御することを明らかにした。さらに、TILRはDNA損傷応答において
中心的な働きをするファンコーニ貧血経路関連遺伝子の発現制御を通じ、p53タンパ
ク質の安定化にも寄与することを明らかにした(Fig. 6e)。
これまでに、p53によって制御されるlncRNAとしてNEAT1などが、p53の安定化を制
御するlncRNAとしてMeg3などが発見されており、p53とlncRNAの関連性は徐々に明ら
かになりつつある。今回我々が同定したTILRが、p53の上流にて機能しp53タンパク質
の翻訳を制御していることを明らかにした。興味深いことに、TILRはp53の翻訳抑制に
加えて、ファンコーニ貧血遺伝子群によるフィードバック経路を介した制御により、
p53タンパク質の安定性を適切に制御するlncRNAであることを見出した。このような
複雑な制御機構を持つTILRは特に注目に値すると考えられる。
今回得られた知見は、TILR が、p53 野生型の肺がんにおける治療標的となりうる可
能性を示唆するものであり、今後 TILR の発現抑制が新たな治療ストラテジーとして
開発されることが期待される。

-2-

【結論】
我々は、肺がんにおいて p53 を恒常的に抑制する lncRNA として TILR を新たに同定
した。さらに、TILR が PCBP2 と結合して、p53 mRNA の翻訳抑制ならびに、DNA 損
傷応答に関わるファンコーニ貧血経路関連遺伝子群の発現維持を介して働くことによ
り、肺がん細胞のアポトーシスを抑制することを明らかとした。

-3-

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