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書き出し

グラフェン集積構造を持つ炭素物質への磁場効果とそれによって誘導される新機能

浜崎, 亜富 信州大学

2020.03.05

概要

2版

様 式 C−19、F−19−1、Z−19 (共通)

科学研究費助成事業  研究成果報告書
平成 30 年

6 月 26 日現在

機関番号: 13601
研究種目: 若手研究(B)
研究期間: 2015 ∼ 2017
課題番号: 15K17808
研究課題名(和文)グラフェン集積構造を持つ炭素物質への磁場効果とそれによって誘導される新機能

研究課題名(英文)Magnetic field effect on carbon material as a graphene accumulation structure
and new function by these structure
研究代表者
浜崎 亜富(HAMASAKI, ATOM)
信州大学・学術研究院理学系・助教

研究者番号:60510120
交付決定額(研究期間全体):(直接経費)

3,300,000 円

研究成果の概要(和文): 炭素材料の調製において重要なメソフェーズは構造異方性を持つ球晶で、液晶のよ
うに磁気配向することが知られる。その発現の程度は、結晶子の大きさや密度に依存すると推測されるが、その
詳細は不明であった。そこで、アントラセン由来のメソフェーズピッチを用いて、磁気配向が起こる際の結晶子
の大きさや油分量を定量的に解析し、磁場効果に最適な環境について考察した。磁気配向による高配向性炭素物
質前駆体の合成には,原料の低分子量炭化水素を多く含有し,高結晶性のサイズの小さな結晶子数が多い条件が
必要であることが明らかになった。また、低分子量炭化水素を高温下で保持するため、高圧条件で調製すること
も有効であった。

研究成果の概要(英文):Mesophase, which is very important structure for carbon materials, is a
spherulite having anisotropic structure and is known appearance of magnetic oriented like a liquid
crystal. It is presumed that the extent of its expression depends on the size and density of the
crystallite, however, its details have never known. Using the mesophase pitch made from anthracene
as a raw material. We analyzed the size and oil content of crystallites on magnetic orientation
quantitatively, and examined the optimum environment for the magnetic field effect. For the
synthesis of highly oriented carbon material precursor by magnetic orientation, it is necessary to
contain a large amount of raw material low molecular weight hydrocarbons and a condition with high
crystalline size and small crystallite number. Since low molecular weight hydrocarbons volatilize at
high temperatures, a mechanism to hold them is also necessary, and high pressure conditions are
effective countermeasures against this.

研究分野: 物理化学
キーワード: 炭素物質 磁場中合成 磁気配向 メソフェーズ ピッチ 高圧合成

様 式 C−19、F−19−1、Z−19、CK−19(共通)
1.研究開始当初の背景

炭素物質は活性炭による分子吸着から,
航空・宇宙関係に用いられる炭素繊維によ
る先端の高強度部材まで用いられる,非常
に重要な材料物質である。多くの機能性炭
素材料では構造の違いが機能に直結し,そ
の構造は熱処理温度,雰囲気,原料などで
制御できる。
特に熱処理による制御の場合,
結晶子の状態が重要である。結晶子は黒鉛

のほか,特に調製過程のエネルギー面にお
いて磁場の優位性を示すことが可能と考え
る。これは通常何日もかけて熱で炭素六角
網面を異方的に並べ替えるのに対し,磁場
中で作った前駆体はすでに配向度が向上し
ているからである。以上のように,グラフ
ェン集積構造を持つ炭素物質全般において,
機能性と環境負荷の両面で優良な材料の創
生に磁場が関与できる可能性が示された。

化過程の中間体で,一辺が数ナノメーター
(nm)の炭素六角網面が積層した構造である。
多数の結晶子が異方的に配列した非黒鉛質
炭素は黒鉛前駆体と呼ばれ,これが 2000 K
以上で結合成長すると黒鉛に至る。等方的
なものは活性炭前駆体と呼ばれ,不融化処
理をすることで得られる。ピッチ系原料を
不融化処理せずに 800 K 前後に加熱する

2.研究の目的

本課題では,磁場効果がどのような環境
で,いかに起こるか.および どれだけ機能
を飛躍させられるか を明らかにし,
炭素物
質の構造制御の観点から磁場利用の可能性
を,活性炭系および黒鉛系の構造別に明確
にすることを目的とした。

と油分が溶融し,結晶子が油分中に懸濁し

3.研究の方法

て,直径数十マイクロメートル(μm) のメ
ソフェーズ小球体を形成する。ここへ磁場

(1) 磁場効果に最適な環境の探索
従来はメソフェーズピッチとして天然物

を印加すると,磁気配向により結晶子の配

の石炭ピッチ(CP)を使用していたが,本

向度が向上することを,研究代表者らは X

課題では炭素と水素からなるアントラセン

線回折 (XRD) 測定で明らかにした [1]。こ

由来のピッチ(AnP)を合成して使用し,

れを前駆体として薬品賦活して活性炭とす

炭化水素の量とグラフェン構造体の量の関

ると吸着量が増加することもわかった。[2]

係から,炭素化時の内部構造について評価

磁場効果は液相炭素化時に発現するメソフ

を行った。アントラセンピッチを無磁場条

ェーズにおいて,結晶子の構造異方性によ

件で調製した後,独自に開発した磁場中電

る大きな反磁性磁化率の異方性に起因して

気炉システムを用いてメソフェーズ温度で

発生すると推測されるが,μm オーダーの

ある 700∼800 K で磁場を印加しながら加

メソフェーズは活性炭のミクロ構造とはサ

熱処理した。得られた炭素化物は炭素化の

イズがかけ離れており,構造と機能の間の

進行具合を X 線回折測定(XRD)およびラ

因果関係は単純ではないようである。これ

マン散乱測定により評価した。ラマン散乱

までに,熱処理後の炭素物質を透過型電子

測定からは,含有する炭化水素量について

顕微鏡で観測したが,ドメイン構造の形跡

も情報を得た。磁気配向は偏光顕微鏡を用

は残らなかったので,機構の解明にはミク

いてセナルモン角度を求めて定量的に評価

ロとマクロの両面からの多角的,かつ熱処

し,炭化水素量との比較を行った。

理時の動的過程を含めた測定を行うことが
必要と考えている。
この磁場効果は黒鉛前駆体に発現したもの
であるので,調製環境が整えば黒鉛の物性

(2) 磁場中高圧下での炭素化物調製の実現
実験の過程で,メソフェーズの発現用
件として低分子量炭化水素の含有が重要で
あるものの,大気圧条件では揮発を抑制で

きずに磁気配向に最適な条件を実現できな

成した。広範囲にわたって磁気配向させる

かった。元々,合成時の酸化防止のため,

には,CP のように結晶子数が多く,結晶子

反応管にセラミックスを使用していたが,

の集合体であるドメインの融着を促進する

比較的肉厚であり耐圧も十分でない。そこ

条件が重要であることが明らかになった。

で,内管にアルミニウム(防食性)
,外管に
ステンレス(耐久性)を用いた二重管構造
に変更し,10 気圧の高圧条件で合成が行え
るようにした。なお,10 気圧は配管(コネ
クタ)などの耐圧性に伴う暫定的なもので
あり,より高い圧力にも対応できる。
(3) 炭素化物の電気伝導性の評価

(2) 磁気配向への高圧効果
10 気圧の加圧下炭素化では大気圧下で
の炭素化に比べ,メソフェーズの磁気配向
を示す白色の異方性領域が広い領域に現れ
た。ラマンスペクトル中の低分子量成分の
ピーク強度が向上したことから,圧力印加
による低分子量炭化水素の揮発の抑制がメ

2 枚のガラス板で石炭ピッチを挟み,磁

ソフェーズの広い範囲での成長を促し,広

場中で加熱した。10 mm の間隔に銅製電極

い領域でかつ大きな配向につながったと考

を導電性接着剤で取り付けて絶縁抵抗計で

えられる。また,XRD (002) ピーク強度に

抵抗率を求め,磁気配向の有無による抵抗

ついても,圧力の上昇に伴い向上したこと

率の違いを求めた。

から,結晶子の形成にも圧力が効果をもた
らしたことが示唆された。

4.研究成果

(3) 磁場中で得た炭素化物の電気伝導性
(1) 磁場効果に最適な環境について
高配向性の発現環境を AnP 合成条件か
ら検討した。
523 K で合成した AnP を 793 K
で炭素化すると,0 T では微粒モザイク状
を示した組織が,磁場下では磁場と平行に
配向した異方性組織に変化した。しかし磁
場中で炭素化した試料の配向性は AnP の
合成温度の上昇に伴い低下した。AnP のラ
マンスペクトルが示す 1250 cm1,
1440 cm1
のピーク強度と光学組織の合成温度に対す
る変化から,磁気配向には流動性を示す低
分子量炭化水素からなる成分が必要である
と示唆された。
高配向性炭素物質の合成には広い領域で
の配向が望ましい。523 K で合成した AnP
を 693 K 以上で磁場中炭素化すると異方性
領域は狭く,炭素化温度が高いと低分子成
分が揮発し欠陥となり異方性領域の拡張を

ガラス基盤間で炭素化した CP の偏光顕
微鏡像について,ゼロ磁場中で得た試料の
光学組織は微粒モザイク状を示した。
一方,
6 T での磁場中炭素化において,内部に細
かい発泡痕が存在し欠陥となり配向を乱す
領域が存在しているが,全体が磁場に対し
て平行方向への配向を示した。平板の存在
により低分子成分の揮発のためのルートが
制限され系内の流動性が増加,且つ鉛直方
向への運動の制限によりドメイン同士の合
体が促進されたため広範囲での配向が可能
となったと考えられる。調製したプレート
状炭素の抵抗率を測定したところ, 6 T で
得たプレート状炭素の抵抗率は 0 T と比較
して半分程度であり,結晶子の配向の乱れ
による π 電子の運動の阻害が磁気配向によ
り無くなったことが,抵抗率の低下につな
がったと思われる。炭素物質,特に黒鉛材

阻害することが示唆された。CP は XRD の

料の強磁場を用いた物性向上に更なる可能

解析から AnP より結晶子数が多く,CP を

性が示唆された。

炭素化するとより広範囲に異方性領域を形

<引用文献>

[1] Ayumi Sakaguchi, Atom Hamasaki*,
et.al , Chem. Lett., 2012, 41, pp. 1576-1578
[2] 浜崎亜富,坂口あゆみ,尾関寿美男,
表面,2013, 51, pp253-272
5.主な発表論文等
(研究代表者、研究分担者及び連携研究者に
は下線)
〔学会発表〕
(計 9 件)

① 藤尾一輝,浜崎亜富,高田和哉,尾関寿
美男,超伝導磁石を用いた高配向性炭素化
物質の合成環境の探索,
第 44 回炭素材料学
会年会,2017 年 12 月 6 日,桐生

⑧ Atom. HAMASAKI, Kazuki. FUJIO and
Sumio. ...

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