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大学・研究所にある論文を検索できる 「Synthesis and Reactivities of Anionic M4M’4 Octanuclear Complexes (M = AgI, CuI; M’ = CoIII, RhIII, IrIII) with L-Cysteinate」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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Synthesis and Reactivities of Anionic M4M’4 Octanuclear Complexes (M = AgI, CuI; M’ = CoIII, RhIII, IrIII) with L-Cysteinate

福田, 陽祐 大阪大学

2021.03.24

概要

Title
Author(s)

Synthesis and Reactivities of Anionic M4M’4
Octanuclear Complexes (M = AgI, CuI; M’ =
CoIII, RhIII, IrIII) with L-Cysteinate
福田, 陽祐

Citation
Issue Date
oaire:version
URL

https://hdl.handle.net/11094/82021

rights

Note

やむを得ない事由があると学位審査研究科が承認し
たため、全文に代えてその内容の要約を公開してい
ます。全文のご利用をご希望の場合は、 href="https://www.library.osakau.ac.jp/thesis/#closed">大阪大学の博士論文につ
いてをご参照ください。

Osaka University Knowledge Archive : OUKA
https://ir.library.osaka-u.ac.jp/
Osaka University

様式3













( 福 田





陽 祐 )

Synthesis and Reactivities of Anionic M4M’4 Octanuclear Complexes
論文題名

(M = AgI, CuI; M’ = CoIII, RhIII, IrIII) with L-Cysteinate
(L-システインをもつアニオン性M4M’4八核錯体
(M = AgI, CuI; M’ = CoIII, RhIII, IrIII)の合成と反応性)

論文内容の要旨
四面体状に金属が配列した四核{M4}n+クラスターは、最も小さなサイズをもつ金属クラスターの一種であり、発
光・触媒・配位子置換反応などを示すことが報告されている。これまで合成されている四核{M4}n+クラスターは、
例外なく、金属-金属結合あるいは架橋原子をもつ剛直な構造であり、イオン包接などへの応用は困難であった。
本研究では、3つのL-システイン(L-H2cys)をもつ錯体配位子、ΔLLL-fac(S)-[M’(L-cys)3]3–(M’ = CoIII, RhIII,

IrIII)、を用いて、d10-d10相互作用で保持された非架橋型四面体型{AgI4}4+および{CuI4}4+クラスターを合成し、そ
の性質を明らかにすることを目的とした。
第2章では、{Ag4}4+クラスターを含むAgI4RhIII4八核錯体を合成し、これらの反応性を調査した。ΔLLL-[Rh(Lcys)3]3–とAgIイオンを水中でモル比1:1で反応させたところ、500 nm付近に強い吸収帯をもつAgI4RhIII4八核錯体
([Ag4{Rh(L-cys)3}4]8–; [1]8–)が得られた。単結晶X線解析により、この錯体は、4つのRhIII錯体配位子に囲まれた
{AgI4}4+クラスターを有する構造であることを明らかにした。[Rh(aet)3]を用いた同様の反応では、{AgI4}4+クラスタ
ーを含まないAgI5RhIII4九核錯体が得られたことから、ホモキラルな錯体配位子を用いることが四面体型銀クラスタ
ーの形成に重要であると考えた。続いて、錯体[1]8–にNaBH4を反応させたところ、500 nm付近の吸収帯が消失し、
異なるAgI4RhIII4錯体([2]9–)が得られた。1H NMRスペクトル測定の結果、ヒドリドイオン由来のシグナルが五重五重線として観測された。このことから、錯体[2]9–は、{AgI4}4+四面体コアの中心に1つのヒドリドイオンが包接
されたヒドリド錯体[Ag4H{Rh(L-cys)3}4]9–であると同定した。通常、ヒドリド錯体は、水中の水素イオンとの反応に
より容易に分解するが、錯体[2]9–は、水溶液中での高い安定性を示した。DFT計算の結果、錯体[1]8–のLUMOに
は、{AgI4}4+クラスターに由来する超原子S軌道が形成されおり、この軌道の存在が、錯体[1]8–の特徴的な吸収帯と
ヒドリド錯体[2]9–の安定化の原因であることが示された。
第3章では、{Cu4}4+クラスターを含むCuI4RhIII4八核錯体を合成し、これらの反応性を調査した。嫌気下におい
て、ΔLLL-[Rh(L-cys)3]3–とCuIイオンをモル比1:1で反応させると、CuI4RhIII4八核錯体([Cu4{Rh(L-cys)3}4]8–; [3]8–)が
得られた。この錯体は、錯体[1]8–と等構造であり、{CuI4}4+クラスターが中心に存在していることが単結晶X線構造
解析から明らかとなった。錯体[3]8–とNaBH4の反応では、同様のヒドリドイオン挿入反応が起こり、ヒドリド
CuI4RhIII4錯体([Cu4H{Rh(L-cys)3}4]9–; [4]9–)が得られた。{AgI4}4+クラスターを含む[1]8–と{CuI4}4+クラスターを含む
[3]8–の酸素やスルフィドイオンに対する反応性には、大きな違いが見られた。錯体3を含む水溶液を空気に暴露す
ると、混合原子価のオキソCuI2CuII2RhIII4錯体([Cu4O{Rh(L-cys)3}4]8–; [5]8–)が形成された。中心の酸化物イオン
は、水分子由来であると推定した。この錯体は、近赤外領域に混合原子価状態に由来する吸収帯を示し、また、強
い反強磁性相互作用が観測された。さらに、[3]8–に硫化物イオンを反応させたところ、スルフィドCuI6RhIII4錯体
([Cu6S{Rh(L-cys)3}4]8–; [6]8–)へと変化した。この反応において、コアに含まれる銅イオンが増加し、八面体型の
{CuI6S}4+コアが形成されていた。これは、銅-銅間の距離を適切に保つため、スルフィドイオン周りの結合角が調
整されるように2つの銅イオンがコア中に追加されたと考えた。

第4章では、錯体配位子の中心金属の影響を調べるため、IrIIIおよびCoIII錯体配位子を用いて、AgIイオンとの反応
を行った。ΔLLL-[M’(L-cys)3]3–(M’ = IrIII, CoIII)とAgIをモル比1:1で反応させると、錯体[1]8-と同形のAgI4M’III4八核
錯体([Ag4{Ir(L-cys)3}4]8–; [7]8–、[Ag4{Co(L-cys)3}4]8–; [8]8–)が得られた。DFT計算により、これらの錯体において
も、四面体{AgI4}4+コアのLUMOに超原子S軌道が形成されることを確認した。IrIII錯体[7]8–の化学反応性は、RhIII錯
体[1]8–とよく似ているが、CoIII錯体[8]8–はわずかな銀イオンの当量比の違いに起因して、錯体配位子の立体配置がΔ
体からΛ体へと異性化した。各種分析の結果、異性化した錯体は、錯体8のジアステレオマー(Λ4-[Ag4{Co(Lcys)3}4]8–; [9]8–)であると決定した。四面体コア上での段階的なCo錯体配位子の脱着が、この異性化反応を促進し
たものと考えられる。さらに、錯体[9]8–に銀イオンを添加すると、5核錯体((ΛLLL)2-[AgI3{Co(L-cys)3}2]3–)に変換
された。この錯体は、異性化反応では合成されず、錯体8を経由する構造変換反応により初めて単離に成功した。
以上、本研究では、トリスL-システイナト八面体型M’錯体配位子(fac-[M’(L-cys)3]3–)を用いて、錯体配位子に
保護された非架橋型{MI4}4+コアを含む一連の親水性M4M’4クラスターを、水中で合成することに成功した。得られ
た{MI4}4+クラスターは、 (i) 通常は水中で不安定とされる{AgI4H}3+や{CuI2CuII2O}4+などの化学種を安定化したほ
か、 (ii) 核数における動的な変換(5核M3M’2と8核M4M’4)や金属と錯体配位子の比により制御されるキラリティ
反転などの反応性を示した。これらの発見は、錯体配位子の利用が、四面体型金属クラスターの設計手法として有
効であることを示し、金属クラスターの性質理解にさらなる見識を与えるものである。

様式 7

論文審査の結果の要旨及び担当者






福 田 陽 祐

(職)

論文審査担当者







主 査

教授

今野



副 査

教授

石川

直人

副 査

教授

舩橋

靖博

論文審査の結果の要旨
本 論 文 は 、 錯 体 配 位 子 で 保 護 さ れ た d 10 -d 10 相 互 作 用 を も つ 非 架 橋 型 四 面 体 金 属 ク ラ ス タ ー
({Ag I 4} 4+ および{Cu I 4} 4+ )を新規に合成し、それらの構造と性質についてとりまとめたものであ
る。これらのクラスターは、L-システインをもつホモキラルな八面体型チオラト錯体を錯体配位
子として用いることにより得られており、ホモキラルなチオラト錯体配位子の金属クラスター
形成への重要性を明らかにしている。本研究では、金属クラスターに対する NaBH4 との反応性に
ついても調査しており、クラスター中の金属の還元ではなく、クラスターへのヒドリドイオン
の取り込みが起こることを見出している。同時に、ヒドリド包接クラスターを NMR により同定
するとともに、その特異な安定性や吸収スペクトル挙動を DFT 計算により解明している。また、
銅(I)イオンをもつクラスターについては、ヒドリドイオンの取り込みのみならず、金属酸化を
伴った酸化物イオンの取り込み、およびクラスターの核数変化を伴った硫化物イオンの取り込
みなど、いくつかの新たな現象を見出している。以上、本研究では、小数核金属クラスターの新
規合成を水中で達成するとともに、水中で不安定とされるイオン包接金属クラスターの安定化、
ならびに、 イオン包接に伴うクラスター金属の酸化やクラスター核数の変換を達成し、金属ク
ラスターの設計手法と性質理解に重要な見識を与えた。よって、本論文は博士(理学)の学位論
文として十分価値あるものと認める。

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