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Meclozine ameliorates bone mineralization and growth plate structure in a mouse model of X‑linked hypophosphatemia

神谷, 庸成 名古屋大学

2023.07.28

概要

主論文の要旨

Meclozine ameliorates bone mineralization and
growth plate structure in a mouse model of
X-linked hypophosphatemia
メクロジンは X 連鎖性低リン血症性くる病マウスモデルにおける
骨石灰化と成長軟骨の構造を改善する

名古屋大学大学院医学系研究科
運動・形態外科学講座

総合医学専攻

整形外科学分野

(指導:今釜 史郎
神谷 庸成

教授)

【緒言】
X 連鎖性低リン血症性くる病(X-linked hypophosphatemia: XLH)は低リン血症に起因
する骨の石灰化障害のために、低身長や下肢の変形など様々な臨床症状を生じ る。
XLH では、phosphate-regulating endopeptidase homolog of the X-chromosome(phex)遺伝
子 の 機 能 喪 失 型 変 異 に よ っ て 線 維 芽 細 胞 増 殖 因 子 23(fibroblast growth factor 23:
FGF23)が異常高値となり、これにより腎糸球体でのリン再吸収が減少し、低リン血症
に至る。FGF23 は α-klotho を共受容体として線維芽細胞増殖因子受容体 1(fibroblast
growth factor receptor 1: FGFR1)を介して細胞内シグナルを活性化させることで作用す
る。一方で、FGF23 は α-klotho を要さずに線維芽細胞増殖因子受容体 3(fibroblast growth
factor receptor 3: FGFR3)シグナルを活性化することでも骨石灰化に関与することが示
されている。著者らは抗ヒスタミン薬のメクロジンが、軟骨細胞において FGFR3 シグ
ナル下流の ERK の過剰なリン酸化を抑制するオフラベル効果があることを過去に見
出していた。さらに、FGFR3 シグナルの過剰発現のために四肢短縮型低身長を生じる
軟骨無形成症マウスモデルに対して、メクロジンの経口投与は長管骨の伸長を促進す
る効果があることも確認していた。本研究の目的は、XLH マウスモデル(Hyp マウス)
に対するメクロジンの効果を検討することである。
【対象及び方法】
雄の野生型マウス(wild-type: WT)と同腹雄の Hyp マウスに対して、生後 7 日目から
10 日間、メクロジン 2mg/kg/day または溶媒(0.5%メチルセルロース)のみを 1 日 2 回
に分けて経口投与した。なお WT マウスには溶媒のみを経口投与した。経口投与終了
時点で大腿骨、脛骨の採取と全血採血を行い、それぞれ組織学的評価と血清学的評価
を行った。組織学的評価では、骨石灰化の指標として Villanueva Goldner 染色を用いて
大腿骨と脛骨の骨幹部皮質骨における類骨量(osteoid volume/bone volume: OV/BV)を、
成長軟骨の構造に関してヘマトキシリン・エオジン染色を用いて大腿骨遠位と脛骨近
位において成長軟骨全体の厚みにおける増殖細胞層および肥大細胞層の割合を、破骨
細胞の活動性の指標として tartrate-resistant acid phosphatase(TRAP)染色を用いて大腿
骨遠位骨幹端部における破骨細胞面(osteoclast surface/bone surface: Oc.S/BS)をそれぞ
れ評価した。血清学的評価においては、血清カルシウム値と血清リン値に加え て、
enzyme-linked immuno-sorbent assay(ELISA)法により血清 FGF23 値も測定した。
【結果】
大腿骨および脛骨の骨幹部皮質骨において、Hyp マウスでは WT マウスと比較して
OV/BV が有意に高くなっていた一方で、メクロジンを経口投与した Hyp マウスでは
非投与群の Hyp マウスより大腿骨で平均 42%、脛骨で平均 26%、OV/BV が有意に低
下していた(Figure 1)。成長軟骨においては、大腿骨遠位、脛骨近位ともに Hyp マウス
では肥大細胞層が WT マウスより厚くなっていたが、メクロジン経口投与群の Hyp マ
ウスでは非投与群と比較して大腿骨で平均 18.5%、脛骨で平均 21.2%、肥大細胞層の

-1-

割合が低下していた(Figure 2)。大腿骨遠位の TRAP 染色において、WT マウスと比較
してメクロジン非投与群の Hyp マウスでは Oc.S および Oc.S/BS が低下していた一方
で、有意差はつかなかったもののメクロジン経口投与群では非投与群と比べて Oc.S は
平均 2.8 倍、Oc.S/BS は平均 3.4 倍増加していた。血清学的評価では、血清カルシウム
値と血清リン値はメクロジン非投与群の Hyp マウスでは WT マウスより有意に低くな
っていた。一方、メクロジン投与群では有意ではなかったもののいずれもメクロジン
非投与群より増加傾向を認めた。血清 FGF23 値はメクロジン非投与群の Hyp マウス
で WT より著明に増加していたが、メクロジン経口投与群では非投与群よりさらに有
意に増加していた(Figure 4)。
【考察】
XLH に対する治療において、ヒト型抗 FGF23 モノクローナル抗体が近年使用され
ているが、注射製剤であり小児患者の治療には必ずしも容易ではなく、高価でもある。
一方、従来使用されてきた経口リン製剤は適切な用量を調整、維持することが難しい。
メクロジンは、その FGFR3 抑制作用によってマウスモデルで低身長の表現型をレス
キューしたことにより、小児軟骨無形成症患者を対象とした治療薬としての開発研究
が進められている。本研究はメクロジンの XLH マウスモデルに対する効果を初めて
示した研究であり、メクロジン経口投与は XLH に対して低コストで負担の少ない治
療方法となりえる。メクロジンは類骨を減少させ、成長軟骨の形態を改善させたが、
これは NVP-BGJ398 や MAPK 阻害剤といった他の FGFR3 阻害薬を用いた先行研究と
同様の結果であった。Hyp マウスにおける破骨細胞活性は、4 週齢では WT マウスよ
り低下しているとされ、また授乳期に MAPK 阻害剤を Hyp マウスに投与すると破骨
細胞の産生が抑制されることが報告されている。本研究では 17 日齢の Hyp マウスに
おいて WT マウスと比べて破骨細胞活性が低下していること、さらにメクロジン投与
により破骨細胞の増加傾向がみられたことを確認した。破骨細胞の減少は成長軟骨部
での骨化を阻害し、肥大細胞層の肥厚を引き起こす。メクロジン投与後の Hyp マウス
において、破骨細胞の増加は肥大細胞層の形態を正常に近付け、骨石灰化を促した可
能性がある。先行研究において、1 週間の MAPK 阻害剤投与により Hyp マウスの血清
FGF23 値が低下したという報告がある一方で、8 週間の NVP-BGJ398 もしくは 4 週間
の MAPK 阻害剤の投与により Hyp マウスの血清 FGF23 値が増加したという、相反す
る報告があり、これらは複雑なフィードバックループにより生じるものと考えられる。
メクロジンは他の FGFR 阻害剤と同様に血清 FGF23 値を増加させ、血清リン値も軽度
増加させていた。この血清リン値の増加が血清 FGF23 値の増加を引き起こした原因の
一つであると考えられる。本研究にはいくつかの limitation がある。一つは軟骨無形成
症マウスモデルで用いた、7 日齢マウスに対するメクロジン 2mg/kg/day の 10 日間投
与、という単一のプロトコールのみしか行っていないことであり、他の用量や他の週
齢マウスを用いて本実験を行った場合、結果が異なる可能性がある。また、メクロジ
ンの作用について、軟骨細胞において FGFR3 シグナル下流の ERK のリン酸化を抑制

-2-

することは示しているが、詳細な機序はまだ完全には明らかとなっていないことであ
る。
【結語】
メクロジン経口投与は XLH マウスモデルの骨石灰化と成長軟骨の形態を改善させ
た。メクロジンは FGFR3 シグナルを抑制することによって軟骨無形成症マウスモデ
ルだけでなく低リン血症性くる病マウスモデルの表現型も改善させた。

-3-

Figure 1. Meclozine rescues impaired cortical bone mineralization in Hyp mice. Representative non-decalcified
histological images of the (A) femur and (B) tibia stained with Villanueva Goldner. The red and green signals indicate
osteoid and bone tissues, respectively. The osteoid signal at the medial mid-shaft cortical bone was lower in meclozinetreated Hyp mice compared with untreated Hyp mice. Scale bars, 100 μm. (C) OV/BV. Dots indicate the OV/BV of
each sample, and bars indicate the mean ± SD. Statistical significance was analyzed using one-way ANOVA with or
without Welch's correction. * p < 0.05, ** p < 0.01. Hyp mice, X-linked hypophosphatemic mice; OV/BV, osteoid
volume/bone volume.

-4-

Figure 2. Meclozine improves the structure of the growth plate in Hyp mice. Representative histological images of the
(A) distal femoral growth plate and (C) proximal tibial growth plate indicating the width of proliferative and
hypertrophic zones in meclozine-treated Hyp mice and untreated Hyp mice. Scale bars, 100 μm. %Hz and %Pz in the
(B) distal femur and (D) proximal tibia. Dots indicate the relative %Hz and %Pz of each sample, and bars indicate the
mean ± SD. Statistical significance was analyzed using one-way ANOVA with or without Welch's correction.
** p < 0.01. Hyp mice, X-linked hypophosphatemic mice; %Hz, percentage hypertrophic zone thickness; %Pz,
percentage proliferative zone thickness.

-5-

Figure 3. Meclozine slightly augments the surface of osteoclasts in Hyp mice. (A) Representative histological images
of distal femoral metaphysis stained with tartrate-resistant acid phosphatase in meclozine-treated and untreated Hyp
mice. The purple signal indicates osteoclasts. Scale bars, 100 μm. (B) Oc.S and Oc.S/BS. Dots indicate the Oc.S and
the Oc.S/BS of each sample, and bars indicate the mean ± SD. Statistical significance was analyzed by one-way
ANOVA with post-hoc Tukey’s honest significance test. * p < 0.05. Hyp mice, X-linked hypophosphatemic mice; Oc.S,
osteoclast surface; Oc.S/BS, osteoclast surface/bone surface.

-6-

Figure 4. Meclozine tends to augment serum calcium, phosphate and FGF23 levels in Hyp mice. Relative serum (A)
calcium, (B) phosphate and (C) FGF23 levels in meclozine-treated or untreated Hyp mice. Dots indicate the relative
serum parameters of each sample, and bars indicate the mean ± SD. Statistical significance was analyzed using oneway ANOVA with post-hoc Tukey’s honest significance test. * p < 0.05, ** p < 0.01. Hyp mice, X-linked hypophosphatemic
mice; FGF23, fibroblast growth factor 23.

-7-

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