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大学・研究所にある論文を検索できる 「Relationship between psychological factors and wound occurrence in patients with peripheral arterial disease in the leg」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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Relationship between psychological factors and wound occurrence in patients with peripheral arterial disease in the leg

小野山, 絢香 名古屋大学

2020.12.08

概要

【背景】
 末梢動脈疾患(Peripheral Arterial Disease: PAD)は下肢の冷感や痺れ,間歇性跛行が特徴的症状であり,重症例では安静時疼痛や潰瘍,壊疽が生じる.PAD の予後について重症 PAD 患者の 1 年生存率は 25%と報告されている.また,創の再発率は 43%であり,虚血性潰瘍は一旦罹患すると完全治癒までに 5 年かかると言われている.一方で治療のコンプライアンスに心理的要因が影響するという報告があり,予後に影響する可能性がある.PAD 患者の中には糖尿病を併発しているものも多く,自覚症状がないために疾病管理が不十分になることがある.一方で,生活習慣によって PAD の創の悪化や治療の遅延につながりやすいと思われる.そこで,他の心疾患などの自覚症状があるものとは異なり,PAD において心理学的要因に焦点を当てる必要があると考える.PAD は主に下肢症状を呈するため,患者の心理的要因について十分に研究されていない.

【目的】
 PAD の予後が良くないことから本研究では,PAD 患者の性格やセルフエフィカシーを含めた心理的要因を調査し,創発生や治療継続の有無との関連を明らかにすることを目的とした.

【対象および方法】
 対象は 2015 年 3 月から翌年 3 月に急性期病院である名古屋共立病院へ入院した PAD 患者 50 名とした(男性 33 名,女性 17 名,平均年齢 69.2 ± 9.8歳).調査項目である Geriatric depression scale(GDS)簡易版,The Type D scale 14( DS-14 ), MOS 36 Item Short-Form Health Survey ( SF – 36 ) , Functional independence measure(FIM),Self-efficacy for managing chronic disease scale(SE-MCDS),Barriers self-efficacy scale(BARSE),Mini nutritional assessment(MNA)簡易版を入院中に一度調査し,創の発生,処置治療継続の有無を退院 6 ヶ月後に電子カルテより調査した.Mini-mental state examination(MMSE)にて 24 点未満の認知機能低下を認める者は除外した.分析にはまず,対象者のベースラインでの差異を確かめるために治療前群と後群,また治療間での差異がないかを確かめるために血行再建術群と大切断術群,小切断術と大切断術群で調査項目間に差異がないか Mann-Whitney U 検定及びカイ 2 乗検定で検討を行った.その後,本統計処理として6 ヶ月後創発生群となし群,6 ヶ月後治療有り群となし群で調査項目についてMann-Whitney U 検定及びカイ 2 乗検定を実施し,創の発生については年齢,性別, Fontaine 分類をマッチングさせた創の発生群となし群でも検討を行った.創の発生,治療継続の有無の説明変数を予想するため多重ロジスティック回帰分析を実施した.研究は名古屋共立病院および名古屋大学大学院医学系研究科の倫理研究委員会の承認を得た後,対象者には文書を用いて説明し同意を得た.

【結果】
 今回の対象者は Fontaine 分類Ⅳが 72.0%,治療内容も切断者が 48.0%と重度 PAD患者が多い内訳となった.それぞれフォローできたのは創発生が 34 名,要治療が 30 名であった.創の発生者は 42.4%であり,SF–36 の MCS が有意に低く(p<0.01),RCS が有意に高かった(p<0.05).また SF–36 のMCS のみが創発生の予測因子であった(オッズ比:0.911, P 値:0.017, 95% CI: 0.843 – 0.984).性別,年齢, Fontaine 分類をマッチングさせた創発生群と創なし群では SF–36 の GH・MCS が有意に低く,RCS が有意に高かった(p<0.05). 退院後 6 ヶ月以降も要治療であったのは 30.0%であり,HL 罹患率は有意に低く,SF–36 の RCS が有意に高かった(p<0.05).SF–36 の RCS が要治療の予測因子であった(オッズ比:1.066, P 値:0.038, 95% CI: 1.003‐1.133).

【考察】
 本研究では 42.4%で新たな創の発生が認められ,これは先行研究とほぼ同程度の結果となった.先行研究では身体機能に関連した QOL の低下が言われている一方で,創発生群では SF- 36 の精神的側面のQOL サマリースコアであるMCS で有意に低い結果となった.これは創の発生が精神機能低下に影響を与え,また精神機能の低下が生物学的因子として,創の発生に影響を与えた可能性があった.創発生群や要治療群では役割・社会的側面の QOL サマリースコアである RCS が有意に高値となった.先行研究での潰瘍が治癒した対象は社会的交流が高いという報告は然るべきである一方で,社会的交流の高い患者は創の発生や治療の遅延が見られており,これは必ずしも十分なフットケアをしていない PAD 患者にとっては社会的交流が良い影響を与えるとは限らず,社会的交流など日常生活への過信が創の発生や治療の遅延に繋がる可能性が示唆された.本研究の限界としては対象が 50 名であり,重症度別の解析を行うには症例数が少なく,重症度に絞ったサンプリングが今後必要であると思われる.本研究では一つの急性期病院でのデータ収集にとどまっており,治療のプロトコールが類似した多機関にわたったデータの収集必要である.

【結語】
 心理的因子は,長期追跡期間において PAD 患者の生物学的,物理的,社会的要因として重要であり,PAD 患者に焦点を当てた心理的要因を評価するための適切なバッテリーを開発する必要がある.

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