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大学・研究所にある論文を検索できる 「シリカ誘導肺線維症モデルマウスを用いた間質マクロファージの病態生理学的役割の解明」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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シリカ誘導肺線維症モデルマウスを用いた間質マクロファージの病態生理学的役割の解明

小川 達郎 Tatsuro Ogawa 東京理科大学 DOI:info:doi/10.20604/00003723

2022.06.17

概要

肺線維症とは、肺における線維芽細胞活性化と過剰な細胞外マトリックス(extracellularmatrix; ECM)の産生が生じ、肺胞構造の破壊・肺胞壁の肥厚が引き起こされ、最終的に呼吸不全に至る疾病である。発症のプロセスには様々な細胞の関与が報告されているが、特にマクロファージはヒト肺線維症患者検体およびマウスモデルにおける知見から肺線維症の調節役として注目されている。肺組織中のマクロファージは、その局在から肺胞マクロファージ(alveolarmacrophage; AM)と間質性マクロファージ(interstitialmacrophage; IM)に分類される。加えて、炎症や線維化時には、肺組織に単球由来マクロファージが出現し、非常にヘテロなマクロファージ集団が形成される。したがって、各マクロファージ集団の線維化における役割の解明が肺線維症研究の焦点の一つとなっている。これらマクロファージ集団の中でも、間質マクロファージは気管支肺胞洗浄液(broncho alveolar lavage fluid;BALF)による回収ができないことや特異的なマーカーが存在しないことから研究が肺胞マクロファージや単球由来マクロファージと比較して進んでいない。近年のシングルセルRNAシーケンシング(single-cell RNA-sequencing; sc RNA-seq)解析を中心とした技術的発展に伴い、マウス肺の間質マクロファージはLyve1hiMHCIIloIMとLyve1loMHCIIhiIMに分類できることが報告されたが、これらマクロファージの肺線維症における動態や役割は未だに不明である。そこで、本研究では肺線維症モデルマウスにおけるこれらの間質マクロファージの病態生理学的役割の解明を目的とした。まず、シリカ誘導性肺線維症モデルマウスの各タイムポイントにおける肺組織中の細胞をscRNA-seq解析すると、間質マクロファージの中でもLyve1loMHCIIhiIMが線維化に伴い細胞数が増加し、PdgfやIgf1といった線維芽細胞活性化因子を高発現することを見出した。次に、増加した間質マクロファージの由来を解析した。その結果、古典的単球の浸潤に必須のケモカイン受容体CCR2を欠損させたマウスでも同様にLyve1loMHCIIhiIMの増加が生じたこと、さらに増殖期の細胞をラベリング可能なBrdUが陽性であるLyve1loMHCIIhiIMが線維化に伴い増加することから組織内で自己複製することが示唆された。一方で、並体結合モデルを用いた結果から一部の増加した間質マクロファージはCCR2非依存的な血中の前駆体由来であると考えられた。scRNA-seqデータより間質マクロファージの新規マーカー分子として補体分子C1qを見出し、局在および役割の解明が可能なC1qa遺伝子3‘末端終止コドン直上にジフテリア毒素受容体(diphtheriatoxinreceptor;DTR)-GFP-Creをノックインしたマウスを作製した。このマウスにシリカ投与して線維化を誘導し、GFP陽性細胞の局在を解析すると線維化結節周囲に集積していることが明らかとなった。また、ジフテリア毒素投与による間質マクロファージの除去を行ったところ、間質マクロファージの炎症抑制および線維化促進的役割が示唆された。次に、肺以外の臓器の線維化関連疾患においてC1qが病態悪化へ寄与することが報告されていることから、間質マクロファージの線維化促進的役割を担う分子として特異的に発現するC1qに注目した。C1q欠損マウスにおけるシリカ誘導肺線維症の病態は野生型と比較して抑制され、一方で正常マウスへのC1q投与は肺線維症様病変を誘導した。C1q投与が各種細胞集団へ与える影響をscRNA-seqにて解析すると2型肺胞上皮細胞および線維芽細胞が主要なターゲットであることが示唆された。さらに、マウス肺から単離した線維芽細胞にC1qを処理すると、線維化関連遺伝子の発現が誘導されたことからC1qが線維芽細胞に直接的に作用することが見出された。最後にこれらマウス肺線維症モデルにおける解析結果の、ヒト肺線維症に対する外挿性を検証した。リウマチ誘導間質性肺炎のヒト肺線維症検体におけるscRNA-seq解析を行うと、間質マクロファージと類似した遺伝子発現パターンを示すSELENOP+マクロファージが非線維化部位よりも線維化部位で多く存在し、C1qを含む線維化関連遺伝子を高発現することが明らかになった。これらの結果より、解析が進んでいなかった肺線維症における間質マクロファージの動態と役割の一端が解明された。また、間質マクロファージの線維化促進的役割を担う分子としてC1qを同定し、新たな治療標的分子へ発展することが期待される。

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