肺移植患者のHealth-related Quality of Lifeを規定する因子に関する研究

概要

（書式１８）

学
（

位 論 文 要 約
A b s t r a c t ）

博士論文題目 Title of dissertation
肺移植患者の Health-related Quality of Life を規定する因子に関する研究

東北大学大学院医学系研究科
機能医科学講座
氏名 Name

医科学専攻

内部障害学分野
高橋

諒

【背景】肺移植は, 呼吸器疾患により肺の機能が低下し, 薬物治療や, 酸素吸入などの補助でも, 生命が危険に
脅かされる重症呼吸不全患者に対する唯一の根本的治療法である. その目的は, 生命予後の延長と
health-related quality of life (HRQL) の改善である. 近年, 肺移植後の生命予後が改善するにつれて, 肺移植患者
の HRQL の改善に注目が向けられるようになった. 本研究の目的は, 肺移植患者の HRQL に影響を与える因子
を解明することである.
【方法】2018 年 12 月から 2021 年 5 月までの間に, 東北大学病院で, 初回の肺移植術を受けた患者 91 名に対
して, 呼吸困難の尺度である modified medical research council dyspnea scale (mMRC), 疾患特異的 HRQL 尺度で
ある St. George’s respiratory questionnaire (SGRQ), 包括的 HRQL 尺度である the short form-12 (SF-12) を用いて,
質問紙による HRQL の横断的観察研究を行った (回収率 88% [n=80]). SGRQ-total score を中央値で 2 群に分け,
また, SF-12 physical component summary score (PCS) では国民基準値 50 で HRQL の高い群と低い群の 2 群に分
け, それぞれ群間比較を行った.また, 両群間比較時に P < 0.1 であった変数を用いて二項ロジスティック分析
を行い, HRQL を下げる独立因子を検討した.
【結果】SGRQ-total score が高い群と低い群の比較では, 1 秒量 (forced expiratory volume in 1 second: FEV1) (P =
0.041), 6 分間歩行距離(six-minutes walking distance : 6MWD) (P < 0.001), mMRC (P < 0.001) に有意差を認めた.
SF-12 PCS が高い群と低い群の比較では, 年齢 (P = 0.017), 性別 (P = 0.011), FEV1 (P < 0.001), 努力肺活量
(forced vital capacity : FVC) (P < 0.001), 原疾患 (P = 0.011), 握力 (P = 0.003), 6MWD (P < 0.001), mMRC (P <
0.001) に有意差を認めた. 二項ロジスティック分析では, SGRQ (P < 0.001, OR = 7.27, 95%CI: 2.76-19.20) だけ
でなく SF-12 PCS (P = 0.001, OR=0.19, 95% CI: 0.07-0.52) の両方で, 独立因子として呼吸困難の尺度である
mMRC のみに有意差を認めた. SGRQ-total score と SF-12 PCS には相関を認めた (spearman correlation
coefficient Rs = -0.612, P < 0.001).
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（書式１８）
【結論】肺移植患者の HRQL を低下させる因子は, 肺機能や運動耐容能ではなく, 主観的な呼吸困難の指標で
ある mMRC であった. 肺移植患者の HRQL 向上における呼吸困難制御の重要性が示唆された. ...