リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

リケラボ 全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索するならリケラボ論文検索大学・研究所にある論文を検索できる

リケラボ 全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索するならリケラボ論文検索大学・研究所にある論文を検索できる

大学・研究所にある論文を検索できる 「独居がん患者の特徴的な医療上の問題の探索、および、独居がん患者の望ましい死の達成度:医療者を対象とした半構造化インタビュー、および、多施設遺族調査の二次分析」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

コピーが完了しました

URLをコピーしました

論文の公開元へ論文の公開元へ
書き出し

独居がん患者の特徴的な医療上の問題の探索、および、独居がん患者の望ましい死の達成度:医療者を対象とした半構造化インタビュー、および、多施設遺族調査の二次分析

五十嵐 尚子 東北大学

2021.03.25

概要

【背景】
 独居がん患者には、同居家族がいるがん患者よりも生存期間が短い、抑うつのリスクが高いなどの健康リスクを抱えている。健康リスクを抱えているのは、独居がん患者はがんと診断されてから終末期までの間に身体的問題、心理社会的問題、経済的問題が生じるためと考えられる。これらの独居がん患者の抱く問題を捉えることは今後の独居がん患者への質の高い医療やケアに寄与すると考えられる。また、研究 1 より特に終末期では独居がん患者の抱く問題がより多く存在することから、終末期の独居がん患者の QOL に着目した。独居がん患者の終末期の QOL の現状を明らかにすることで、終末期の独居がん患者への適切な医療やケアについての示唆が得られると考えられる。

【目的】
研究 1:
 診断期・治療期・終末期までの独居がん患者の特徴的な医療上の問題について探索する。

研究 2:
 死亡場所別で独居がん患者と同居家族がいるがん患者の背景要因と望ましい死の達成度を比較する。方法 研究 1:独居がん患者にケアを提供した経験のある医療者に対する半構造化インタビューを実施した。研究 2:緩和ケア病棟、一般病棟、在宅で死亡したがん患者遺族を対象とした多施設遺族調査の二次分析を実施した。

【結果】
研究 1:
 54 名にインタビューを実施した。診断期の独居がん患者が抱える問題として、【1.独居がん患者は受診が遅れる可能性がある】【2.独居がん患者には精神的サポートが不足している】【3.独居がん患者は 1 人で意思決定をしなくてはいけない】【4.独居がん患者 1 人で説明を聞くことで、独居がん患者の疾患や治療の理解が不足している可能性がある】【5.独居がん患者は今後の療養生活に対して不安が強い】の 5 つのカテゴリが挙げられた。次に診断期の独居がん患者を提供している医療者が抱える問題として、【6.医療者は独居がん患者 1 人でも病状や治療を理解できるよう説明することが困難である】【7.医療者はキーパーソンとの関係性が築けない】【8.医療者は治療への手続きをスムーズに行うことが出来ない】の 3 つのカテゴリが抽出された。
 また、治療期の独居がん患者が抱える問題として、【9.独居がん患者はセルフモニタリング不足である】【10.独居がん患者 1 人で意思決定をしなくてはいけない】【11.独居がん患者がセルフケアを患者自身で行うことが困難である】【12.独居がん患者は医療的セルフケアが疎かになる可能性がある】【13.独居がん患者は通院が困難である】【14.独居がん患者は経済的困難を抱えている】【15.独居がん患者には、家族以外のキーパーソンが途中でいなくなってしまう場合がある】の 7 つのカテゴリが抽出された。治療期の独居がん患者へ医療を提供している医療者が抱える問題として、【16.医療者は独居がん患者に必要なサポートを導入する事が難しい】【17.医療者は独居がん患者・キーパーソンに対して十分な説明を行うことが難しい】の 2 つのカテゴリが抽出された。終末期の独居がん患者が抱える問題として、【18.独居がん患者は意思決定を 1 人で行わなくてはいけない困難感がある】【19.独居がん患者は死後の対応について考えなければならない辛さがある】【20.独居がん患者の療養場所の選択は限られる】【21.独居がん患者のセルフケアが出来ない】【22.独居がん患者への精神的サポートが不足している】の 5 つのカテゴリが抽出された。終末期の独居がん患者のキーパーソンが抱える問題として、【23.キーパーソンが独居がん患者の病状の変化を受け止めきれない】【24.家族以外の人がキーパーソンになるのにも限界がある】の 2 つのカテゴリが抽出された。終末期の独居がん患者へ医療を提供している医療者が抱える問題として、【25.医療者が独居がん患者の意思が確認できない場合がある】【26.医療者はキーパーソンとのやり取りが困難である】【27.医療者は独居がん患者に適したケアの提供が困難の場合がある】【28.医療者は独居がん患者の死後の対応が困難な場合がある】の 4 つのカテゴリが抽出された。

研究 2:
 緩和ケア病棟 13,329 名、一般病棟 1,178 名、在宅診療所 1,442 名の遺族を解析対象とした。緩和ケア病棟で死亡した独居がん患者は同居家族がいるがん患者よりも望ましい死の達成度が有意に高かった (ES=0.11、p<.0001).。一方、一般病棟と在宅診療所で死亡した独居がん患者と同居家族がいるがん患者に望ましい死の達成度に有意差は認められなかった(一般病棟:ES=0.02、p=0.86、在宅診療所:ES=-0.03、p=0.74)。また、独居がん患者は同居家族がいるがん患者よりも高齢の女性が多く、年間世帯収入が少ない傾向だった。

【結論】
研究 1:
 医療者の視点からの診断期から終末期までの独居がん患者の特徴的な問題について明らかになった。新たな知見は、全ての時期における独居がん患者の意思決定の困難さ、治療期の独居がん患者の症状や副作用に対するセルフモニタリング不足、終末期の独居がん患者の家族の負担感、独居がん患者へケアを提供する医療者の困難感が明らかになった。今後は患者や家族の視点からの調査、患者の背景要因と問題との関連などを実施する必要がある。

研究 2:
 独居がん患者は同居家族がいるがん患者よりも望ましい死の達成度が高いが差が小さい、もしくは差が無い結果だった。この結果は、専門的緩和ケアを受けていた独居がん患者は同居家族がいるがん患者と同様に質の高い医療やケアを受けることが出来ていたことが示唆された。今後は代表性のある施設で亡くなった独居がん患者や身寄りのない独居がん患者を対象とした更なる調査が必要である。

全国の大学の
卒論・修論・学位論文

一発検索!

この論文の関連論文を見る