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大学・研究所にある論文を検索できる 「Effect of Seepage on Incipient Motion and Rheology of Cohesionless Soil」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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Effect of Seepage on Incipient Motion and Rheology of Cohesionless Soil

Jewel, Md. Arif Hossain 京都大学 DOI:10.14989/doctor.k23528

2021.09.24

概要

土質材料で構成されたダムやため池などの貯水を目的とした農業水利施設,また,堤防などの治水構造物にとって,土の侵食はその機能を損失させる脅威となる.例えば,豪雨時には越流侵食によるため池や堤防の決壊は頻繁に発生する.貯水施設の場合には,漏水は重要な問題となるが,堤体内部において進展するパイピング等の内部侵食が漏水の主な原因とされる.本研究は,このような侵食現象に対して,精度ある予測を行うことを目的とし,土と水の境界部で生じる非粘着性材料の力学挙動に関する実験研究を遂行したものである.

特に,上記土構造物の内部で進展する侵食を考える場合には,土と水の境界部において,土の表面を流れる水の作用だけでなく,土の内部を流れる浸透流の作用を考慮する必要がある.本論文では,浸透作用を受ける侵食現象に対して,その精度ある予測を実現するため,次の二つのアプローチがとられる.一つ目は,個別の粒子が流体に取り込まれる現象に焦点を当てるものであり,水理学の観点から土砂輸送現象について議論と考察がなされる.二つ目は,土質力学の観点から,土の表面近傍における変形やレオロジー(流動性)を調べるものである.実際の侵食現象では,一つ一つの土粒子が流体に取り込まれると同時に,土表面が流動的に変形する.一つ目のアプローチは前者,二つ目のアプローチは後者に対応する研究となる.本論文は全7章で構成され,同方面の既往研究に対する本研究の位置づけを明確にした上で,上述の二つのアプローチによる実験研究の成果を提示する.

第1章は緒言,第2章は既往研究レビューであり,第3章では,底面の一部が移動床である実験水路を利用し,砂粒子の初期移動を既定する限界掃流力に対する上向き浸透流の影響が調べられる.さらに,第4章及び第5章では,第3章で得た実験データをもとに,浸透流が掃流力と乱流特性に及ぼす影響を明らかにする.具体的に,第3章においては,移動床内部に上向きに流れる浸透流を作用させた状態で,移動床直上に表面流を作用させ,移動床の侵食を発生させる実験が実施される.移動床近傍のレーザーPIV(Particle Image Velocimetry)による流速計測を通して,移動床部に作用する掃流力を求め,浸透作用が移動床を構成する砂の限界掃流力に与える影響が調べられる.第4章では,第3章の考察に必要となった限界掃流力に関して,その算定方法に関する詳細な議論がなされる.一部を移動床として,土質材料の侵食速度を測定する上記のような実験装置は,一般的にErosion Function Apparatus(EFA)と呼ばれる.EFAを利用した実験では,どのように掃流力を算定するかは,実験データを整理する上で非常に重要な過程であるにもかかわらず,これまで詳しく調べられてこなかった経緯がある.第3章で示した実験では,移動床近傍の流速分布を,レーザーPIVによって高密度に計測することを実現しており,この実験データを用いて,第4章ではEFAにおける掃流力の算定方法について詳細な議論を展開する.第5章では,第4章で対象とした掃流力の算定方法だけでなく,浸透流が移動床近傍を流れる表面流の乱流特性に与える影響がまとめられる.

第6章では,土表層の変形と破壊を記述するため,土質力学の観点から低応力レベルでの砂のレオロジーが調べられる.土の変形や破壊を扱う従来の土質力学は,小さな応力レベルの土の挙動をその範疇とはしていない.そのため,侵食が発生する土と水の境界部のような非常に小さな応力レベルの領域においては,従来の土質力学が用いてきた方法とは異なる実験方法によって,土表層の挙動を調べる必要がある.本章では,粉体工学で発展した粉体のレオロジー測定装置を利用することで,非常に小さな応力レベルにおける砂の摩擦角や粘性係数の測定を可能にした研究成果が提示される.その中では,砂の表層を,せん断強度を有する粘性塑性体として捉え,これまで得ることが困難であった低応力レベルにおける非粘着性材料のせん断特性と粘性係数が計測される.最終章の第7章では,結論と今後の展望が言及される.本論文に記される研究成果を要約すると,以下の通りである.

第3章から第5章においては,EFAを用いて,砂地盤を流れる上向き浸透流が,砂粒子の初期移動,砂地盤上の掃流力と乱流特性に与える影響が調べられ,次のことを明らかにした.

1. 移動床(砂地盤)を上向きに流れる浸透流により,移動床の砂粒子には上向きの流体力が加わるとともに,そこに作用する掃流力(底面せん断応力)が減少する.これら二つの作用の結果として,砂粒子の限界掃流力は砂地盤内の動水勾配が大きくなるにつれて減少する傾向にある.しかし,限界動水勾配において限界掃流力がゼロとなると推定する理論と比較すると,動水勾配の増加による限界掃流力の減少の程度は小さいことを明らかにした.

2. EFAにおいて,高密度に流速計測を行うことで,流速分布だけでなく乱流特性を把握することが可能となる.これにより,いくつもの方法で掃流力を算定することができるが,壁法則(流速の対数分布則)とのカーブフィッティングから推定される掃流力は,乱流特性から推定される掃流力よりも少し大きく評価される傾向があることを明らかにした.また,異なる方法から得られる掃流力の値は異なるものの,既往実験の結果とは,大きく外れることなく,良好な一致を示した.

第6章においては,粉体工学分野で用いられる試験装置を土質力学分野の実験に適用することで,非常に小さな応力レベルの非粘着性材料の摩擦/粘性特性について以下の知見を得た.

3. 粉体工学分野で用いられる試験装置を利用することで,従来の土質試験では不可能であった1.0 kPa以下の拘束圧(垂直応力)での高精度なせん断試験の実施を可能にした.その結果は,応力レベルが小さいほど摩擦角が大きくなる傾向にあること,また10~20 kPa程度の拘束圧を加えたせん断試験から得らえる破壊線(破壊時の垂直応力とせん断応力との関係)は,100~300 kPa程度の垂直応力を加えた一面せん断試験結果と良好に一致することを示した.

4. 空気圧を加えることで,クイックサンドの状態を作り出し,砂材料のせん断強度を喪失させて,流動化した砂の粘性係数を測定することに成功した.また,測定された粘性係数は,空気圧の上昇により低下するが,十分な空気圧の作用下では,せん断刃の回転速度に依らず一定の値に収束することを示した.

以上のように,本論文は,非粘着性材料を対象とした高精度な実験を通して,水理学及び土質力学の両方の観点から侵食現象に関する力学的な議論と考察を展開するものである.水と土の境界で生じる侵食現象の力学的な取り扱いは容易ではなく,特に浸透作用を受ける場合,その予測は依然として困難である.本研究が提示する実験方法と実験結果は,土構造物や地盤で発生する侵食現象を予測するための新規かつ重要な知見を提供し,今後,同方面の研究において広く参照されることが期待される.

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