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大学・研究所にある論文を検索できる 「膜貫通ペプチドを用いたインスリン受容体と糖脂質の相互作用解析」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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膜貫通ペプチドを用いたインスリン受容体と糖脂質の相互作用解析

二村, 友香 大阪大学

2022.03.24

概要

インスリン受容体は血糖値降下シグナルの伝達に関与する一回膜貫通型のタンパク質で、その感受性の低下は、2型糖尿病の発症機序の一つであるインスリン抵抗性を引き起こす原因となる。特に脂肪細胞では、糖脂質の一種であるGM3の発現亢進がインスリン受容体のシグナル伝達を抑制することが報告されている。生化学的、細胞生物学的な検証により、GM3の構成糖であるシアル酸の負電荷と、インスリン受容体の膜貫通部位直上に存在する塩基性アミノ酸の正電荷との静電的相互作用がその要因であることが示唆されたが、細胞膜の不均一性から詳細な解析は困難だった。そこで筆者は蛍光標識したインスリン受容体の膜貫通ペプチドを合成し、これをリポソームに組み込むことで、単純化したモデル系を構築し相互作用解析を行った(図1)。

始めに蛍光標識したインスリン受容体の膜貫通ペプチド(NBD-IR-TM)の合成を行った。この膜貫通ペプチドはFmoc固相合成法では合成が難しく、イソペプチド法とBoc固相合成法を併用することで、初めて合成することができた。次に合成したNBD-IR-TMがLiquid-disordered (Ld)相、糖脂質がLiquid-ordered (Lo)相に主に局在するような相分離GUVを作製したところ、GM3を含む場合には、シアル酸をもたないGM3前駆体のラクトシルセラミド(LacCer)を含む場合と比べて、NBD-IR-TMのLo相への局在が有意に増加した。このことはGM3との相互作用によりNBD-IR-TMがLo相により多く引き込まれたことを示唆している。また、Ld相のみからなるMLV中のNBD-IR-TMの会合状態を測定することで、GM3との相互作用を解析した。その結果、GM3がNBD-IR-TMの会合を阻害した一方、LacCerはこれを阻害しなかった。さらに、GUV中でのNBD-IR-TMの流動性を解析することでGM3との相互作用を調べた。その結果、GUVの構成脂質と同等であったNBD-IR-TM の流動性は、GM3を含む脂質組成にした場合に有意に低下した。これはすなわち、GM3とNBD-IR-TMが相互作用し複合体を形成することで、NBD-IR-TMの動きが遅くなったことを示している(図2左)。

続いて膜貫通ペプチドと糖脂質の相互作用におけるペプチドの電荷の重要性について調べるため、電荷の有無が異なる2種類のモデルペプチドを合成した。これらのペプチドの会合状態がGM3の有無によって変化するか調べたところ、正電荷をもつペプチドの場合にはGM3によって会合が阻害された一方、電荷をもたないペプチドの場合にはGM3による会合状態の変化は見られなかった。これは、GM3が正電荷をもつペプチドとのみ相互作用し、ペプチドの会合を阻害したためであると考えられる。この結果は、膜貫通ペプチドとGM3の相互作用には、それぞれの分子が有する塩基性アミノ酸と酸性糖が重要であることを示している(図2右)。

以上の検証から筆者は、インスリン受容体の膜貫通ペプチドが持つ正電荷とGM3が持つ負電荷による静電的相互作用が、GM3の発現亢進によるインスリン抵抗性の発症に関与することを明らかにした。

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