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感情喚起中の情報処理活動 : 事象関連電位を用いた検討

黒原 玄弥 広島大学

2022.03.23

概要

博士論文

感情喚起中の情報処理活動
―事象関連電位を用いた検討―

令和 4 年 3 月
広島大学大学院総合科学研究科
総合科学専攻
黒原 玄弥

目次
第一章

序論

第 1 節 感情とは .................................................................................................................... 1
第 2 節 感情処理と認知処理との関連.................................................................................... 3
第 3 節 脳内の情報処理活動と事象関連電位 ......................................................................... 5
第 4 節 感情反応に関する情報処理活動 .............................................................................. 10
第 5 節 感情喚起中の情報処理活動に関する先行研究とその未検討部分 ........................... 12
第 6 節 本論文での検討課題 ................................................................................................ 13
第 7 節 本論文の目的 ........................................................................................................... 16

第二章

感情喚起中の視覚刺激に対する感覚入力処理の検討

第 1 節 序論 .......................................................................................................................... 18
第 2 節 方法 .......................................................................................................................... 20
第 3 節 結果 .......................................................................................................................... 24
第 4 節 考察 .......................................................................................................................... 32
第 5 節 結論 .......................................................................................................................... 35

第三章

感情喚起中の聴覚刺激に対する感覚入力処理の検討

第 1 節 序論 .......................................................................................................................... 36
第 2 節 方法 .......................................................................................................................... 38
第 3 節 結果 .......................................................................................................................... 42
第 4 節 考察 .......................................................................................................................... 48
第 5 節 結論 .......................................................................................................................... 51

第四章

感情喚起中の知覚・認知処理に対する検討

第 1 節 序論 .......................................................................................................................... 52
第 2 節 方法 .......................................................................................................................... 55
第 3 節 結果 .......................................................................................................................... 59
第 4 節 考察 .......................................................................................................................... 69
第 5 節 結論 .......................................................................................................................... 71

第五章

刺激の感情価が感情喚起中の情報処理活動に及ぼす影響の検討

第 1 節 序論 .......................................................................................................................... 72
第 2 節 方法 .......................................................................................................................... 74
第 3 節 結果 .......................................................................................................................... 78
第 4 節 考察 ........................................................................................................................ 100
第 5 節 結論 ........................................................................................................................ 104

第六章

総合考察

第 1 節 研究結果のまとめ .................................................................................................. 106
第 2 節 感情喚起中の情報処理活動 ................................................................................... 108
第 3 節 刺激の感情価が感情喚起中の情報処理活動に及ぼす影響 ..................................... 112
第 4 節 課題前の感情喚起と課題中の情報処理活動 ........................................................... 114
第 5 節 刺激と課題の物理的要因が情報処理活動に与える影響 ........................................ 116
第 6 節 本論文の意義 .......................................................................................................... 117
第 7 節 本論文の限界点と今後の展望................................................................................. 119

本論文の要約 ...................................................................................................................... 124

引用文献 ............................................................................................................................. 127

本論文の要約
本論文は, 感情が行動に及ぼす影響について明らかにするために,感情喚起中の情報処理
活動 (感覚入力処理, 知覚処理, 認知処理) に着目し, 検討した。また, 感情喚起中の情報処
理活動について, 用いる刺激の特徴 (感情価, 刺激の種類, 呈示時間等) が及ぼす影響につ
いても検討を行った。情報処理活動の検討には, 特定の事象 (刺激) に対する一過性の脳電
位変化である事象関連電位 (ERP) を用いた。ERP を用いることで,感情喚起中の課題遂行
に関して, 刺激が脳内に入力される感覚入力処理から, 続いて行われる刺激の知覚処理, そ
して, 刺激に対して反応出力を行う認知処理まで, 検討が可能となる。感情喚起に伴う ERP
に, 後期陽性電位 (LPP) がある(Bradley et al., 2007)。本論文では, 感情喚起中の情報処理活
動について, 感情画像刺激呈示による LPP 生起中に刺激を呈示することで検討した。
第 2 章では, 快感情喚起中の視覚プローブ刺激に対する感覚入力処理について検討を行
った。先行研究では, 不快感情喚起中に感覚入力処理が抑制されることが報告されているが,
快感情喚起中の感覚入力処理については検討されていない (Brown et al., 2012)。先行研究よ
り, 快感情喚起中は認知活動が促進することが分かっているため (Fredrickson, 2001, 2004),
快感情と不快感情では異なる結果が得られる可能性がある。そこで第 2 章では, 快感情喚起
中の感覚入力処理について検討を行った。この検討を行うために, 感情画像刺激呈示による
LPP 生起中に視覚プローブ刺激を呈示し, 視覚プローブ刺激に対する感覚入力処理と反応
時間を算出した。感覚入力処理の指標として, 刺激呈示後, 1 番目に現れる陰性波である N1
を用いた。N1 振幅の増大は,視覚野の活動の賦活を反映することが明らかとなっている
(Correa et al., 2006)。検討の結果, 快感情喚起中は, 不快感情喚起中と比べ, N1 振幅が増大し,
刺激に対する反応時間も短縮する結果が得られた。これらの結果より, 快感情喚起中は, 不
快感情喚起中と比べ, 視覚野の活動が賦活するため, 感覚入力処理が促進し, 反応時間も短
縮したと考えられる。
第 3 章では, 感情喚起中の情報処理活動が, 呈示する刺激の種類によって異なるか検討を
行った。そこで, 第 3 章では, 聴覚プローブ刺激に対する感覚入力処理を検討した。課題で
は, 感情画像刺激呈示による LPP 増大中に聴覚プローブ刺激を呈示し, 聴覚プローブ刺激
に対する感覚入力処理と反応時間から検討を行った。感覚入力処理の検討には, 聴覚刺激呈
示後にピークを示す N1 を用いた (Näätänen & Picton, 1987)。その結果, 聴覚プローブ刺激に
対する N1 振幅は, 感情喚起によって変化しなかった。第 2 章では, 快感情喚起中に, 視覚
プローブ刺激に対する感覚入力処理 (N1) の促進がみられている。このように, 感情喚起中
の感覚入力処理が, 呈示する刺激の種類によって異なる理由について, 感情喚起刺激とし
て画像刺激を用いたことが挙げられる。つまり, 感情喚起刺激と呈示した感覚プローブ刺激
が同じ視覚感覚であったため, 感情喚起中の感覚入力処理が促進した可能性が考えられる。
124

それに対して, 聴覚プローブ刺激は, 感情喚起刺激と異なる感覚刺激であったため, 感情喚
起中の感覚入力処理が変化しなかった可能性が考えられる。先行研究において, 課題実施に
必要な資源は, 種類の異なる感覚刺激間で影響するのではなく, 同じ種類の感覚刺激間で
影響を及ぼすことが示唆されている (Rees et al., 2001)。そのため, 本論文でみられた快感情
喚起中の感覚入力処理の促進も, 感情喚起刺激と同じ種類の感覚刺激に対して影響を及ぼ
す可能性が考えられる。
第 4 章では, 感情喚起中の知覚処理と認知処理について検討を行った。これらを検討する
ために, タスクスイッチ課題を用いた。タスクスイッチ課題は, 第 2, 3 章で行った課題より
も高次な情報処理活動である, 実行機能を測定できるため (Monsell, 2003), 知覚処理と認知
処理を検討できる課題である。知覚処理の指標として, 刺激呈示後, 2 番目に現れる陽性波
である P2 と, 同じく 2 番目に現れる陰性波である N2 を用いた。認知処理の指標には, 刺激
呈示後, 3 番目に陽性波として現れる P3 を用いた。検討の結果, 快感情喚起中において, 不
快感情喚起中と比べ, P2 振幅の減少, N2 振幅の増大, P3 振幅の減少が観察された。P2 振幅
は, 刺激の評価 (Kieffaber & Hetrick, 2005), N2 振幅は葛藤処理のために使用される資源の量
(Kanske & Kotz, 2011), P3 振幅はワーキングメモリの継続的な関与や認知資源の配分量 (Kok,
2001) と関連する。そのため, 快感情喚起中は不快感情喚起中と比べ, 課題刺激に対する刺
激の評価や葛藤処理のための資源や, 課題解決に必要な認知資源の量が増大したと示唆さ
れる。また, 快感情喚起中は, 中性感情喚起中と比べ, 反応時間から算出されるスイッチコ
ストが有意傾向であるが減少した。スイッチコストは, 課題に対して柔軟に対応するために
必要な認知的柔軟性の指標となる (Rogers & Monsell, 1995)。そのため, 快感情喚起中は, 知
覚処理と認知処理が促進したため, 中性感情喚起中と比べ, 行動反応自体も促進したと考
えられる。
第 5 章では, 第 4 章までに得られた感情喚起中の情報処理活動に対して, 呈示する刺激の
感情価が及ぼす影響について検討を行った。この検討を行った理由として, 先行研究では,
快/不快感情に関係なく, 喚起される感情と呈示される刺激の感情価が一致する場合, 刺激
への反応 (行動) が促進すること明らかになっていることが挙げられる (Gendolla, 2000)。
そのため, 喚起される感情と刺激の感情価が一致する場合, 不一致時と比べ, 快感情だけで
なく不快感情喚起中にも, 情報処理活動が促進することが予測される。検討の結果, 呈示さ
れる刺激の感情価に関わらず, 快感情喚起中に, 不快感情喚起中と比べ, P2 振幅の減衰, N2
振幅の増大, P3 振幅の減衰が得られた。これらの結果から, 快感情喚起中は, 呈示される刺
激の感情価に関わらず, 知覚処理と認知処理が促進することが示唆される。さらに, 快刺激
呈示時, 快感情喚起中では, 不快感情喚起中と比べ N2 振幅が増大した。しかし, 不快刺激
呈示時には, 感情喚起の影響はみられなかった。これらの結果から, 快感情喚起中は, 特に
快刺激を評価する際に, 知覚処理が促進することが示唆される。
125

第 6 章では, これまでの研究結果から, 感情喚起中の情報処理活動をまとめ, 考察を行っ
た。感情喚起中の情報処理活動について, 第 2 章から第 4 章の検討から, 快感情喚起中は,
不快感情喚起中と比べ, 視覚刺激における (第 3 章), 感覚入力処理 (N1; 第 2 章), 知覚処理
(P2, N2; 第 4 章), 認知処理 (P3; 第 4 章) をそれぞれ促進させ, 行動 (第 2, 4 章) にも影響
を及ぼすことが示された。そして, 第 5 章にて, 快感情喚起中に快刺激を呈示する際, 知覚
処理 (N2) が促進する結果が得られた。以上の結果より, 快感情喚起中は特に, 快感情を喚
起させる刺激を呈示することで, 脳内における情報処理活動が促進することが示唆される。
感情による行動への影響に関して, 本論文で示した快感情の促進効果は, 連想課題 (Rowe
et al., 2007) や創造性課題 (Phillips et al., 2002) といった課題でのパフォーマンス向上の面で
も認められている。これらの快感情における課題への促進効果も, 本論文で示した快感情喚
起中における脳内の情報処理活動 (知覚処理, 認知処理) が関連すると考えられる。
本論文は, 快感情喚起中に情報処理活動が促進することを, ERP を用いて明らかにした点
で研究の意義があったと考えられる。今後の検討課題としては, 感情喚起の個人差に着目し
た検討や, 感情喚起刺激の覚醒度に着目した検討が考えられる。特に, 本論文では, 覚醒度
が比較的低い画像刺激を感情喚起刺激として用いた。先行研究では, 覚醒度が高い刺激の場
合, 快刺激よりも不快刺激に対して感情が喚起され, 覚醒度が低い場合, 不快刺激よりも快
刺激に対して感情が喚起されることが報告されている (Cacioppo et al., 1997; Ito & Cacioppo,
2005)。そのため, 覚醒度が高い刺激を用いた場合, 不快感情喚起中に不快刺激に対して脳内
における情報処理活動が促進するといった, 本論文とは異なる結果が得られる可能性が考
えられる。

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