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大学・研究所にある論文を検索できる 「Bioinformatics analysis of autophagy-lysosomal degradation in cardiac aging」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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Bioinformatics analysis of autophagy-lysosomal degradation in cardiac aging

上原, 敬尋 名古屋大学

2021.07.16

概要

【緒言】
 心臓老化においては心臓の拡張障害を来たすことが知られている。そのメカニズムにおいて、老化によるオートファジー異常が重要な役割を果たすのではないかと考えられている。オートファジーは、大きく分けて 2 つの過程から構成されていることが知られており、一つ目はオートファゴソームが形成される過程で、二つ目はオートファゴソームがリソソームと癒合する過程である。カロリー制限はオートファゴソーム形成を促進し、一方、老化はオートファゴソームとリソソームの癒合を障害する。しかしながら、これまでカロリー制限で引き起こされるオートファジーに関与する遺伝子発現と、老化で引き起こされるオートファジーに関与する遺伝子発現を、網羅的に比較した研究は行われていない。そこで本研究においては、DNA マイクロアレイを用いて、オートファジーが促進した状態であるカロリー制限を行ったマウスの心臓と、オートファジーが抑制された状態である高齢マウスの心臓とを比較して、心臓老化において、特異的に発現亢進もしくは発現低下するオートファジー関与遺伝子を評価することを目的とした。

【対象及び方法】
 公開データベースから DNA マイクロアレイのデータを入手し、バイオインフォマティクス解析を用いて検討を行った。National Center for Biotechnology Informationの Gene Expression Omnibus より、生後 3 カ月のマウスの心臓と生後 22 か月のマウスの心臓を比較したデータセットである GSE124483 を、若齢マウスと高齢マウスを比較したデータセットとして使用することとした。また、通常食で飼育したマウスの心臓と 60%カロリー制限食で飼育したマウスの心臓とを比較したデータセットである GSE75572 を、通常食マウスとカロリー制限マウスを比較したデータセットとして使用することとした。データベースより入手したデータセットは Transcriptome Analysis Console 4.0.2 を用いて解析し、続いて DAVID6.8 でも解析を行った。遺伝子解析結果の視覚化、抽出された遺伝子の関連性の解析、およびにクラスター解析を GeneMANIA およびSTRING version 11.0 をCytoscape 3.7.2 にplugin して行った。

【結果】
 ”Autophagy”という Gene Ontology term に関連付けられている遺伝子は、高齢マウス群で有意に発現亢進している傾向が分かったが(Figure 1a)、カロリー制限マウスでは、Autophagy に関連付けられている遺伝子群は通常食のマウスに比べて有意な発現亢進は認めなかった(Figure 1b)。次に、オートファジーに関与する遺伝子を解析した所、オートファゴソーム形成に重要な役割を果たす Atg5 やその関連遺伝子は、高齢マウスでもカロリー制限マウスでも発現亢進していることがわかった( Figure 1c,d)。多面的な評価のために、高齢マウスにおける発現亢進遺伝子のハブ遺伝子(より多くの遺伝子との関連がある遺伝子)とボトルネック遺伝子(遺伝子間での関係性を評価したとき、より高い頻度で最短経路となり得る遺伝子)を評価することとした。先ほどの、オートファゴソーム形成に関与する Atg5 およびにリソソームの膜タンパク質をコードする Lamp1 遺伝子は高齢マウスにおいてハブ遺伝子かつボトルネック遺伝子であることがわかった(Figure 1e,f)。
 次に、高齢マウスおよびにカロリー制限マウス、それぞれで発現抑制されている遺伝子の評価を行った。両者で共通の遺伝子は指摘できなかったが(Figure 2a)、両者に跨って関連がある遺伝子を除外した所、Snapin はカロリー制限マウスでは発現低下していなかったが、高齢マウスでは発現低下していることが分かった(Figure 2b)。高齢マウスにおける発現低下遺伝子において、ハブ遺伝子およびにボトルネック遺伝子を評価したところ、Snapin はハブ遺伝子かつボトルネック遺伝子であることがわかった(Figure 2c,d)。高齢マウスにおける発現低下遺伝子群での重要遺伝子を、さらに解析するため、クラスター解析を行ったところ、2 つのクラスターが高いスコアであることが分かった。Cluster 1 では Ilk と Sirt2 がハブ遺伝子かつボトルネック遺伝子であり(Figure 2e)、Cluster 2 では Trappc2l と Islr がハブ遺伝子かつボトルネック遺伝子であった(Figure 2f)。

【考察】
 本研究では、高齢マウスの心臓においては、オートファゴソーム形成に関与する遺伝子群の発現亢進を認め、一方、オートファゴソーム形成を抑制する遺伝子は発現低下を認めた(Figure 3a)。また、Snapin という神経細胞においてオートファゴソームとリソソームの癒合の一端を担う遺伝子は、高齢マウスの心臓においては発現低下していることが分かった。高齢マウスの心臓においては、オートファゴソーム形成を促進する遺伝子は発現低下しておらず、オートファゴソームとリソソームの癒合を促進する遺伝子が発現低下していることが示唆された(Figure 3b)。
 本研究によって、心臓老化における遺伝子発現を網羅的に解析することができ、特にオートファジーに関しては、心臓老化特異的な遺伝子発現に関して検討することができた。本研究は、将来の動物実験などへの有用な手掛かりとなる予備的な探索となりうると考えられた。

【結語】
 心臓老化においては、オートファゴソーム形成を促す遺伝子発現が阻害されているわけではなく、オートファゴソームとリソソームの癒合を制御する遺伝子の発現が低下している可能性が示唆された。今後、本研究を礎に、オートファゴソームとリソソームの癒合に関与する遺伝子に関する研究を進めていくことで、心臓老化のメカニズムのさらなる解明に寄与すると考えられた。

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