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大学・研究所にある論文を検索できる 「Identification of potential pathogenic viruses in patients with acute myocarditis using next‐generation sequencing」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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Identification of potential pathogenic viruses in patients with acute myocarditis using next‐generation sequencing

Takeuchi, Suguru 武内, 俊 名古屋大学

2020.04.02

概要

【緒言】
急性心筋炎は、ウイルスや細菌などの病原体が心筋に感染することで発症する心筋の炎症性疾患である。臨床病型は広範囲にわたるが、心機能障害により、しばしば致死的な経過をたどる。ウイルス感染は心筋炎の最も一般的な病因とされ、エンテロウイルス、なかでもコクサッキーウイルス B 群は最も高頻度とされてきた。近年は、心筋生検標本からのアデノウイルス検出の報告が増加しており、さらに、ヒトパルボウイルス B19(human parvovirus B19; B19V)をはじめとする他のウイルスや細菌も心筋炎の病原体として報告されている。

一方で、急性心筋炎における起因病原体の同定は依然として困難であることが多い。急性心筋炎の診断におけるゴールドスタンダードは心内膜生検であるが、手技が煩雑 で侵襲性が高いことから、小児では施行されないことも多い。心筋組織をはじめとす る臨床検体からのウイルス分離は起因ウイルスの同定に寄与するが、感度が不十分で 結果を得るのに長期間を要する。ポリメラーゼ連鎖反応(polymerase chain reaction, PCR)は、ウイルスゲノムの検出において現時点で最も高感度な手法と考えられるが、候補 として挙げたウイルス以外の検出は出来ない。

近年、次世代シークエンス(next-generation sequencing, NGS)を応用することで病原微生物の網羅的な検出が可能となり、臨床応用が期待されている。本研究では、急性心筋炎患者の血清からの原因ウイルス検出における NGS の有用性について検討した。

【対象及び方法】
急性心筋炎で入院した小児 12 例、成人 5 例の計 17 例を対象とし、治療開始前の急性期血清検体を用いて NGS による解析を行った。急性心筋炎の診断及び臨床分類は、日本循環器学会のガイドラインに準じて行われた。患者背景を表 1 に示す。

治療開始前に採取した急性期の血清 140μl から DNA 及び RNA を QIAamp UCP Pathogen Mini Kit(Illumina)を用いて抽出し、RNA に関しては核酸抽出後に TURBO DNA-free RNA Kit を用いて DNA の除去を行なった。抽出した DNA から Nextera XT DNASample Preparation Kit(Illumina)を用いて DNA ライブラリを作成し、DNase 処理後の RNA から ScriptSeq v2 RNA-Seq Library Preparation Kit(Illumina)を用いて RNAライブラリを作成し、HiSeq 2500(Illumina)を用いてシークエンスを行った。

得られたシークエンスリードから病原体由来のリードを同定するために、国立感染症研究所より公開されているメタゲノム解析パイプラインである MePIC v2.0 を使用した。このパイプラインでは、まず元のシークエンスデータからアダプター配列及び低クオリティ塩基配列が除去され、次にヒト由来配列が除去される。そして、残ったリードに対して、MEGABLAST program を用いて NCBI nt のデータベースに登録されている既知のヌクレオチド配列に対して相同性検索が行われる。最終的に、MEGAN6 (University of Tubingen) を用いて解析結果の taxonomy 分類を行い、CLC Genomic Workbench 9.5 (CLC bio; Qiagen) を用いて検出した微生物についてリファレンス配列とのアライメントを行い検証した。

【結果】
各検体に対して DNA シークエンスと RNA シークエンスの両方によって、病原体由来リードの検出を行った。シークエンスの結果、各 DNA ライブラリに対して平均 20,062,443 リード、各 RNA ライブラリに対して平均 19,506,189 リードのシークエンスリードが得られた。解析の結果、急性心筋炎患者 17 例中 7 例(41%)でウイルス由来リードが検出された。シークエンス結果及び検出したウイルスの結果を表 2 に示す。

患者 16 からは、RNA シークエンスで、ヒトペギウイルス(human pegivirus; HPgV) 由来リードが 1918 リードと多数検出された(図 1)。さらに、リードマッピングにより、HPgV のリファレンス配列の大部分をカバーしていることが確認でき、有意と判断した(図 2)。患者 3 及び 16 から DNA シークエンスで EB ウイルス(Epstein-Barr virus; EBV)由来リードを検出した。しかし、リード数が少数であった為、検体中の EBV ゲノムの存在をリアルタイム PCR で確認した。その結果、患者 16 では 13,963 IU/ml の EBV の DNA が検出されたが、患者 3 では検出感度未満であった。患者 2 からは RNA シークエンスで B19V が 4 リード検出された。同様にリアルタイム PCR で B19V の DNA の存在を調べたところ、26,260 コピー/ml 検出された。さらに、心筋組織から定性 PCR で B19V が検出された。患者 3 からは RS ウイルス(respiratory syncytial virus; RSV)由来リードを 10 リード検出したが、鼻咽頭拭い液の抗原検査でも RSV が検出され一致していた。さらに、アストロウイルスが 2 例から、ヒトヘルペスウイルス 8(human herpesvirus 8)、ヒト免疫不全ウイルス 1 型(human immunodeficiency virus type 1)、トルクテノウイルス(Torque teno virus; TTV)、ラッカセイ矮化ウイルス(peanut shunt virus)がそれぞれ 1 例から少数検出された。このうち、患者 17 から DNA シークエンスで検出された TTV 由来リードは 1 リードだったが、定性 PCR で TTV の DNA の存在を確認した。

【考察】
本研究は、小児および成人の急性心筋炎の病原体を NGS により検索した初めての研究である。NGS を用いた病原体検出法は、検体中に存在する微生物由来ゲノムの網羅的な検出が可能となる。また、凍結保存検体が利用可能で、ウイルス分離より煩雑性が低い。

本研究では、急性心筋炎患者 17 例中 7 例の血清からウイルス由来リードが検出された。さらに、それぞれ 1 例ずつから、PCR で EBV、B19V、TTV の DNA の存在を、鼻咽頭拭い液から RSV 抗原の存在を確認し、NGS で検出したこれらのウイルス由来リードは有意と考えられた。一方で、有意な細菌及び真菌由来リードは検出されなかった。

心内膜生検試料からの直接のウイルスゲノム検出は有用だが、特に小児における生検の施行率は低く、本邦における小児心筋炎のサーベイランス調査では、生検施行例は 221 例中 38 例(19.2%)であった。一方で、急性心筋炎患者において、理論的にはウイルス核酸は活発に感染した心筋組織から放出され、血清試料中で検出可能とされる。しかし、過去の報告における急性心筋炎患者での心筋組織からのウイルスゲノムの検出率(10-38%)と比較すると、今回の血清検体を用いた NGS 解析におけるウイルスの検出率は十分ではないと考えられた。この理由として、心筋炎における血中からの PCR によるウイルスゲノムの検出率は僅か 3%との報告もあり、NGS で検出するには血清中のウイルス核酸量が不十分である可能性がある。また、血清中のホストゲノムの存在により、シークエンスリードの大半がヒト由来となってしまい、ウイルス由来の核酸を十分に検出出来ていない可能性が考えられた。NGS を感染症診断に臨床応用していく上で、より効率的な微生物ゲノムの検出法の確立が、今後の重要な課題である。

【結語】
本研究により、血清からの急性心筋炎の原因ウイルスの検出において、NGS が有用である可能性を示した。一方で、多くの例で検出されたウイルス由来リード数は少なく、検出したウイルスと疾患との関連についてはさらなる検討を要する。NGS による網羅的な病原体検索法は、今後急性心筋炎の病因解明に繋がる可能性がある。

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