リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

リケラボ 全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索するならリケラボ論文検索大学・研究所にある論文を検索できる

リケラボ 全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索するならリケラボ論文検索大学・研究所にある論文を検索できる

大学・研究所にある論文を検索できる 「Morphological Studies on the Reproductive Organs in the Sunda Porcupine (Hystrix javanica)」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

コピーが完了しました

URLをコピーしました

論文の公開元へ論文の公開元へ
書き出し

Morphological Studies on the Reproductive Organs in the Sunda Porcupine (Hystrix javanica)

ANNI NURLIANI 岐阜大学

2020.09.18

概要

ジャワヤマアラシは,インドネシアの固有種であり,その個体数の減少からインドネシアの国内法では保護動物に位置付けられている。そのため,本種の保護,増殖が重要視されているが,その繁殖学的特性はほとんど理解されておらず,また,それを理解する上で必要不可欠な生殖器の形態学的特徴に関してはほとんど何も知られていない。そのため,ジャワヤマアラシの生殖器に関する基礎的な形態学的情報を入手するために本研究を実施した。

本研究では,ジャワヤマアラシの成体を雌雄各 6 頭用いた。これらの個体は,インドネシア,中部ジャワ,タワンマグで捕獲された。雄の個体では,精巣,精巣上体,精管,副生殖腺及び陰茎の解析を行ない,雌の個体では非妊娠個体 4 頭においては卵巣,卵管,子宮及び膣の解析を,そして妊娠個体 2 頭においては胎盤と胎子の外貌の解析を行なった。これらの検体に対して,解剖学的,組織学的,組織化学的,そして免疫組織化学的検索を行った。

第 1 章では,精巣,精巣上体そして精管の形態学的検索を行った。ジャワヤマアラシの 精子は,齧歯類が一般的に持つ頭部先端の鈎状構造を欠いていた。精子頭部の正常な形態 学的情報は体外受精における精子の選別に重要である。免疫組織化学的検索において,ジ ャワヤマアラシの精巣ではステロイド産生急性調節タンパク質(StAR)と一連のステロイ ド合成酵素の発現がライディッヒ細胞にのみ確認された。これらの結果から,アンドロジ ェンとエストロジェンがライディッヒ細胞によってのみ産生されていることが示唆された。また,アンドロジェンレセプター(AR)の陽性反応はライディッヒ細胞,セルトリ細胞そ して筋様細胞に認められたが,生殖細胞には確認できなかった。さらに,エストロジェンレセプターα と β(ERα, ERβ)はともに生殖細胞とライディッヒ細胞に認められ,ERαはセルトリ細胞にも確認された。以上の結果から,ライディッヒ細胞によって産生されたアンドロジェンやエストロジェンがそれぞれのレセプターを介して精巣内の細胞に局所的に作用していることが示唆された。

精巣上体管の検索では,上皮細胞に不動毛とアポクリン突起が確認されたことから,精巣上体管が高い分泌と吸収能を持っていることが推測された。また,組織化学的検索では,精巣上体管の上皮細胞が漏出分泌によって糖タンパク質や糖脂質を分泌している可能性が示唆された。さらに,精管上皮細胞において,3β-ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼ(3β-HSD)の免疫陽性反応が認められたことから,精管上皮からのアンドロジェンやその代謝産物が,精子の成熟に関与している可能性が示唆された。

第 2 章では,雄ジャワヤマアラシの副生殖腺の形態学的検索と同定を行った。解剖学的及び組織学的検索によって,雄のジャワヤマアラシには,精嚢腺,前立腺,尿道球腺そして凝固腺の 4 つの副生殖腺を確認することができた。尿道球腺にはアルシアンブルー(AB)と過ヨウ素酸シッフ(PAS)の強い染色性が認められ,また,AR 陽性反応が全ての副生殖腺の腺上皮細胞に認められた。この AR の局在は,全ての副生殖腺がアンドロジェンの調節を受けていることを示している。

第 3 章では,雄の外部生殖器である陰茎の形態学的検索を行った。ジャワヤマアラシの陰茎には,角質化した多くの陰茎棘をもつ亀頭と sacculus urethralis とよばれる尿道下部の嚢状構造が認められた。さらに,これらの上皮細胞に AR の発現が認められたことから,アンドロジェンが角質化した陰茎棘の維持に関与している可能性が示唆された。また,この陰茎棘の発達には部位的な違いが認められた。さらに,ジャワヤマアラシの陰茎には,先端部を軟骨で覆われた陰茎骨が認められた。

第 4 章では,雌性生殖器と胎盤,そして胎子の形態学的解析を行った。子宮の形態は,子宮頚管が中隔によって完全に分離されず 2 つの内子宮口と 1 つの外子宮口が生じる特殊 な形態の双角子宮を示した。また,ジャワヤマアラシには長い膣が認められた。大きな卵胞を持つ卵胞期では,卵管や子宮の管腔は拡張しており,膣上皮には角質層が発達していた。一方,黄体が認められた黄体期では卵管や子宮の管腔は狭く,膣上皮には角質層は確認されなかった。この膣上皮の情報は,発情期の雌個体の選別に有用であると考えられる。卵巣の免疫組織化学的検索では,コレステロール側鎖切断酵素(P450scc)の発現が内卵胞膜細胞に,そしてアロマターゼの発現が顆粒層細胞に認められた。この結果から,内卵胞膜でアンドロジェンが,顆粒層細胞でエストロジェンが産生されていることが示唆された。胎盤の形態は,肉眼的には盤状胎盤で,組織学的には血絨毛膜胎盤であった。胎盤の基底層には,海綿状栄養膜細胞,栄養膜巨細胞及びグリコーゲン細胞が認められ,免疫組織化学的検索では,栄養膜巨細胞に P450scc とアロマターゼの発現が,そして脱落膜細胞にはアロマターゼの発現が認められた。この結果は,エストロジェンが栄養膜巨細胞と脱落膜細胞によって産生されていることを示している。また,胎子の体表には既にとげ構造が存在していることが確認された。

以上,本研究によってジャワヤマアラシの生殖器における様々な形態学的新知見が得られた。得られた生殖器の形態学的基礎データは,本種の生殖補助医療の発展や捕獲個体の繁殖管理といった保全事業の一役を担うものと考えられる。

全国の大学の
卒論・修論・学位論文

一発検索!

この論文の関連論文を見る