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大学・研究所にある論文を検索できる 「集中治療室における急性腎障害の発⽣率と死亡率の臨床背景・施設間⽐較に関する研究」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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集中治療室における急性腎障害の発⽣率と死亡率の臨床背景・施設間⽐較に関する研究

小丸, 陽平 東京大学 DOI:10.15083/0002007005

2023.03.24

概要

[課程-2]
審査の結果の要旨
氏名

小丸

陽平

本研究は、国際基準に準拠して診断された急性腎障害(acute kidney injury, 以下
AKI)の発生率と死亡率に着目し、特に集中治療室(intensive care unit, 以下 ICU)に
おける AKI 診断の意義について系統的レビュー、ならびに多施設後方視的研究を実施し
て、下記の結果を得ている。
1. 2004 年から 2018 年にかけて国際誌に報告された文献の系統的レビューにおいては、
AKI の発生率と死亡率を報告した 203 コホートが解析対象となった。既報の通り、
AKI の発生率と死亡率の報告結果は非常に広い範囲に分布しており一定しなかった。
各コホートの AKI 発生率と死亡率の関連を検討したところ、コホート内の AKI 発生
率が高くなると AKI 患者の死亡率は高くなる一方、ICU コホート(76 コホート)に
限れば AKI の発生率が高くなると AKI 患者の死亡率が低下する有意な関連が示され
た。次に、「AKI に罹患したことで上昇した死亡率の割合」を示す「AKI の死亡に対
する寄与危険割合」がコホートごとに計算された。その結果、全体コホート及び ICU
コホートのいずれにおいても、コホートの AKI 発生率が高くなるにしたがって AKI
の死亡に対する寄与危険割合は低下していた。
2. 後半の解析では、日本国内 21 の総合病院に 2012 年から 2014 年までに入院した ICU
患者 25,811 名分のデータを解析する多施設後方視的研究が実施された。前項 1(系統
的レビュー)と同様の解析を実施したところ、AKI の発生率と死亡率は世界のコホー
トと比較して狭い範囲に分布していた。コホート単位の AKI 発生率と AKI 患者の死
亡率の間に有意な関係はなかったが、AKI 発生率の上昇に伴って AKI の死亡に対する
寄与危険割合が低下する関係性は、国内コホートでも同様に観察された。この AKI 発
生率と AKI の寄与危険割合の負の関連は、65 歳以上の高齢者、非手術関連入室、敗血
症、糖尿病合併患者のサブグループ解析において有意であった一方、若年者等のコホ
ートでは有意ではなく、患者背景や合併症による違いが示唆された。
3. 前項 2 の患者データを用いて、ICU 死亡に関連する因子の解析が機械学習的手法とベ
イズ統計的手法を用いて実施された。決定木解析の応用である勾配ブースティングツ
リー法では、患者背景、既往症、ICU 入室経路、入室時の状態、AKI ステージ分類を
含めた 15 の説明変数により ICU 死亡が予測され、従来の多変量ロジスティック回帰

分析を上回る予測性能が示された。また、同じ説明変数群を用いたベイジアンネット
ワーク解析では日本の ICU における死亡に、①AKI の重症度(ステージ)と②ICU
入室時の人工呼吸器の使用、そして③ICU 入室時の昇圧・強心薬の使用、の 3 項目が
直接の影響を与えていることが示唆された。最後に、21 施設のそれぞれに入院するこ
とが AKI 患者の ICU 死亡に影響する作用が「施設因子」として定量的に算出され
た。AKI の重症度、ICU 入室時の人工呼吸器および昇圧・強心薬の使用、で調整した
マルコフ連鎖モンテカルロ法に基づくシミュレーションでは、最大オッズ比で 3.12 の
施設因子による死亡率の差があることが示唆された。
以上、本論文は AKI の発生率と死亡率の関連性という新たな着眼点に基づき、AKI の発
生率が高く、医療者が AKI に頻繁に遭遇する環境が、AKI 診療の質向上につながる可能
性を明らかにした。また、集中治療室の環境下において、AKI の発生が患者予後に与える
影響が定量的・定性的に複数の解析手法によって検証された。本研究において提唱された
AKI の死亡に対する寄与危険割合や死亡における施設因子といった項目は、これまで確立
されていなかった AKI 診療の質の評価とその向上を目指した取組みにおける臨床指標とし
て重要な貢献をなすと考えられる。また、本研究で実施された機械学習やベイズ統計学に
基づいた解析法は、重症患者で特に重視される多臓器連関における AKI の位置づけを明ら
かにすることにも重要な貢献をなすと考えられる。
よって本論文は博士( 医学 )の学位請求論文として合格と認められる。

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