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大学・研究所にある論文を検索できる 「ヒトサイトメガロウイルス感染がヒト栄養膜細胞の細胞機能・分化に与える影響」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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ヒトサイトメガロウイルス感染がヒト栄養膜細胞の細胞機能・分化に与える影響

三村, 暢子 東京大学 DOI:10.15083/0002007052

2023.03.24

概要

[課程-2]
審査の結果の要旨
氏名 三村 暢子
本研究は、ヒト栄養膜細胞(CTB)の初代培養におけるヒトサイトメガロウイルス(HCMV)
感染モデルを作成し、HCMV 感染が CTB の分化や防御機構に与える影響を検討したものであ
り、下記の結果を得ている。
1. 細胞性栄養膜細胞(CTB)および合胞体性栄養膜細胞(STB)における HCMV の感染効
率の違いについての検討では、栄養膜細胞が合胞体化した状態でウイルス添加した場
合よりも単核の非融合状態でウイルス添加した場合の方が、感染細胞数が多く、未分
化状態にある CTB は細胞分化後の STB より感染効率が高いことが示された。
2. 免疫染色により HCMV が感染すると CTB は単核のままで融合が阻害されることを確認
し、STB に分化すると分泌される HCG も HCMV 感染により低下していたことより、HCMV
は形態学的にも細胞機能的にも融合を阻害することが示された。また胎盤の血管新生
因子である PlGF は HCMV の感染により低下し、抗血管新生因子の sFlt-1 は変化しな
かった。これらの現象は HCMV 感染による胎盤機能不全と関連することが示唆され
た。
3. HCMV 感染に伴う栄養膜細胞における遺伝子発現変化の検討では、細胞分化マーカー遺
伝子の分化に伴う発現変化に対して HCMV 感染がそれらを抑制することが確認され
た。また KEGG エンリッチメント解析により、HCMV 感染が「細胞周期」

「p53 シグナ
ル伝達」および「不飽和脂肪酸の生合成」に関与する遺伝子の発現を上昇させ、
「ケ
モカインシグナル伝達」

「TGF-βシグナル伝達」

「IL-17 シグナル伝達」に関与する
遺伝子の発現を低下させることが明らかとなった。CTB が STB に分化するに従い、細
胞周期と p53 シグナルは低下するが、HCMV 感染によって上昇していたことより、HCMV
感染は遺伝子発現も分化抑制の方向に修飾することが示唆された。宿主防御の中心的
役割を果たす IL-17 はケモカイン産生を増強することにより免疫細胞の動員に積極的
に関与しており、CTB に感染した HCMV は、IL-17 シグナル伝達とケモカイン作用を阻
害することにより、宿主細胞の免疫防御の回避している可能性が考えられた。
4. 栄養膜細胞のオートファジー機能と HCMV 感染に関する検討では、オートファジーのマ
ーカーである LC3BⅡの発現が HCMV 感染により低下しており、HCMV 感染により栄養膜
細胞のオートファジーが低下することが示唆された。
5. オートファジー誘導作用を有するトレハロースの投与が HCMV 感染 CTB に与える影響
を検討した結果、トレハロース投与では HCMV コピー数を減らすことはできなかった

が、トレハロース投与は HCMV 感染により低下していた LC3BⅡの発現を上昇させ、
PlGF の発現も上昇させた。トレハロースは HCMV のオートファジー抑制に拮抗し、血
管新生能を改善させることが示唆された。
以上、本論文はHCMV感染が栄養膜細胞の機能分化に伴う遺伝子発現変化を修飾して合胞体
化およびオートファジーの抑制をきたすことを明らかにし、トレハロースが抑制されてい
たオートファジー経路に作用しHCMV感染による胎盤機能不全を改善させる可能性を示し
た。本研究はこれまで明らかになっていないHCMV感染による胎盤機能不全の機序の解明及
び治療法の開発に重要な貢献をなすと考えられる。
よって本論文は博士( 医学 )の学位請求論文として合格と認められる。

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